管理釣り場では、お父さんと子供、あるいは家族で釣りを楽しむ姿が見られ、微笑ましく、楽しそうである。子供に釣りの楽しさを教えるには、管釣りは絶好の場所だと思う。
とーちゃん親子も楽しくにぎやかに釣っているつもりではあるが、パカパカ釣れている時はどちらかというと静かで、とーちゃんがネットインした後、カウンターの押し忘れや押し過ぎを防ぐために「(カウンターを)押したよ~」と声をかけるくらいである。とーちゃんがネットのマスの口から急いで針を外す間、娘はリールからラインを引き出して次のロールキャストの準備をしている。(良く行く管釣りでは、ほとんどのマスはリールファイトとなる) とーちゃんはその後、マスの写真を撮ったり、大きければスケールを当てる。連続して釣れている時は、傷んでいくフライをどのタイミングで交換するか悩んでしまう。同じタックルが2組用意してあるとはいえ、状況が悪くなった場面に備えて基本的にまったく違う仕掛けがセットされているのだ。(ロッドは2本ともTFOプロフェッショナルシリーズのスイッチロッド11f 5番、リールはNACのフライツァイトとトラッド#7-8、ラインはDT5Fである。技術も体力もない子供にこそ、使いやすい道具が必要なのは言うまでもない。ちなみに同じタックルがもう1組、つまり3組あったらどんなに良いことか、と思う事が時々あるのだが、さすがにそこまで親バカ(ただのバカ?)ではない) 爆釣しているフライを新規に結び換えるのは、サーキットのレースでいうとピットインというところか。そのフライをいつ交換するかは、娘に判断させることも多
い。ただし爆釣中、もう1組のまったく違う仕掛けで試し釣りをするのも、有意義な体験ではある。どなたかのサイトで「釣れる時こそ、いろいろなルアー・フライを試して引き出しを増やそう」と読んだことがあるし、娘が昨年バニーリーチのフォーリングで自在に釣ることができるようになったのも、そんな試し釣りの機会のおかげでもある。実はそんな時、とーちゃんは娘のリーチでの釣りを横目で見ながら、傷んだ爆釣フライをわざとゆっくり交換したりしていたのであった。
逆に釣れていない時は騒がしい。釣り場で、とーちゃんのどなり声を迷惑に感じた方もいらっしゃるだろう(すみません・汗)。「やり直~し」(リーダーがまっすぐに伸びなかったのでキャスティングし直し)、「ちょっと待ちな、オモリずれてないか?」、「あ!」(アタリがあった)、「あ~あ」(アタリがあったのに合わせなかった)、「いいよ~それでいいよ~」(アタリかどうか微妙な変化で合わせてみる)、「もう一回、合わせな!」(偶然に中途半端な力でフッキングした場合、バラシを防ぐために)、「あーあーあー、竿、寝かせ過ぎだって!」「そんなに無理したらバラすって!」(リールファイト中、竿を寝かせ過ぎる、つまり前傾させるとバラしやすい)。「釣りの楽しさを教える」にしてはちょっと厳しすぎるかなとも思うが、娘は応えてくれている(と思う)。厳しく指導された結果、たくさん釣れるようになったという事実は、娘自身がよく分かっている(はずだ)。
管釣りで娘が釣りをしている間、基本的にとーちゃんは釣りをしない。もう1組のタックルの仕掛けのセッティングを変えたり、腕を組んで娘の釣りをじっくりと見たり、あるいは爆釣している他の釣り人を観察したりしている。親も隣で釣りをすると、子供の上達は遅くなると思う。(ただし、とーちゃんが娘といっしょに釣りをしたとしたら、娘のほうが結局たくさん掛けて忙しくなる可能性が高いし、ふたりだと料金もかさむ、という理由もあるのだが・汗) さて、そこそこ釣れるようになった娘にとって、背後から見ている父親はウザい? 娘が小さなアタリを見逃すと必ず指摘するし、特に釣れていない日は「惜しい!」と残念に思うが、かといってとーちゃん自身がそのような小さなアタリに瞬時に反応するような即戦力を持っているかというとそうではない。野球の監督や、石川遼選手のお父さんだってそうだろう。そして、アタリかどうか分からない、判断できないごくごく小さな変化。スレた鱒が多いテンパウンドではいつもそんな変化がある(そんなアタリばかり)のだが、娘にはとにかく合わせてみるよう指導している。空合わせの水音は集魚効果があるし、合わせてみて口にフッキングすればその変化がアタリだった事が分かる。ただしあまり空合わせが多くても、フライが水中にある「有効な時間」が減ってしまうから注意だ。最近では、とーちゃんが偏光グラスをかけて娘の背後からじっくり観察していて気付かないケースでも、娘はかすかな変化を察知して瞬時に合わせてフッキングさせる。そんな時は「今のアタリ、よくわかったね」と素直にほめてやる。親バカながら、ずいぶん腕を上げたものだと思う。
昨年から自然渓流での釣りを始めた。ここではとーちゃんも釣りをする。目の前の清冽な流れの中から父親が実際に魚を釣り上げると娘の動機づけにもなるし、さらに、娘が何度もドライフライを流して何事もなかった場所でとーちゃんがまったく同じフライを流しイワナが出てくるのを見せてやる。魚が流れの中のこんな場所で上流に向かってえさを待ち、水面を自然に流れるフライに反応する事を教える。止水の管釣りでは楽々釣る娘でも、流れのある渓流でシングルハンドのドライフライとなるとまるっきり勝手が違うのだが、昨夏の数度の釣行でだいぶ釣り方を身に付けたようだ。最低でも、まっすぐ投げたラインを、途中でメンディングするくらいはできないとドライで釣れない。自然相手では、前日の準備や当日釣り場に到達するまでの過程、そのポイントにどんな魚がいるのかというワクワク感、自分に釣れてくれた魚、出合えた魚への感謝の気持ち、などなど管釣り以上の楽しみはある。ちょっとだけ魚を持ち帰り、親子でさばいて炭火で焼いて食べる、という楽しみもたまには良い。娘とその日の釣りを振り返りながら、とーちゃんの酒もすすむというものだ。
夏、自然の川を歩いたとーちゃん親子は、寒くなってまた管釣りに戻ってきた。昨年2011年はテンパウンド以外の管釣りにも足を運んだが、メインはやはり北海道恵庭市の管理釣り場「テンパウンド(10pound)」。開業5年目を迎えたこの管釣り、マスはスレにスレまくっているうえ、シーズン途中でフライのルール変更。厳しい状況で釣果を得るためには、まずはマスのやる気を起こさせ、やる気が起きない時はやる気のあるマスを捜した。次にフライパターンとバランス、沈下速度、沈下深度。例えば昨年から導入したバニーリーチの場合、レッドワイヤーをフック背側に仕込んでキールタイプとすることによって、フォーリング中に針先を見えにくくした。そして大切なのはなにより、娘の「マスを釣りたい」強い気持ちであろうか。いまだに、少し釣れない時間帯が続くと「帰るぅ(笑)」と言い出す娘であるが、逆に帰り際に池排水部付近で1尾掛けるとマジで粘りだす。
この写真は、K2さんに撮影していただいたもの。思えば2008年からテンパウンドの大会にエントリーし始めたが、当初は入賞すらできなかった。しかし2009年になるとメキメキ上達し、コンスタントに入賞サイズが釣れるようになった。大会で大人に交じって上位入賞すれば、とーちゃんもフライ親父冥利に尽きるし、娘のやる気も高まるというものだ。とーちゃんはさらに研究を進め、娘はさらに腕を磨いて、大会にもまた参加したい。