日本版スマートグリッドの構築を

スマートグリッドをシステムとして捉えたとき、アメリカのシステムを日本のそのまま導入することは必要ありません。アメリカでは、発電部門と送配電部門（ＲＴＯ（Regional Transmission Organization）やＩＳＯ（Independent System Operators）が運営管理））が分離しているために、発電事業者には需要家の情報を詳細に知るすべがないという事業があります。そこでスマートメーターやパワーメーターを大量に導入したり、複数の需要を取りまとめて最適な電源と結びつける“橋渡し”のサービスが登場しています。しかし、日本においては発電部門と送配電部門は分離されておらず、電力会社が需給調整を行うという垂直統合モデルを採用しているため、アメリカ型のスマートグリッドをそのまま導入することはできません。
重要なのは、国際的に拡張可能性のある日本独自のスマートグリッドを構築することです。それはＨＥＭＳやＢＥＭＳを基軸にしたやり方です。今後日本でも太陽電池や蓄電池、将来は燃料電池が大量に導入されることになりますが、そうなると、家庭やオフィス内の消費電力の最適制御を行うことができるＨＥＭＳやＢＥＭＳの意義、効果は一層高くなります。コミュニティグリッド内で負荷に応じて発電、重電、放電を制御することで、系統電力に負担をかけずに経済性と環境性を両立させるエネルギーの使い方が実現できるからです。
私は、日本におけるスマートグリッドは電力会社からの系統系グリッド（上流）とコミュニティグリッド（下流）に分割され、系統系グリッドは電力会社の一元管理によるシステムが構築されるが、コミュニティグリッド内では負荷に応じて自律的に発電、重電、放電を制御する、ゆくゆくは電力の双方向売買も可能となるという方向に発展すると考えています。コミュニティグリッドの情報網はオープンな従来のインターネットであり、電力ネットワークに接続しているものは将来すべてスマートグリッドに接続することになります。また、スマートグリッドの情報網はインターネットが基本となりますので、それらの機器はすべてインターネットにも接続することになると想定されます。