ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

電通マンぼろぼろ日記

2024年05月01日 | 本を読んだで

 福永耕太郎         三五館シンシャ

 だれでも知っている大企業でありながら、日本に害毒を流している企業はいくつかあるが、この本の著者が働いていた電通も害毒企業であることが、この本を読んで判った。
 電通はいうまでもなく広告代理店。クライアントから宣伝広告の依頼を受け、広告を制作して、新聞放送などのメディに流すのをなりわいとしている。このクライアントからの受注、メディへの提供といった時点で、よからぬ金品が動くようだ。ホイチョイプロダクションの「気まぐれコンセプト」という漫画。小生はあれは冗談だと思っていた。ところがこの本を読んで、あれはぜんぶ本当のことだと判った。本当、いや現実は漫画より悪質だ。
 宣伝広告をうちたい企業が、複数の広告代理店にプレゼンを要請する。プエレゼン合戦となる。こういう場合、よいプレゼンをしてよい広告を創れそうな広告代理店より、企業の宣伝担当者への接待で発注先が決まる。電通はその接待が一番盛大であったということ。創った広告はメディアに流さなければ一般消費者に届かない。どういう具合にメディアに流すか。ここで新聞や放送関係者がこんどは電通の担当者を接待する。
 パソコンメーカーのF社が新しいパソコンを発売する。広告をうたねばならない。テレビのCMもしよう。CMタレントはだれがいい。F社の広告担当重役が夫婦そろって「不器用な」大物俳優Tのファンだった。CMタレントはこの一件だけでTに決定。そのCMは今でも動画で見られる。
 一事が万事。日本の宣伝広告は情実、接待、担当者の個人的感情、好き嫌いで決まるらしい。そういう風潮を創ったのは電通である。
 この商品を売りたい。純粋に売れる広告をうつには、どこの広告代理店に任せるべきか。どういう広告が真に効くか。CMタレントに最適なのはだれか。こういうことを純粋に考えて広告を行うべきなのに、電通はそれを歪めてしまった。で、企業の宣伝広告費の多くがムダに膨らみ、それが商品価格に反映して、われわれ消費者に不利益をもたらしているのである。
 かって電通は社員の一人や二人が過労死するのが当たり前であった。高橋まつりさんの自死によって、さすがにいまのところは反省しているようだが、本当だろうか。だいたいが、こんなバカが社長やっていた会社である。ろくなもんではない。
 著者は高給を取っていたが、長年の電通マン生活で、アル中になって急性劇症膵炎になって、離婚して、自己破産した。自業自得である。電通は大学生の就職したい企業ランキングで上位だ。そういう大学生にこの本を読んでもらいたい。