ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2023年12月21日 | 映画みたで

監督 フィリダ・ロイド
出演 メリル・ストリープ、ジム・ブロードベンド、アレクサンドラ・ローチ

 しかし、ひどい邦題だな。原題はThe Iron Lady「鉄の女」だ。それをなんで、こんなしまらない、情緒に訴える邦題にしたのか。センスのなさが判る邦題だ。この映画を観ればわかるけど、主人公のマーガレット・サッチャーが涙を流しているシーンはない。原題の「鉄の女」だと直截的すぎて日本の観客にうけないだろうとの判断だろう。イギリス初の女性首相のサッチャーは確かに「鉄の女」といわれていたが、マーガレット・サッチャーは血も涙もないロボットみたいな金属女ではなく、夫を愛し子供を愛し、歳を取って認知症になる、普通のおばさんだ。そのおばさんの伝記映画に「鉄の女」との題名をつけたのは、世間ではそういわれているけど、ほんまはこんな人だったんやで、と、いうことをこの映画を創った人はいいたかったのだろう。それをこんな邦題。ワシがこの映画の製作者なら抗議するな。
 映画はマーガレット・サッチャーがマーガレット・ロバーツという食料品店の娘だったころから始まる。政治に関心のある娘だった。24才で立候補して落選。その後、30代で当選。下院議員となる。保守党に所属して、教育大臣になり、保守党党首となって、イギリス初の女性首相となる。サッチャーは保守でタカ派の政治家だ。在任中にフォークランド紛争がおこるが、サッチャー首相は強力なリーダーシップを発揮してイギリスを勝利に導く。
 その強力なリーダーシップは、強引、傲慢、独善と表裏一体。やがて、国民や保守党員からも嫌われる。側近が離れていく。そして首相退任。サッチャーの評価はまだ定まっていないが、斜めになったイギリス経済を立て直したのはサッチャーの功績だろう。首相引退後、夫にも先立たれたが、認知症になって、マーガレットにとっては夫は常に横にいる。
 メリル・ストリーブの演技力を満喫する映画である。