Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

失語症・時間・神秘体験①

2007-06-17 03:25:58 | 基礎生命医科学:基礎医学・生物科学
脳の高次機能の一環として失語症について解説をしていた折りのこと。失語症とあって、発話行為・発語が困難なブローカ失語症に対して、言葉は聞き取れるが言語理解が著しく障害を受け、これにより訳のわからない言葉(ジャルゴン)を発する事もあるウェルニッケ失語症の病巣部位が問題となった。記憶していた病巣部位が学生の持っている教科書とは異なるのである。教室内は当然であるが騒然とする。これについて後から詳細に検討を加えたが、結論は意外であった。

ふつう脳を52の領域(領野という)にわけたブロードマンの領野を脳と神経関連の諸科学では地理的な座標として用いる。これによると1野からはじまって52野までが存在する筈である。22野とか42野とか諸説あるなかで、このように離れた番号同士がひとつの領域に対応して議論されるのは、ある部位からそれこそ一筆書きでもするような規則正しさで番号が付けられていないからにほかならない。いきおい3・1・2野とか名前を読み上げる方も番号順にならない。

では、ウェルニッケ失語症の病巣部位はどこか?10数種類の文献の比較検討としては、厳密に限定された病巣部位は今のところ存在しないという事である。22野とか42野がどうとか言うのは「だいたいこのあたり」と言う検討をつける為のものである。この事について誠実に記載していたのが標準的な外科学の教科書とあれば意外に思われる向きもあるかも知れない。

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