Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

カラシレンコン My Paralyzed Appetite

2007-06-12 20:15:01 | 臨床医学
なぜか多忙を極めるが5分だけホカゴトを。カラシレンコンが我が家に届く。無論、正規のルートからである。多忙によりストレス下にある私は目の前の食品を眺めながら溜息がでる。カラシレンコンと聞いてフグを食べるような心境だからである。

あれは忘れもしない1984年の事である。熊本県において食中毒が発生した。原因はボツリヌス毒素である。それ以来、カラシレンコンと聞くとボツリヌス菌(C.botulinum)を想像してしまう。作用機序は、運動神経と筋肉とを結合する神経筋接合部に結合することによって、神経から筋肉へと送られている分子の信号であるアセチルコリンの分泌を抑制してしまうという。

運動神経から筋への伝達物質抑制によって弛緩性麻痺を起こすと言うから核下性麻痺の病態を呈すると言う事か。最近ではボツリヌス毒素と言うと神経内科の治療にも使われているが、適当な条件を設定して限定して使えば有用であると言う事だろう。毒は薬、薬は毒とは言うが、まさにそのとおりであろう。

食中毒の問題は、菌と毒素が口から入って腸管で吸収されると血管やリンパ管を通じて全身にまわってしまうことだ。全身の筋肉の中には呼吸筋や心臓の心筋も含まれているから呼吸停止・心停止となる。一部の骨格筋を狙って使用するぶんには有効性が認められたとなると、まだまだ身近に出回る毒物も汚名払拭・名誉挽回のチャンスがあるだろう。フグ毒がそのよい例だ。

さて、目の前のカラシレンコン・・・安全と分かっているのだが、三十路まで持ち越した積年のイメージを払拭し乾坤一擲、いざ食さんとするには小生、些かの勇気を要する。拝

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