団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

日本航空(上)

2009-07-31 06:34:12 | 日記

日本航空(上)
政府保証融資の次は公的資本注入か
再建シナリオの全貌と赤字構造



日本航空が「自主再建」の看板を下ろし、6月末に公的支援の下で資金調達した。危機はさらに深まり、第1四半期の営業成績はどん底。支援の条件とされた企業年金制度改定も風前の灯火。630億円という大幅赤字予想すら達成が厳しい事態に陥っている。国主導の再建シナリオは遂行されるのか。その行方とともに、赤字を繰り返す企業構造の深層に迫った。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井 真粧美)


 6月23日、東京都千代田区の日本武道館で日本航空(JAL)の定時株主総会が開催された。


 経費削減状況、競合他社との収益力の差、企業年金制度改定、燃油ヘッジ損など、株主から経営に関する質問が相次いだが、経営陣は儀礼的な回答でそのすべてをかわした。ろくな説明もできないまま、やじにまみれて総会は終了した。


 同日同時刻、千代田区永田町では参議院の財政金融委員会が開かれ、与謝野馨財務相、加納時男国土交通副大臣、前田隆平国交省航空局長らが民主党の峰崎直樹議員からJAL支援について厳しい質疑を受けた。


 前日の22日に河村建夫官房長官、与謝野財務相、金子一義国交相の3閣僚が会談し、JALを政府支援する方針が確認されていた。


 当事者のJALは、株主総会と重なったため委員会への参考人出席が免除され、政府がJALのぶんも答弁を肩代わりした。


いまや“まな板の上の鯉”
当事者能力を失う経営陣


 峰崎議員「(JALは前期)631億円の赤字でした。来年の3月期は経営改善を努力しますということを前提にして、どのぐらいの赤字だというふうに言っているんですか」


 加納副大臣「630億円の赤字だったんではないかと思います」


 峰崎議員「もう事実上債務超過じゃないか。要するに航空、いわゆる人や物を運ぶ事業が黒字になっていないというところがいちばん大きい問題じゃないですか」


JALの主導権が経営人から国に移った瞬間


 財金委員会ではJALの総会よりよほど具体性のある質疑応答がなされ、政府は公的支援に理解を求めて繰り返し答弁に立った。この日の2つの光景は、JAL再建の主導者が国へ移ったことを象徴している。JAL経営陣はすでに当事者能力を失いつつある



JALおよび関係者の主な動き


 3年前の2006年6月、JALは株主総会直後に2000億円規模の公募増資を発表。市場から大きな非難を浴びながら約1400億円を調達した。


 しかし、その巨額の資金はすぐに底を突き、08年3月、今度は銀行や取引商社など15社を引受先とする第三者割当増資を実施、約1500億円分の優先株を発行した。それから1年もたたないうちに、世界的な景気後退の影響で経営はさらに悪化した。


 「3年後には正常な経営に戻るという前提で優先株を引き受けたのに、経営計画は1年目で頓挫してしまった」


 JALの惨状に銀行団は頭を抱えた。新たに資金調達しなければ6月にも資金ショートに陥る非常事態。奇策の増資をやり尽くしたJALは09年年明け以降、政官、銀行団に2000億円規模の融資を求めて回った。渋る銀行、焦るJAL。業を煮やした国交省が次第に表立って動くようになった。


 「国ぐるみで抜本的な再建プランをつくるので、協力を頼みます」


 国交省から政府支援の方針が示され、銀行団の態度はようやく軟化した。かくして6月下旬、日本政策投資銀行のJAL向け融資600億円強に80%の政府保証が付けられ、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、国際協力銀行が参加するかたちで計1000億円の協調融資が実施された。


 「JAL経営陣と面談しても、背後で仕切っている国交省と話している気分になる」と銀行幹部。国交省は、JALに夏のあいだに経営改善計画を策定するように指導し、経営に監視の目を光らせている。7月9日にはJAL支援で銀行団と連携するための連絡会議も発足した。


 というのも、6月の1000億円融資は資金ショートを回避するための緊急措置。年末までの短期的なつなぎ融資にすぎない。JALに本当の意味での審判が下されるのは、この年末である。


 JALが提示する経営計画の内容によって銀行団は本格的な支援の可否、すなわち2000億円規模の長期融資を実施するかを判断する。そして本格支援にゴーサインが出た場合、併せて公的資金による資本注入や銀行団による債務の株式化(DES)が検討される可能性がきわめて高い。


 「過小資本に手を打たないと」と銀行関係者。09年3月期の自己資本比率はわずか10.0%。バランスシートに計上されないリース債務や退職給付債務の未認識債務を含めれば、実質的には債務超過。資本増強なくして再建できないことは明らかなのだ。


 公的資本注入やDESが実施されれば、国(つまり国民)、銀行団はさらに大きなリスクを負うことになる。当然、JAL自身の自助努力が求められる。その目玉としてJALが掲げたのが企業年金制度改定である。


難題の企業年金削減
OBは反対の署名運動



JALの財政状況(2009年3月期)


 5月12日。決算発表で年金制度改定によって退職給付債務を1600億円圧縮し、今期に特別利益880億円を計上する計画が公となったその日、年金受給対象者には日付指定郵便で年金改定計画の封書がいっせいに届いた。そこには「給付が5割超の減額になる可能性がある」と記されていた。



企業年金削減案に、OBたちは怒り心頭!




JALとANAの企業年金制度


 JALの企業年金制度は上図のとおり、同業の全日本空輸(ANA)と比べて手厚い。退職給付債務は巨大化し、約3300億円もの積み立て不足に陥っている


 受給者側に立てば、長年勤め上げたすえに獲得した受益権を簡単に手放すはずもない。JALのOB有志は「JAL企業年金の改定について考える会」を発足して反対の署名活動を実施。同会のウェブサイトによると、7月14日現在、OB2900人以上が署名している。


 「年金削減と融資をセットにすること自体がおかしい」。OBたちは怒り心頭だが、金子国交相は「(これは)セット。社長の責任をもって、実現を必ずしてもらうこと、これが(公的支援の)1つの条件」と明言し、銀行幹部も「最も注視しているのが年金改定」「不退転でこれを実現することが支援の大前提」と同調している。


 OBの総数は約9000人。改定には加入者である現役社員、受給者であるOBのそれぞれから3分の2以上の同意が必要だ。JALは夏中に改定の具体案を提示する予定だが、すでにOBの反発は強く、「月内にOB3分の1以上の署名が集まる見通しだ」と会の世話人。


 支援の可否を左右する年金改定は早くも頓挫の危機に直面している(「JAL企業年金の改定について考える会」によると、7月17日に不同意表明への署名が3000人を超え、3分の1に達した)。


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