[ロンドン 24日 ロイター] 液化天然ガス(LNG)は世界で最も急成長している燃料であり、新たな発見によって、従来型の石油・ガス市場を主導してきた中東や欧州の長年にわたる独占を脅かす見通しだ。
東アフリカとオーストラリアでの発見により、天然ガスは2030年までに石炭を抜いて世界2位の燃料源となり、その後、1位の石油にも迫る勢いが見込まれている。
こうした天然ガスの発見は、LNG輸出を主導するカタールにとって脅威となるだけでなく、海上輸送されることで、長年にわたって市場を独占してきたロシアやノルウェーなどのパイプライン輸送事業も脅かす見込みだ。
ソシエテ・ジェネラルのエネルギーアナリスト、ティエリー・ブロス氏は「長期的には、こうした新たな発見が世界のガス市場を形成し、現在の独占勢力を低下させる可能性がある」と指摘した。
国際LNG輸入者連盟によると、世界経済の低迷にもかかわらず、LNGの取引量は2011年に10%近く拡大し、2億4080万トンとなった。
<オーストラリアが最大のLNG輸出国に>
オーストラリアのLNG輸出は10年後までにカタールの年間7700万トンを超えて世界最大となり、2017年までに6000万トン、2020年までには最大1億トンになると、アナリストらは予想している。
一方、米地質調査所(USGS)は、東アフリカのケニア、タンザニア、モザンビーク沖の天然ガス埋蔵量が250兆立方フィート(7兆1000億立法メートル)超にのぼるとの概算を示している。これはアフリカ最大のエネルギー生産国ナイジェリアの186兆立方フィートを上回る水準。
オーストラリアと東アフリカは、すでに世界最大のLNG市場となっているアジアへの輸出拡大の恩恵を受ける見通しだ。
アジアの2011年のLNG消費量は生産の3分の2近くを占めており、域内の高い経済成長や新たな輸入ターミナルの利用開始、東日本大震災後の原発事故で打撃を受けた日本の原子力産業などを踏まえると、今後もアジアの消費量は増える見込みで、中国が主導するとみられている。
中国はロシアからのガス・パイプラインの価格交渉で合意に至っておらず、LNGターミナルの開発に注力している。
中国のガス需要は現在、英国の年間1000億立方メートルと肩を並べているが、国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、2020年までには3000億立方メートル超、2030年までには5000億─6000億立方メートルに拡大する見通し。
<供給の柔軟性>
天然ガスの供給手段としては現在、パイプライン輸送が独占しており、ロシア、ノルウェー、カナダといった主要なプレーヤーが隣国の市場へとガスを輸出するため、長距離にわたるパイプラインを敷設している。
だが、オーストラリアや東アフリカがガス輸出国として台頭し、新たな顧客市場も形成されつつあることから、このバランスはLNGに一段とシフトしていくことになる。
その一因には、LNGの海上輸送が、最も需要の高い地域をカバーし、比較的短期間に供給の不足と過剰に対処できるという点がある。
バーンスタインのアナリスト、ロブ・ウエスト氏もこの点について指摘している。
IEAによると、天然ガスは2030年までに世界の燃料源として石炭を越え、2035年までには石油をも追い越し、石油輸出国機構(OPEC)などの機関の独占を脅かす可能性がある。
<企業の動き>
LNGの成長は、新たなプレーヤーも取り込んでいる。原油ブローカー大手のPVMは最近、LNGデスクを開設。ジュネーブに拠点を置くマーキュリアなどの独立系商品取引大手も、LNG事業を拡大している。
オーストラリアと東アフリカは、見込まれる豊富な天然ガス資源の恩恵を受けようとする欧州や北米のエネルギー大手を引き付けている。
大方のアナリストは、この10年の終わりまでにLNG輸出量で主要プレーヤーとなる企業として、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L: 株価, 企業情報, レポート)、米エクソンモービル(XOM.N: 株価, 企業情報, レポート)、米シェブロン(CVX.N: 株価, 企業情報, レポート)、英BGグループ(BG.L: 株価, 企業情報, レポート)、仏トタル(TOTF.PA: 株価, 企業情報, レポート)、英BP(BP.L: 株価, 企業情報, レポート)を挙げている。
主にパイプライン事業に注力しているロシアのガスプロム(GAZP.MM: 株価, 企業情報, レポート)とノルウェーのスタトイル(STL.OL: 株価, 企業情報, レポート)も、独自の輸出ターミナル開発と海外資産の取得を通じてLNG事業を拡大する計画だ。
(Henning Gloystein/Oleg Vukmanovic記者;翻訳 佐藤久仁子;編集 吉瀬邦彦)
東アフリカとオーストラリアでの発見により、天然ガスは2030年までに石炭を抜いて世界2位の燃料源となり、その後、1位の石油にも迫る勢いが見込まれている。
こうした天然ガスの発見は、LNG輸出を主導するカタールにとって脅威となるだけでなく、海上輸送されることで、長年にわたって市場を独占してきたロシアやノルウェーなどのパイプライン輸送事業も脅かす見込みだ。
ソシエテ・ジェネラルのエネルギーアナリスト、ティエリー・ブロス氏は「長期的には、こうした新たな発見が世界のガス市場を形成し、現在の独占勢力を低下させる可能性がある」と指摘した。
国際LNG輸入者連盟によると、世界経済の低迷にもかかわらず、LNGの取引量は2011年に10%近く拡大し、2億4080万トンとなった。
<オーストラリアが最大のLNG輸出国に>
オーストラリアのLNG輸出は10年後までにカタールの年間7700万トンを超えて世界最大となり、2017年までに6000万トン、2020年までには最大1億トンになると、アナリストらは予想している。
一方、米地質調査所(USGS)は、東アフリカのケニア、タンザニア、モザンビーク沖の天然ガス埋蔵量が250兆立方フィート(7兆1000億立法メートル)超にのぼるとの概算を示している。これはアフリカ最大のエネルギー生産国ナイジェリアの186兆立方フィートを上回る水準。
オーストラリアと東アフリカは、すでに世界最大のLNG市場となっているアジアへの輸出拡大の恩恵を受ける見通しだ。
アジアの2011年のLNG消費量は生産の3分の2近くを占めており、域内の高い経済成長や新たな輸入ターミナルの利用開始、東日本大震災後の原発事故で打撃を受けた日本の原子力産業などを踏まえると、今後もアジアの消費量は増える見込みで、中国が主導するとみられている。
中国はロシアからのガス・パイプラインの価格交渉で合意に至っておらず、LNGターミナルの開発に注力している。
中国のガス需要は現在、英国の年間1000億立方メートルと肩を並べているが、国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、2020年までには3000億立方メートル超、2030年までには5000億─6000億立方メートルに拡大する見通し。
<供給の柔軟性>
天然ガスの供給手段としては現在、パイプライン輸送が独占しており、ロシア、ノルウェー、カナダといった主要なプレーヤーが隣国の市場へとガスを輸出するため、長距離にわたるパイプラインを敷設している。
だが、オーストラリアや東アフリカがガス輸出国として台頭し、新たな顧客市場も形成されつつあることから、このバランスはLNGに一段とシフトしていくことになる。
その一因には、LNGの海上輸送が、最も需要の高い地域をカバーし、比較的短期間に供給の不足と過剰に対処できるという点がある。
バーンスタインのアナリスト、ロブ・ウエスト氏もこの点について指摘している。
IEAによると、天然ガスは2030年までに世界の燃料源として石炭を越え、2035年までには石油をも追い越し、石油輸出国機構(OPEC)などの機関の独占を脅かす可能性がある。
<企業の動き>
LNGの成長は、新たなプレーヤーも取り込んでいる。原油ブローカー大手のPVMは最近、LNGデスクを開設。ジュネーブに拠点を置くマーキュリアなどの独立系商品取引大手も、LNG事業を拡大している。
オーストラリアと東アフリカは、見込まれる豊富な天然ガス資源の恩恵を受けようとする欧州や北米のエネルギー大手を引き付けている。
大方のアナリストは、この10年の終わりまでにLNG輸出量で主要プレーヤーとなる企業として、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L: 株価, 企業情報, レポート)、米エクソンモービル(XOM.N: 株価, 企業情報, レポート)、米シェブロン(CVX.N: 株価, 企業情報, レポート)、英BGグループ(BG.L: 株価, 企業情報, レポート)、仏トタル(TOTF.PA: 株価, 企業情報, レポート)、英BP(BP.L: 株価, 企業情報, レポート)を挙げている。
主にパイプライン事業に注力しているロシアのガスプロム(GAZP.MM: 株価, 企業情報, レポート)とノルウェーのスタトイル(STL.OL: 株価, 企業情報, レポート)も、独自の輸出ターミナル開発と海外資産の取得を通じてLNG事業を拡大する計画だ。
(Henning Gloystein/Oleg Vukmanovic記者;翻訳 佐藤久仁子;編集 吉瀬邦彦)