庶民のレジャー施設として親しまれてきた公営プールが、各地で相次いで閉鎖されている。文部科学省の調査では、96年に5460カ所あった公営プールは08年に4312カ所まで減少。少子化や娯楽の多様化で利用者が減る一方、自治体も財政が厳しく老朽設備の更新を見送っているためだ。厳しい暑さが続く中、身近な涼はどうなるのか−−。
8月上旬、大阪府寝屋川市の公園屋外にある市民プールに人影はなく、解体作業の大型重機がうなっていた。78年の開設当初は約8万7000人の利用があったが、近年は5万人ほどまで減少。当面の改修に約7500万円かかるとの試算もあり、市や議会が昨年度での閉鎖を決めた。公園を訪れていた無職男性(69)は「毎年夏に帰省する孫を連れてプールに行くのが楽しみだった。どこの市も財政が厳しいのは分かるが、身近な施設がなくなっていくのは残念やね」。
「総合的に判断して存続は困難」。同府富田林市も66〜79年にかけて開設した市営プール4カ所を、老朽化を理由に昨夏限りで閉鎖した。いずれも屋外の25メートルプールで、一部トイレは水洗化すらされないまま。原因不明の水漏れが起き、水質維持にも支障が出かねなかったという。今後は市立小中学校のプールを一般開放し、代替とする方針だ。
安全管理も大きな課題だ。埼玉県ふじみ野市の市営プールでは06年7月、女児(当時7歳)が吸水口に巻き込まれて死亡する事故が発生、市の管理体制の不備が批判されて閉鎖に追い込まれた。ある自治体の担当者は「各地の事故をきっかけに身長制限などを厳格に運用したところ、客が減ってしまった」と打ち明ける。
一方、公営でも屋内施設は減っていない。高度成長期に開設され、夏場の2カ月ほどしか営業できない屋外プールは、「費用対効果が良くない」と指摘される。横浜市が市内41の公営プールの客1人当たりの税金投入額を調べたところ、古くて客足が遠のいた屋外プールは最高で約2600円で、屋内プールの平均(約1200円)の2倍以上だった。同市は「厳しい財政状況が続く中、持続可能な行政サービスの実現には選択と集中が不可欠」としている。【平野光芳】
8月上旬、大阪府寝屋川市の公園屋外にある市民プールに人影はなく、解体作業の大型重機がうなっていた。78年の開設当初は約8万7000人の利用があったが、近年は5万人ほどまで減少。当面の改修に約7500万円かかるとの試算もあり、市や議会が昨年度での閉鎖を決めた。公園を訪れていた無職男性(69)は「毎年夏に帰省する孫を連れてプールに行くのが楽しみだった。どこの市も財政が厳しいのは分かるが、身近な施設がなくなっていくのは残念やね」。
「総合的に判断して存続は困難」。同府富田林市も66〜79年にかけて開設した市営プール4カ所を、老朽化を理由に昨夏限りで閉鎖した。いずれも屋外の25メートルプールで、一部トイレは水洗化すらされないまま。原因不明の水漏れが起き、水質維持にも支障が出かねなかったという。今後は市立小中学校のプールを一般開放し、代替とする方針だ。
安全管理も大きな課題だ。埼玉県ふじみ野市の市営プールでは06年7月、女児(当時7歳)が吸水口に巻き込まれて死亡する事故が発生、市の管理体制の不備が批判されて閉鎖に追い込まれた。ある自治体の担当者は「各地の事故をきっかけに身長制限などを厳格に運用したところ、客が減ってしまった」と打ち明ける。
一方、公営でも屋内施設は減っていない。高度成長期に開設され、夏場の2カ月ほどしか営業できない屋外プールは、「費用対効果が良くない」と指摘される。横浜市が市内41の公営プールの客1人当たりの税金投入額を調べたところ、古くて客足が遠のいた屋外プールは最高で約2600円で、屋内プールの平均(約1200円)の2倍以上だった。同市は「厳しい財政状況が続く中、持続可能な行政サービスの実現には選択と集中が不可欠」としている。【平野光芳】