「いのちの十字路」 南杏子 幻冬舎 2023.4.5
「いのちの停車場」の続編。
医師国家試験に合格し、野呂は金沢のまほろば診療所に戻ってきた。
娘の手を借りず一人で人生を全うしたい母。
母の介護と仕事の両立に苦しむ一人息子。
末期癌の技能実習生。
妻の認知症を受け入れられない夫。
体が不自由な母の世話をする中二女子。
……それぞれの家庭の事情に寄り添おうとするけれど、不甲斐ない思いをするばかりの野呂ーー。
彼もかつてヤングケアラーで、介護していた祖母を最後に″見放してしまった″という後悔があった。
仙川先生が言う。
「我々の目的は、患者が望む医療を提供すること。希望を支える医療をすることだよ。ほかの誰かにとって正しい医療をすることじゃない」
「家の中で、家族のお世話をする子って、いい子なんですよね?」
と聞く陽菜に野呂は答える。
「自分をした。裏切っちゃいけない。自分を大切にするのは、自分しかいないのだから」
「誰かにとって『いい子』でも、自分にとって『いい子』かどうか、考えなきゃ」
大人しく介護する「いい子」の全員に、僕は声の限りを尽くして叫びたい。
君たちがどれほど貴重な時間を失っているか、どうか気付いてください、と。
じゃあ、現実をどう解決するのかと問われれば、万能の答えなどないだろう。けれど、先ずは当人の自覚が第一歩になる。
『介護』は義務ではない、ということを改めて考えさせられた。
「介護を受ける権利」
「介護を行う権利」
「介護を受けるのを強制されない権利」
「介護を行うのを強制されない権利」
そして
「介護を休む権利」