「掬えば手には」 瀬尾まいこ 講談社 2022.7.4
大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。
ところが、バイト先で出会った常磐さんは、匠に心を開いてくれない。
「両親は、やりたいことを仕事にしている自分たちの人生をすばらしいと思ってて、ぼくにも『勉強なんてどうでもいい、匠が好きなことを伸ばせばいい』って子どものころから言ってた。それなのに、ぼくは何にもできないまま大きくなってしまって」
「平凡はつまらないぞ。好きなことを思いっきりやれ」
父親はそうアドバイスをした。(略)
次第にぼくに取り立ててこれというものがないことに、両親もあきらめ始めた。
普通って?
平凡って?
人に寄り添う、
一歩踏み出す勇気がほしいときに、そっと背中を押してくれる、
そんな優しさ