ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「利休にたずねよ」

2018-07-23 11:50:46 | 

 

「利休にたずねよ」 山本兼一 PHP研究所 2008.11.7

 

以前読んだと思うが、例により、まったく記憶にない (^^;

第140回、直木賞受賞作。

 

「とびきり屋」「ちょうじ屋」など同様、山本さんの、

茶の湯、道具などへの見立て、見識、表現等に改めて感じ入った。

 

おのれの美学だけで秀吉と対峙した利休が見事に描かれていた。

切腹直前から次第に過去へと、

利休はじめ様々な人々の視点で戻る構成もよい。

 

秀吉は気づいた。

 利休の点前には、一座の会、一碗の茶をかけがえのないものとして慈しむ執着と気迫がある。そんなこころを秘めながら、かろやかに点前してみせる。

 

人の世は……

むさぼり、いかり、おろかさの三毒の焔に満ちあふれている。

しかし利休は古渓宗陳に言う。

「人は、誰しも毒をもっておりましょう。毒あればこそ、生きる力も湧いてくるのではありますまいか」

たしかに、むさぼりの心があればこそ、生きる力も湧いてくる。

「肝要なのは、毒をいかに、志にまで高めるかではありますまいか。高きをめざして貪り、凡庸であることに怒り、愚かなまでに励めばいかがでございましょうか」

 

利休の名を帝に奏上したのは、その宗陳だった。

老古錐となって、禅に励めという意味。

鋭さも、ほどほどにせよ、とい教えをこめた「利休」である。

 

秀吉が天下をとったのも、北野の茶会も、利休が切腹に追い込まれたのも史実だけれど、

人間模様の機微はいつも闇のなかだ。

だから、多くの物語が紡がれて、豊かな世界へと誘ってくれる。

 

そんな思いを改めて感じた作品。

 

コメント
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