「長く高い壁 The Great Wall 」 浅田次郎 KADOKAWA 2018.2.28
1938年秋。
流行探偵作家の小柳逸馬は、従軍作家として北京に派遣されていた。
だが、突然の要請で、前線へ向かうこととなる。
検閲班長の川津中尉と共に、北京から半日がかりで辿り着いた先は、万里の長城、張飛嶺。
そこで待っていたのは、第一分隊10名が善因善果死亡という大事件だった。
なぜ、戦場に探偵作家が呼ばれたのか。
10名は戦死でなないのか。
分隊内での軋轢、保身のための嘘、軍ならではの論理ーー。
この戦争に大義はあるのかーー。
小田島曹長は言う。
「戦場においては、時として事実と真実は別個のものとされます。それが戦争です」
「こいつらは、みんな赤紙一枚で引っ張られてきとるんですよ。親もあれば、女房子持ちもおるんです。そんな兵隊が、毒を盛られて殺されたなど、どの口が言えますか。だが、真実は究明しなければならん」
川津中尉は考える。
単一民族であり、陸上の国境を持たなかった日本は、実に平和な国であったと言ってよかろう。何にも増して「和」を貴んできたのである。そうした歴史が、「そうであってくれればよい」という希望的観測を、いわば共通の国民性として形成したのであろう。
軍隊にはそもそも「ヨコ」の概念がないので、意見は「タテ」に遡上して頂点で命令となって下達される。
登場人物のキャラや会話が良い。
謎解きを通じて、日本軍の闇を描こうとしたのか。