歩荷(ぼっか)に道を開けると、
「ありがとうございます」
と声をかけて通り過ぎてゆきます。
「大変ですね。頑張って」
「はい。毎日のことですから大丈夫です」
とはすごいお言葉。
励まして見送ればいいのですが、
「女人堂はもうすぐですか?」と
聞くひとがいました。
すると立ち止まって説明をしてくれました。
「このすこし先に立派な橋がかかっていますので
そこがこの区間の中間点ですね」と説明。
いやあ親切でとてもありがたいのですが、
一方で気の毒です。
後ろを振り返るのもバランスを取っています。
まあ親切な山人ですね。
後光がさして見えますね。
そんなアドバイスに従って、
気合を入れてまた歩き始めます。
この辺りから、皆さん自分のペースで
登り始め、二人が先行してゆきます。
現行のマラソンランナーの
女性ですからとても元気です。
傾斜が少し急になってきました。
一歩ずつの歩幅が大きくなってきますので、
知らず知らず疲労がたまってきます。
そして、先ほど歩荷が説明してくれた
橋のところに出ます。
ああ、この橋はイオングループが
負担してくれているんですね。
ありがたいです。
エスカレーターでもいいのになあ、
なんてことは決して言いません。
道に橋が架かっているということは、
道が濡れているからです。
そうそうこの山を登っていて思ったのは、
水分が豊富な山やなあってことです。
山の下には池がたくさんありましたし、
コースの選び方かもしれませんが、
ところどころで簡単な沢のように
なっているところも何か所かありました。
天気が悪いのも関係しているけどね。
そして生えている木はだんだん
高所の木になってゆきます。
カラ松、ダケカンバ、ナナカマド。
中間点も過ぎたということが、
よりいっそう歩く気持ちを
増幅してゆきます。
頑張って一段一段、
そして先へ先へ一歩一歩と
進んでいきます。
シャッターミスで押されていた写真に
ツマトリソウが写っています。
高山植物ですねえ。
そして道標は頂上まで2400m
とか書かれています。
さっきのどうも山小屋までの
距離が書かれてあった道標と
突き合わせて、女人堂が近づいてきている
のを喜んでいます。
そしてついに八合目の女人堂に到着です。
雨は結構降り始めていますので、
同行していた女性は
「私はここまで」と言ってます。
そうですね。
天気予報通りに荒れ始めています。
しかし先行していた二人は、
この先に見えている9合目まで
入ってみるわというので、
無理しないようにと送り出しました。
たぶんここからは森林限界を超えるので、
雨風はかなりきつくなるのでしょうが、
まあある意味、慎重な二人ですから
安全でなければ戻るでしょう。
一方で僕らはここの山小屋の
入り口を借りて休憩です。
カウンターには先ほど追い越していった
歩荷が座っています。
彼曰く、もう少し歩けば、
見晴らしのいいところがありますよ
ということだったので、
じゃそこまで行こうと
腰を上げたのでありました。
どうも今思えば、その辺に
金剛童子があったのですね。
そこまでいけば、その昔女人が
登れた最高地点だという思いが
彼には会ったのかもしれません。
続く