しろくま

軟い雑感、とりとめなく。

ヘミングウェイごっこ

2013-05-25 | 本棚
タイトルと(カバー裏)紹介文に惹かれて買った。
内容(「BOOK」データベースより)
ジョン・ベアドはヘミングウェイが専門の大学教員。とあるバーで論文を執筆中、ある男からヘミングウェイの原稿の贋作づくりを持ちかけられる。これまでも成功した贋作事件の例はある。一攫千金も夢ではない!いつしか贋作づくりに熱中しタイプライターを打つベアドの前に、なんとヘミングウェイその人が現われたことから*、事態は思いもかけぬ方向へと…ヒューゴー&ネビュラ両賞受賞の中篇を長篇化した異色時間SF。

ヘミングウェイごっこ (ハヤカワ文庫SF)
クリエーター情報なし
早川書房


だけど
ヒューゴー&ネビュラ両賞受賞/ひらたくいえば人気と“通”の評価と
私の好みの違いを感じた。

作家の作風/読者層に、私が合わなかっただけなのだが
猥雑、バイオレンスの“無造作感”が気にかかった。
洋画・洋楽好きにもかかわらず、
どこかに残っている日本(人)的な根っこかもしれない(私感)**

感覚的にいえば
(映画)音楽から入ったTaxi Driverの感じと似ている。
途中からゲッとなったが、だからこそ
最初のとラストのスコセッシの映像とバーナード・ハーマン/Tom Scottが映えた。
そんなかんじ。
♪Taxi Driver - Main Theme (Vinyl) - YouTube


*そっくりさん大会で敗退したチャップリンみたい(ミケ妹)
クラーク贔屓でアシモフ好きだと「ハーバート・ジョージ・モーリー・ロバーツ・ウェルズ殿」とか
現代に連れてこられ偽名でシェークスピアの講義を受け、そして落としたシェークスピアの話*「不滅の詩人」 とか浮かぶが
この手の話、sfにかぎらず(とくにミステリなどで)けっこうあるだろう。


**フォローになるかどうだか…
私の好みはともかくも、作品の出来はいい。
レビューみたいなもの。興味のある方はどうぞ。

キーウェストでは石を投げれば作家にあたる。
「小説を書いてるのかい?」ころつきシルヴェスター・キャッスルが声をかける。
「小説についてのエッセイだけど。大学で教えている」ヘミングウェイ研究家・マニアのジョン・ベアド。
つかみはOK

「スミス・コロナ21年型だ」ジョン・ベアド
「ははん、ヘミングウェイだな。27年型ならフォークナーだ」タイプライター博物館卸
章の題も「われらの時代」とか、「清潔でとても明るいところ」とか、「海流の中の島々」とか作品にちなんだもの。
マニア心 わしづかみ
(マニアではないが、ひととおり読んどけばよかった)

sfで見れば、時間・多元宇宙もの
物語の行間に
いつの時代とも、どことも知れない世界
時間管理で言えばニュートラル・ゾーン
場所管理で言えば『都市と都市』のブリーチみたいなもの
さまざまな時間・場所で、その管理人たるヘミングウェイとジョンとの交差。

時間・多元宇宙ものの醍醐味というか
話の整合性tsujitsumaは抜かりはない。
最後のシーンのふっと力抜けた感じもナカナカ

なお
ヘミングウェイはジャーナリストで戦争取材しているし
ジョー・ホールドマン(作者)もベトナム帰り
戦争経験者のアメリカ読者層も多いだろう。

ベトナム帰り
オリバー・ストーンやらGood night Saigon/Billy Joelやら
アメリカ文学・音楽・映画、社会・文化に根深い。
いいわるい/好き嫌いでない(戦争は厭だが、O.ストーン追っかけでもない)