宝満山研究会(山岳宗教遺跡の保全と研究)

大宰府の北東に聳える宝満山の歴史的価値を掘り起こし、山の保全を考える会です。

白山登拝記録8

2007-08-14 | Weblog
白山登拝記録8
〈道への執念〉

白山登拝での数ある感銘のひとつに
道の整備が挙げられます。



我々は別当出合から砂防新道を通って登拝しましたが
途中何箇所かガレ場はありましたがそこも
谷水が道を寸断する箇所には立派な石橋が掛けられたり
急斜面では丁寧に足場が置かれたりしていました。
水の湧く泥濘の場所は現在も工事中で
ヘリから下ろされたネットに敷き詰めるための礫や
階の胴木などが登山道脇に準備されていました。


弥陀ヶ原を通り室堂に至る五葉坂の上で振り返って見えた
2筋の木道は見飽きぬほど長い道で
工事の当時はさぞやと思わせるものでした。


室堂から御前峰山頂まではさらに都市公園にあっても
おかしくない立派な石段が組まれており
早暁の御日の出拝観に支障のないようにとの
管理者側の配慮が十分に伝わってくる道でした。


大汝峰麓では細かい火山礫が厚めに堆積し
それこそその砂に埋まった丸石に足をとられて
「石車」に乗って転びそうな場所にも
飛び石のように平石が配置され、
登山道は下位ではできる限りの石段が
岩の斜面は赤丸のマーキングが施され
ガスのかかった状況でもなんとか
迷わず移動できる配慮がなされていました。


千蛇ヶ池西側のお花畑の道もしかり。


別山はさらに徒歩により道の中央がへこんで
溝のようになったいたるところの箇所に
丁寧に砂礫が詰められていました。

雪解けで痛んだルートを5月頃から夏山シーズンまでに
こまめに人力で補修されるものと思いますが
「お金がかかっている」ということよりも
「なにより山が大切にされている」ことが実感される
そんな道が白山の道でした。

御前峰山頂から大汝峰へのルートはさらに北に延び
白山比神社(白山本宮)に至る旧来の「加賀禅定道」。
室堂から別当出合へのルートはさらに延びて
勝山の白山平泉寺に至る「越前禅定道」。
山頂から別山に至るルートはさらに南に延びて
美濃長滝寺に至る「美濃禅定道」と呼ばれた古道でした。

白山比神社所有の『白山記』には天長9年(832)には
加賀・越前・美濃の登拝拠点としての馬場が開かれたとされ、
現在の登山道のおおもとは平安時代にあったとされています。

古代・中世の白山周辺地域の富が
この登拝ルートの維持につぎ込まれていたことは
今に残された白山平泉寺などの遺跡の規模からも
想像に難くありません。
現在は国立公園として管理されていますが
それもこのような長い歴史があってのことと
道を眺めて改めて感じさせられました。
 
※ 白山の歴史にご興味のある方は下記をご参照ください。

石川県立歴史博物館 夏季特別展 「白山-聖地へのまなざし-」展
                2007年8月26日まで開催中

〒920-0963 石川県金沢市出羽町3番1号
TEL:076-262-3236 / FAX:076-262-1836

http://www.pref.ishikawa.jp/muse/rekihaku/hakusan/hakusan.html