かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  289

2021-08-20 17:22:21 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究35(16年2月実施)
    【ポケットベル】『寒気氾濫』(1997年)118頁~
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取 未放


289 残業の灯を浴びながらそこここに髪毟りおる夕鶴あわれ

     (レポート)
 仕事で残業しているのだろう。煌々とした庁舎の灯りが窓の外に漏れ、夕鶴が髪を毟っている様子があちらこちこに照らしだされ、あわれである。
 『夕鶴』は、木下順二作の有名な戯曲である。つうの真の姿は鶴で、自らの羽を抜いては生地に織り込んでいく、文字通り我が身を削って織物をする姿と、夜遅くまで骨身を削って働いているわれとが重なり、おのずと憐憫の情がわいたのであろう。(石井)


     (当日意見)
★夕鶴だから女性を見て思ったのかなと。作者の優しい目が感じられます。(真帆)
★夕鶴は身を粉にして働く人の比喩で、必ずしも女性でなくていいんじゃない。だから夕鶴
 の中には自分も含まれているし、「あわれ」も自身にも向けられている。広い庁舎の煌々
 と照る明かりの下で残業をしている人々を見渡しながらの感慨でしょう。(鹿取)
★夕鶴だから女性だと思います。(藤本)
★夕鶴も髪を毟るも比喩です。髪を毟るは苛立ちの比喩。あっちでもこっちでも残業してい
 る女性が本当に髪をかきむしっているって、実際の光景としてありえないでしょう。
   (鹿取)

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