かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 275

2024-06-19 09:53:10 | 短歌の鑑賞
     2024年度版 渡辺松男研究34(16年1月)
       【バランスシート】『寒気氾濫』(1997年)115頁~
        参加者:S・I、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放
   

275 商工会会長渡辺巳作氏が巨大茶碗で茶を飲む朝

     (レポート)
 商工会会長渡辺氏が、茶を飲むというその状況、人物像などを含めて「巨大茶碗」が実に多くを語っている。責務上、何かの決断が腹にあった朝なのだろう。結句からそんなことを思う。戦いの場で武士が茶をたしなんだという歴史的事象が頭をよぎった。(慧子)


        (当日意見)
★「渡辺巳作氏」は作者のお父さんという設定なのでしょうね。朝、お茶を飲む姿を見
 てるわけだから。(鹿取)
★経済が下降気味の時代、経済成長の時代には会員を束ねてきたという自負があって、
 そこで商工会会長の渡辺さんが巨大茶碗で茶を飲んでいるわけでよく分かります。
  (鈴木)
★朝で終わっているので、やはり会長という公の仕事の上で大きな決断をしないといけ
 ない場面かなと思いました。(S・I)
★私は商工会会長の毎朝の習慣を描写した歌と思っていました。いつもそうするし、今
 日もそうだという。まあ、慧子さんやS・Iさんのような取り方もできますね。それに
 しても、エロチックな雰囲気を漂わせた観音菩薩から、いきなりリアルすぎるリアル
 な現実が提示されて、ちょっとくらくらとします。(鹿取)


     (後日意見)
 『寒気氾濫』冒頭の「地下に還せり」の章に〈土屋文明さえも知らざる大方のひとりなる父鉄工に生く〉がある。(鹿取)

  
コメント
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