かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  172

2021-11-27 17:28:45 | 短歌の鑑賞
   ブログ版清見糺鑑賞 25回  罪と罰   
                       鎌倉なぎさの会   報告 鹿取 未放

172 川とともに人のくらしがありし日の窈窕として河口堰見ゆ
           かりん2001年全国大会

 この歌は、一転、日本の川である。しかし、七月にロシアへ行って、八月の大会に出した歌だから、ヴォルガ河やモスクワ川を見た体験からの思索から導かれた歌だろう。野菜を洗う、種籾を浸ける、鍋や農具を洗う、洗濯をする、水浴びをする、日本の川もかつてはそんなふうであった。それが今ははるか昔のことになってしまって、河口付近は無機質な堰が連なているばかり。もう、人々の生活の中に欠かせなかった親しみある川の顔は見えなくなった。それを惜しんでの「窈窕として」であろう。
 この後、鶴見川の源流を尋ねて山の中を分け入ったり、上流から下流まで川に沿って歩いたり、何度も繰り返していた。ロシアの川に触発された、人間の暮らしと川にたいする哲学的考察の歌。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 清見糺の一首鑑賞  171 | トップ | 清見糺の一首鑑賞  173 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事