かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  350

2021-11-03 19:15:34 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究42(2016年9月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:鈴木 良明     司会と記録:鹿取 未放


350 樹々の根のあらわな崖に音たてて春の疾風がぶつかりつづく

     (レポート)
 山の中では、がけ崩れなどによって、樹々の根があらわになっているところをよく見かける。そこに春の疾風が容赦なく打ちつけて、さらに浸食はすすむだろう。山中の春の樹々といえど、決して安泰ではなく、自然の大きなうねり、変化の中で、かろうじて命を繋いでいる樹々もあるのだ。(鈴木)


     (当日意見)
★「樹々の根のあらわな崖に」って簡潔に情景を捉えた歌い起こしが素敵だなと思いました。
 地味ですけどとてもいい歌だと思います。(慧子)
★崖崩れでなくても、木の根があらわになっている崖はよく見かけますよね。木にとっては「春
 の疾風がぶつかりつづく」のは辛い状況でしょうが、読む方は小気味よい感じがします。す
 がすがした感じですね。(鹿取)
★これは春一番を歌っている気がします。その後春が来て芽吹きが始まるんですね。鈴木さん
 は「かろうじて命を繋いでいる樹々もあるのだ」って辛さを耐えている樹々のことを書いてい
 らして、歌ってここまで読むのかと感心しました。(M・S)
★春一番も含むでしょうが「ぶつかりつづく」だから、ある一日のことではなくもう少し長い
 スパン、このところ毎日毎日「疾風がぶつかりつづく」ということだと思います。(鹿取)

コメント
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