かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  355

2021-11-08 18:31:54 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究42(2016年9月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:鈴木 良明     司会と記録:鹿取 未放


355 君といるときには山毛欅(ぶな)の原林に雨ふるような安堵もありぬ

     (レポート)
「山毛欅」は、欅のような大木になり、若葉にうぶ毛が生えたようになるので、この名があるといわれる。山毛欅は落葉広葉樹なので、その原林は明るく、雨がふっても、暗くじめじめした感じではない。だから、下の句の「雨ふるような安堵もありぬ」が自ずから納得されるのである。(鈴木)


      (当日意見)
★原林は原生林のことだと思いますが、人間の傲慢とかを感じさせないような原林によって表して
 いる。(慧子)
★大好きな歌です。母性とかいいだすと歌がつまらなくなるけど、原林が効いていて、そこにしっ
 とりと雨が降って樹々を育てている、そんな情景が浮かびます。母に抱かれるような安堵感をう
 まく出せている。男の人の気分ってこんな感じなんだろうなって納得がいく。(鹿取)
★原林という言葉はないかもしれないけど、原生林って言うと強すぎる。辞書にはないですから造
 語かもしれないけど、いいですね。(鈴木)
★そうですね、「山毛欅の原林」だから一本の山毛欅ではなく辺り一面山毛欅林でそこにしっとり
 と雨が降って地面も柔らかい、包まれているような感じ。雨、安堵とア音を重ねて心が解放され
 ていますね。(鹿取)


        (まとめ)
 広辞苑に「原林」は出ていた。「原生林に同じ」とある。(鹿取)
コメント
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