かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  356

2021-11-09 17:05:09 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究42(2016年9月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明     司会と記録:鹿取 未放


356 大きなる芽をりんりんと鬼胡桃空へおのれの転機光らす

     (レポート)
 鬼胡桃の「鬼」は、実の核の部分が堅く、凹凸が激しいために付けられた名のようだ。鬼胡桃は雌雄同株なので、春になると枝の先端から芽ぶき、頂芽から雌花の穂状の赤い花柱を直立させながら、同時に長さ10~30㎝の多数の雄花が下向きに垂れ、秋になると実をつける。
本歌では、春になって枝の先端から一斉に空に向かって芽吹き始める葉の様子を、「大きなる芽をりんりんと」と形容し、何でもない樹から鬼胡桃としての樹への「転機」、おのれの変わり目を、ここに鮮やかに視てとっているのである。(鈴木)


      (当日意見)
★「転機光らす」がとてもよいと思います。季節の季も心の中にありながらこの「機」にされたの
 かなと。(慧子)
★「転機」の語が目立ちすぎるかなと思っていましたが、鈴木さんが書いていらっしゃるようなこ
 とでしょうかね。(鹿取)
★「大きなる芽をりんりんと」もいい。木の芽をりんりんとって聞いたことのない形容で。(慧子)
★確かに芽が出たところを見ると丸まったようで目立ちます。(鈴木)
★胡桃をあんまり見たことがないですから。(慧子)
★私の周りにも、知らないだけかもしれないけど見たことのない樹です。宮沢賢治のイギリス海岸
 だかで川の周りの樹が鬼胡桃だって教えられた気がしますが。でも、この人、様々な樹と一緒に
 心豊かに育っているんですよね。まあ、私なんかは周囲に樹々があっても見てこなかっただけか
 もしれませんが。(鹿取)


       (まとめ)
 宮沢賢治の「イギリス海岸」に、炭化した胡桃の化石を発見した場面が描かれているらしい。ということは、そこに鬼胡桃の木があると聞いたのは記憶違いで、化石の話だったらしい。(鹿取)

コメント
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