2025年度版 渡辺松男研究2の7(2017年12月実施)
『泡宇宙の蛙』(1999年)【山鳥薇】P36~
参加者:泉真帆、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
52 凩の火のごうごうと山を吹きめくられてゆく世界地図あり
(レポート)
凩の凄まじい勢いを火に例えているのだろう。「ごうごう」と吹くものはいったいどこまで吹くのか。地形を変えるほど吹くのか、国境をこゆるのか、そんな想像が下の句「吹きめくられてゆく世界地図あり」と飛躍と共に楽しい一首。(慧子)
(当日発言)
★視覚的に簡単に考えました。山の地図が一枚捲られるように凩が吹くことによって風景が変わった。「吹きめくられてゆく」も体験者の実感があって魅力的な歌だと思います。枯葉とは書いてないけど、枯れた葉っぱの擦れ合う音というのはこういうふうに響くのかなと思います。火だから紅葉した葉っぱではないでしょうか。それが吹かれて模様が変わっていくので世界地図と言った。(真帆)
★50番歌の〈あれは遠き群衆の声こがらしが山をはだかにしてゆく摩擦〉というのも似たような場面なのですが、リアルと夢想というのがミックスされている感じでした。これも同じ感じで火のように激しい凩のリアルに対して下句は飛躍がある。また直前の51番歌〈狼は滅びたりけり山駆けるまっ赤なる目のようなゆめゆめ〉の後なので、世界地図がめくられるとは、狼が滅びたように何かが滅びて何かが勃興するとか、歴史が転換するとか、私はそんなことを思ったのですが。(鹿取)
★世界地図は政治のこともあるけど地形のこともあると思います。(慧子)
★私は世界情勢が激しく動いているというふうに取りました。否応なく移り変わっていく。でも、山の斜面に落ちていた世界地図が捲られていくってリアルに読むのも面白いですね。(鹿取)
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