かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  119

2021-06-15 18:03:20 | 短歌の鑑賞
   清見糺の短歌鑑賞19            鎌倉なぎさの会  


119 『欲望という名の電車』に美女ありきアルコホリックの果てに死ににき
          「かりん」98年11月号

 「かりん」同年9月号に、高崎淳子が「美男談」を載せており、それに触発されて作ったのだろう。ちなみに、高崎の歌には、ディカプリオ・キムタク・高倉健・田村正和などが登場する。清見の11月号「美女ありき」一連は次のとおり。

      美女ありき
楼蘭の美女と呼ばれて美女ありき四〇〇〇年余の死をながらえて
あわあわと海馬は匂う『うたかたの恋』のヒロイン、ダニエル・ダリュー
シルヴァーナ・マンガーノ死に照らされて在りき エロスは反復される
『欲望という名の電車』に美女ありきアルコホリックの果てに死ににき
フランソワーズ・アルヌール扮する娼婦ありき新宿日活名画座の闇
キューポラのある街などにも美女ありき未来が明るく見えていたころ
犯罪大通りお祭りさわぎの雑踏に消えたガランス忘れ得ぬひとり
『不良少女モニカ』のポスターこっそりと剥がした夜の罪とっくに時効

 『欲望という名の電車』は主人公ブランチが精神病院に入れられるところで終わりとなっている。演じたヴィヴィアン・リーは67年、アルコール中毒により53歳で亡くなる。下句つきはなして歌っているが、あんなに美しかったのにと憧れの女優への哀切さが滲む。(鹿取)

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