かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  124

2021-06-19 16:06:16 | 短歌の鑑賞
   清見糺鑑賞19            鎌倉なぎさの会  

124 きたないはきれいきれいはきたないと唄う烏のこえに覚めゆく
                「かりん」97年12月号

 「きたないはきれいきれいはきたない」はシェークスピア『マクベス』に出てくる魔女たちが唱える呪文である。人を殺して血塗られた手で王の座を摑んだマクベスを揶揄するように、あるいは人の世の真を抉るように唱えられる魔女たちの呪文を、作者は歌に繰り返し使っている。気になるから何度も使用しているのか、何度使っても会心の作品ができないから繰り返すのか。
 この歌はしかしずいぶん単純な構造だ。烏は不吉な鳥として人間からは嫌われている。その烏の鳴き声によって朝じょじょに目が覚めてゆくのだ。夢の世界から現実の濁世へ。そこではきたないといわれているものが実はきれいで、きれいと思われていることが実はきたないということがしばしばあるのである。覚めゆく、とあるが最初から醒めきったような荒涼とした世界である。

★ 作者の根底にある言葉。世の中の常識に否定的。(藤本)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする