かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  102

2020-12-07 20:09:01 | 短歌の鑑賞
   ブログ版 清見糺の短歌鑑賞 15  モロッコ見聞録
                                鎌倉なぎさの会   
                          

102 百年にいちどぐらいは落ちそうな巨岩直下にどろの家たつ
            「かりん」96年12月号

 作者の「モロッコ私紀行」によるとアトラス山脈を越えてワルザザードへ向かう途中のようである。

   ティシカ峠を越えた行く手にアフリカの神神の運動場のような真っ平ら
   な台地が現れる。富士山を標高七〇〇メートルぐらいのところで輪切り
   にしたようなテーブル状の台地の上は砂礫の平。東京ドームが何個分な
   どというケチな規模ではない。なにしろ天球がドームなのだ。ひとつひ
   とつが建て売り住宅ほどもある四角い岩がその上辺に並べられていて、
   そこから下は裾まで砂礫の曲線。百年に一度ぐらいは崩れ落ちてきそう
   なその下に日干しレンガの家があり村がある。苛烈な自然としたたかな
   人間の営み。
     百年にいちどぐらいは落ちそうな巨岩直下にひる寝する村
                     (「モロッコ私紀行」)

 エッセーに添えられた歌は掲出歌と結句のみが違う。「ひる寝する村」は、人間の営みに視点を置いて危うさやたくましさをユーモラスに描いている。「どろの家たつ」は客観描写に徹して思いは読者に委ねている。私は「どろの家」の方を支持する。(鹿取)
コメント
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