Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

肉を食すユウレイ。

2007-11-18 | 徒然雑記
 夜中に焼肉屋に行くという行為は、非常に退廃的な気分を醸しだす。特に、それが平日であったり日曜日の夜だったりすればなおさらだ。
 肉というケモノ的な食材と、焼くだけという野蛮な調理法がヒト科であるところの知性品性から遠いところに位置している自分を感じさせる。こんなに遅くまで食事をしていたら明日の仕事に障るだとか、もっと野菜を食べないとお肌によくないだとか、そういう長期的なことや未来を少しでも考えるならばそこには居ないはずだ。逆に言えばその日その瞬間のことだけを考えて今そこに居るわけで、そこには社会性の欠片もない。だからなのか、同じ時間にそれなりのお年頃の男女が同じ店に居たりなぞすると、その後に起こるいっそう退廃的な出来事へとうっかり思いを馳せてしまうことを禁じえない。失敬にも、まるで私がずっとそうしてきたことを重ね合わせるようにして。

 仕事や何やらで苛々が募ると、深夜徘徊をしたくなる性質がある。大人しく眠ってしまえばよいのかもしれないが、苛々度が8の状態で眠りに落ちたとして、目覚めたときに8のままの苛々と再び出会うときのがっかりさといったらない。目覚めたときにはその度合いが5くらいにまで軽減しているというのなら話は別だが。

 そういうわけなので、自力で深夜のうちにその度合いを5くらいに、あわよくば2~3くらいにまで軽減させる努力が必要となる。それに最も貢献してくれるのが仕事を伴わない疲労、より詳しく言うなら思考を伴わない疲労感なのだ。だから内蔵を疲弊させるために焼肉屋へゆき、目を酷使するために本を読み、身体を重たくするために男を呼び出したりした。
そうして疲れた挙句に帰宅して床につき目覚めたあとの記憶に残るものは、昨夜の断片的な情景。まるで感情を伴わずに記録されたいくつかの脈絡ない写真の散らばり。

 心の中の、それもけっこう入り口のほうにあるハコのなかに、それらの断片的な写真は混ざり合って仕舞い込まれている。時系列とも、その時々の感情とのリンクしない写真たちは自分目線のファインダーでもなく、自分が被写体となっているようでもない。それはつい今日のことであっても、何年前のことであっても、何の感慨も抱かせない雑誌のスナップや広告写真のように、私の脳内に映る。


「君を降ろしてすぐ後ろを見たとき、君はもうバックミラーに映っていなかった。僕はユウレイを乗せたのではないかと思って慌てて助手席のシートに触れたら、それはまだ暖かかった。君がユウレイでなければよいと僕は思う。」

 帰宅直後に届いたメールには、そんなことが書かれていた。

「赤の他人のくせに、いや、他人だからなのかしら。着眼点は鋭いわね。」
ひとり呟いて苦笑しながら、シートがすぐに冷たくなってしまえば一層よかったのに、と少しだけ苦々しく思った。





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6 コメント

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社会性を有する半妖? (よつば)
2007-11-20 19:56:51
 霊長類ヒト科雄の私は,焼肉大好物でございます♪
 ご存知でございましょう?私の「社会性の欠片もない」食べっぷり&飲みっぷり♪
 (いつぞやは飲みっぷりが酷過ぎてご迷惑をおかけいたしましたが・・・)
 
 しかし,貴女の半妖としての退廃性は,霊長類ヒト科の私の身体の一部を半妖化させてしまうほどのエネルギーに溢れていて,ついついヒト社会にいることを忘却してしまいそうになるのです.

 今は社会性に溢れた半妖なのですか?
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かしこさが1あがった!・・だけ。 (マユ)
2007-11-21 16:17:37
>よつば さま

いやぁ、私の食い意地もなかなかのものでございます。
とはいえ、お互いに代謝が落ちているお年頃ですから、一応「自重」という言葉を頭のどこかにとどめておく程度のことはしましょうね(苦笑)

社会性というものは、薄皮一枚にすぎません。
勿論、会社でもそれ以外の社会でもそれなりに身軽に飛び歩いてはおりますが、そんな薄皮、帰宅してひと風呂浴びたらすぐにでも剥がれてしまうものです。オフィシャルモードを脱いだ私は、今までと同じ程度の半妖のままです。

気の置けない場所やひとりの部屋で服を脱いだときに、隠していた尻尾がふぁさりと零れ落ちる瞬間の心地よさったらありません。
半妖は、社会性を得た途端に、お空を飛べなくなります。
だから、半妖のままに社会性を有することは禁忌なのであります。

いずれまたお見せできる日のために、尻尾のトリミングは欠かしません。
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焼き肉 (てつごろう)
2007-11-22 10:08:36
焼き肉食べて~。時間ができたら、食べにいこうぜ!味?...「そんなの関係ねぇ~」(小島よしお風)美食家のまゆっちをこちらの世界に引きずりこんだる!質より量の世界へようこそ。
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おごりなら~ (マユ)
2007-11-22 16:49:59
>てつごろう さま

よろこんでおともします!
時間は作るものだ。いつでもあけるでよ。

量もけっこういけるのよ。
若い頃、深夜2時の六本木叙々苑で「好きなだけ食え!」と云われてほんとに好きなだけ食ったらかなり驚かれたなぁ。懐かしいなぁ。
・・でも、「安」が付く名前のお店だけはかんべんね。
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焼肉最高。 (yumi)
2007-11-23 23:28:57
でも私は楽しくなるためにしか行かないけどな。
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笑わなくとも「娯楽」の一環。 (マユ)
2007-11-27 17:51:48
>yumi

私なりの、通常の「楽しむ」とはまた異なる愉しみかたを持っていて、自分のニーズやタイミングなどに応じて使い分けていた気がする。
うまく云い表せないけれど、なんかこう、ちょっと諧謔的かつ分析的なひとつのアソビだったのだと思うのよ。
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