Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

好きな珈琲屋をただ並べてみた

2005-06-07 | 物質偏愛
さて、今回は毛色を変えて、ちょっと営業チックではあるが私の大好きな珈琲屋リスト。
ご存知の方もおいでになるが、私は血統書付きの下戸である。手術をした親の見舞いに行った折、天井から「禁アルコール」の札が堂々と掛かっているのを見て、あぁ私もそういえばアルコール消毒で皮膚が真っ赤になるなぁ、と思った。そんな訳でいささか色気がないが、酒の飲めない人間が珈琲という嗜好品に掛ける情念はなかなか濃いものがあるに違いない。

【東京都内】

OLD TIME(渋谷店)
 このリスト内で最も長く通いつめている店。従業員の変遷を見てきた。一枚板のカウンタ席が気に入りで、贅沢な生花の香りと、バロック音楽が小さな音量で流れているのを目と耳で同時に愉しむ。合間にはマスターと話をする。特別な設計により19時からのバータイムに合わせてボタンひとつでカップ棚が収納され、床が下がってハイカウンタになる。長く通っていると、ちょっとした操作のミスで酒瓶が派手にひっくり返って割れる場面にも遭遇する。

猿楽珈琲
 店主の気紛れで店が開いたり閉まったりする。「用事で出ています。16時頃に戻る予定です」の張り紙が。時間も曖昧なら、戻るか否かも曖昧だ。こういうときは二度と開かない場合もあるので待たないほうがよい。「濃いめの珈琲」か「ふつうの珈琲」がすきだ。かつては、押さえた笑い声を上げただけでも叱られてしまう店だったが、最近は大分ソフトになったようだ。


 場所は繁華街真っ只中だが、ここだけ異空間。13mのカウンタのいちばん奥はクランクのようになっていて、手前の席からは死角になっている。この空間をゲットできればもうご満悦である。カップ&ソーサーのコレクション日本一とは恐れ入る。地震対策はしているのだろうか。他人事ながら大変気になる。

カフェ・ド・ランブル
 ここは2番目に長く通っている店だ。オリジナルの灰皿と一体化したテーブルにオリジナルのデミタスカップ。珈琲ゼリー以外の甘味を一切置いていない気骨は流石だ。10年もののオールドコロンビアが気に入りだが、豆のタイミングがよくないと頼んでも断られる。ここでは客は神様でなく、あくまで店が主導なので、そういうスタンスが苦手な人には向かないようだ。頑固職人ここにあり。

十一房珈琲店(銀座店)
 銀座でちょっと待ち合わせ、あるいは歩きつかれたらここで一服。私が通う珈琲屋の中では比較的明るい店内とジャズが流れる軽快さが、今日は銀座で遊んだわ!というテンションを否定しない。通常はカウンタ派だがここでは異例にもテーブルを選択する。ハワイコナとハイチをよく頼む。

ミロンガ・ヌォーバ
 神保町に数々立ち並ぶ珈琲屋のひとつ。ビール屋でもあるので珈琲を飲んでいる私の向かいで連れにビールを飲ませることが可能という稀有な店でもある。最近あまり行く機会がないが、今回のリストではイノダコーヒと並ぶ程度の淡いマイルドな味。気合の抜けた感じがビールを飲んでいる相手に合わせるには丁度いいのか。

プリマベーラ
 すりガラスとカーテンで店内が見えず、営業しているのかしていないのか判りにくい外装に、生い茂る植物。入口に猫もいたりする。中に入ってしまえば小さな可愛らしい喫茶店。数種のブレンドがなかなか秀逸で、気に入りはニレブレンド。実は、冬メニューのホワイトシチューが絶品だったりもする。
 
【その他地域】


 鎌倉に来たら必ずここに立ち寄る。毎回道に迷いそうになりながらもきちんと辿り着けるから不思議だ。カウンタに座ると、カップを選ぶことができる。黙々と無口なマスターが客を放ったらかしてくれているのがいい。カップが陶器中心であるのも、たまにはいい。

イノダコーヒ
 京都のお約束。味が好みというわけではないけれど、なんとなく昭和の味がする。難点をひとつ云えば、ミルクを入れるかどうかを最初に決めなければならなくて、途中でブラックに飽きたからミルクを入れたいなー、という際にはわざわざお願いをしなければいけないところ。

六曜社珈琲店
 京都のもうひとつ。ここは何曜日の何時に行ってもスーツのサラリーマンや作業服のおじさまがたで賑わっている。混んでくると問答無用で相席となる。古めかしいまだらな赤のビニール椅子がところどころ破れているさまと、客の回転の良さがひと昔前の喫茶店のあり方を物語っている。友人とここで待ち合わせをした際、私は1階の席で友人を40分も待っていたが、同じ時間に彼女は呑気に地下席にいた。勘弁して。

友明堂
 ここの本業は老舗もいいとこ、大御所の骨董屋。何故だか知らないが骨董のガラスケースの並ぶ土間の周囲にぐるりと畳席を作って、珈琲や抹茶を出してくれる。東大寺や興福寺、奈良博に寄った際には必ず立ち寄る。「骨董」の暖簾が仰々しくて、なかなか客は入ってこない。夏の暑い盛りにどうにも我慢ができなくて逃げ込んでからのお付き合いだ。