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なおしのお薦め本(17)長新太 こどものくにのあなきすと

 文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。

 

『長新太 こどものくにのあなきすと』

 

 一昨年にこの世を去った長新太さんを追悼した本です。長さん自身の漫画や対談、長さんに魅せられた人々のエッセイや対談が収められています。

 長さんの漫画や絵本の特徴を文章で表すことは難しくて、飄々としてトンデモナイ話ばかり、としか言いようがありません。

 穂村弘さんが「アブアアとアブブブ」の帯にこんな文章を書いたそうです。

 「このお話を私の脳は理解できない。でも、心が大喜び」

 そうそう、そんな感じと思いましたが、それで長さんの魅力は伝わるのでしょうか。そりゃいったいどういうことなんだ? と本を手に取ってもらうしかないようですね。

 でも、この本に掲載されている長さんと五味太郎の対談(1990年)を読むと、長さんの不可解な作品の秘密、長さんの心というべきものが少しだけわかります。五箇所、引用します。

 まず、作品と読者の関係について。

 長-ぼくの発想の中には“自問自答”してほしいというのがあるんですよ。それはぼくが一コマ漫画から出発しているからなんです。どういうことかというと、読めばスーッとわかる漫画もあるけど、ぼくがやってきた漫画はもっと絵で語る部分が多いわけですよ。絵を見て、読者の側から参加する部分がある。だから絵本の場合でも、同じように読者を取りこもうという気持ちがありますよ。作者と絵描きがつくったものを読者はただ読むだけ、というのじゃおもしろくないと思うのね。

 次は、ナンセンスな作品について。

 長-ぼくのナンセンスというのは、日常的なものではなくて、抽象であってね。いわゆるシュールレアリズム的なナンセンスなのね。ナンセンスと言ってもいろいろあるけれど、漫画なんてそもそもシュールな部分がいっぱいあるわけですよ。ふつうは考えられないようなことも平気であるしね。

 五味-そうですね。

 長-『ごろごろにゃーん』という絵本でもそうだけど、あれはただただ猫たちが飛行機で飛んでいるだけで、文章も、どの場面も『ごろごろにゃーん』と書いてあるだけ。それで全ページ通した割合シュールなものですけど、子どもは、そこをすごくよく理解できるわけ。

 三番目は、長さんが大切にしていることについて。

 長-生理的に心地よいことが、なにをおいてもいちばん大切じゃないかという気持ちが、ぼくは非常に強いわけよ。それによっていろいろなことが決まるんじゃないかと思うんです。たとえば睡眠が十分なら生理的に心地いいしさ、健康なら食事もおいしいしさ、なんでもそこにきちゃうんじゃないかという気がするわけ。

 四番目は、長さんの意外な過去について。

 五味-長さん、質の悪いおとなにすごく会いすぎてる、という過去あります?

 長-ありますよ、それは。

 五味-あ、ほんと。

 長-ぼくには、いろんな面で、打ちのめされて、冷遇されて、現在の私があるという感じがあってね。

 五味-アハハハ。

 最後は、おとなと子どもについて。

 長-子どもから『あなたに期待してます』なんていう手紙がよく来ますよ。子どもって意外とおとなの方がエライなんて意識はないわけよ。ところが大半のおとなというのは、自分は子どもよりエライと思ってるんだよ。それは大変な間違いなんだけれどね。

 ――で、ぼくに、そういう手紙が来るでしょ。ぼくの方は期待されちゃってるからさ、応えなきゃいけないじゃない」

 長さんがこれほど語っているのは、対談相手が五味太郎氏だったということが大きいと思います。このような対談が記録されていたおかげで、長さんもやはり人間だったのだなあと納得することができました。なんといっても、作品だけだと、異次元に連れて行かれるばかりなのですから。      なおし

 

             ※クリエイト速読スクールHP

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
読。 (古い生徒3。)
2010-11-11 23:15:17
 あ、どうも。こんばんは。読みました。

 全体的にあまり理解できませんでした。
情けないです。頭がカタいのでしょうか?

 出直します。
 
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