<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

「足し算」から「引き算」に転換した日中経済関係

2012-09-26 | 中国経済

7年前、当時の小泉首相の靖国神社参拝を機に、今回と同じような日中関係悪化の局面があった。
そのときと比べ、日中関係はどう変わったのか・・・?

本日(9月26日)付の報道でも、トヨタ自動車が中国への輸出を一時停止、自動車各社が中国現地生産の縮小などが報じられている。

大和総研の試算によると、中国向け輸出が1カ月止まった場合、日本の製造業の生産額は2.2兆円減り、日本の自動車メーカーにとっては1445億円の損失となるらしい。

また、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの試算によると、日本の自動車メーカーの純利益のうち中国事業が占める比率は、日産自動車が25%、トヨタが21%、ホンダが16%となっている。
生産台数の面ではまだまだ日本のほうが大きいが、利益面で中国の自動車需要がいかに貢献してきたか、理解できるデータである。

その他、客観的なマクロ経済データをみても、日本経済の中国依存度が高まっていることは容易に理解できる。

まずは、貿易面から。
中国は2009年、米国を抜いて、日本の最大の輸出相手国となった。
財務省の統計によると、2011年の中国向け輸出は、日本の輸出全体の約5分の1を占めるまでに至っている。

他方、「中国にとっての日本」は、どのような位置づけなのか?
日本は中国にとって、残念ながら欧州、米国に次ぐ世界3位の貿易相手国に過ぎない。

続いて、投資面。
2011年の日本の対中直接投資は、前年比で約60%増加し、初めて1兆円を突破した。特に、東日本大震災の発生以降、投資の数、規模ともに急速に拡大したという実態がある。

その一方で、2011年の中国による対日直接投資額は、前年の276億円から89億円に減少。
もともと両国の投資規模に差があり過ぎるとは言え、「一方は過去最高で、もう一方は減少」という状況は、両国のスタンスが窺い知れるところ。
(もっとも、中国政府が人民元の持ち出しを厳しく管理している面もある)

こうした現状をもとに、7年前との比較を進めていきたい(いつもながら、独断と偏見を交えつつ・・・)。


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靖国参拝問題で反日デモが発生した7年前当時、筆者は自動車関連の仕事で中国と関わりを持っていた。
当時はいま以上に、中国が経済成長に邁進している真っ只中といった様相で、日本の大手製造業が続々と生産拠点を設置していこうとしている時期だった。
しかしながら、当時は中国脅威論も根強く、国内産業の空洞化議論も巻き起こっていたので、日本産業界の姿勢もどこか半信半疑のように思えたと記憶している。

もっとも、当時は「政冷経熱」という言葉が一般化されるほど、政治と経済を切り離して考える傾向が強かった。そのため、日中の政治的関係は冷め切ったままだったが、対中投資だけは一貫して続けられたのである。

そして、7年後のいま、当時と同じように政治的衝突の局面を迎えた。
前回と比較して決定的に違うのは、今回の原因が「領土」に起因するということ、そして事の発端が「日本政府による尖閣諸島の国有化」にあるということの2点であろう。
とりわけ、領土問題というのは全国民にとって分かり易いテーマであり、ナショナリズムの高揚にも繋がり易いため、ハッキリ言って、かなり厄介である。
しかも、中国側の主張の背景には日中戦争の事後処理が含まれているので、さらにナショナリズムを刺激することになっている。
このあたりの事情が、今回の問題が長期化するのでは・・・と懸念される所以であろう。

経済の面で考えると、中国は7年前と比較にならないほどの経済力を身につけている。
2010年、中国はGDPで日本を追い抜き、世界第2位の経済大国となったが、2000年からの10年間でGDPは4倍以上になっており、とりわけ2003年ごろから、GDPの伸びは急激なものとなっている。
これほどまでにハイスピードで経済大国にのし上がった国は、歴史を振り返っても存在しないのではないだろうか。


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勿論、中国は国土が広く、人口も莫大なので、1人当たりGDPの低さや社会的貧富の差を指摘する声が日本国内にも根強いことは周知のとおり。
しかし、国力を比較する上で、やはり客観的な数値は無視できない。
さらに、将来性という観点に立つと、少子高齢化や深刻なデフレ状態が続く日本経済と市場拡大が続く中国経済とでは、もはや比較のしようがないという現実が立ちはだかる。

筆者は標題にあるとおり、この7年間で日中の経済関係は「足し算」から「引き算」へと変貌したと思っている。

日本側に立てば、7年前、対中投資は生産及び売上げの伸ばすための手段というプラスの面を有していた。実際、中国への生産移転が日本企業の生産コスト低減を実現させ、中国での市場確保が日本企業の業績向上に一役買っているのは疑いようのないところだ。
しかし、対中投資が相当程度進んだ現在に至っては、中国からの撤退は即、生産設備の償却、成長市場の放棄、サプライチェーンの再構築といったマイナス要素に繋がりかねない情勢にある。

中国側にとっても、7年前、日本は中国において生産拠点の新設や技術供与、製品仕入れを行ってくれる貴重なお得意さんだった。
インフラ整備の面でも多額のODAも行ってきたワケで、まさにプラス一色。
ところが、世界第2位の経済大国に成長した中国にとって、もはや日本は有力な貿易相手国のひとつに過ぎない。しかも、自国企業の高度化を優先させる場合には、今後マイナスの存在にもなり得るようになってきた。

日本にとって「足し算」から「引き算」になったことをどのように理解し、どのように計算式を組み立てていくのか、悩みは尽きないところと言えよう。
理想を言えば「掛け算」を生み出すような関係構築が望ましいが、もはや時機を失したとの見方も強い。
今回の日中関係の悪化が長期化し、「割り算」という最悪のケースを生み出さないことを祈るばかりである。

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