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M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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コロナ、SDGsと2030年

2021-02-21 | エッセイ

前回の「新型コロナから見えてくる地球温暖化」の続きです。

 

<ダボス Sustainable Japanよりお借りしました>

いろいろな文献を読んでいたら、着目すべきコラムに出くわしました。それらを参照し、僕的にまとめてみたいと思います。

 

まずは、2030年までに起きそうなリスクです。

「世界経済フォーラム」2020のまとめです。

<ダボス会議 2020:Bloombsrg.co.jpよりお借りしました>

 

次の10年間(~2030)に起こり得る上位リスクx6 

・異常気象(例えば、洪水、暴風)

・気候変動へ適応の失敗:人類の行動

  • 大規模な自然災害(例えば、地震、津波、噴火、磁気嵐)
  • 生物多様性喪失と生態系の崩壊:絶滅危惧種が次々と消えて行っています
  • 人為的な環境破壊・災害
  • 水危機:アフリカ、アメリカで起きている実例があります。

これらは、もう誰でも予測できることです。常識です。

そして、コロナ後もしくはwith Coronaの世界を生きるために知恵が必要です。

 

コロナ後に生き延びる5つのポイント:世界経済フォーラム

世界が直面する課題の解決方法(Forbes 2020/05/29)

 

  1. アップスキリング(スキル向上)とリスキリング(再訓練)の強化

  ヒューマンスキルとデジタルスキル両方

 

  1. 未来の仕事像の策定する

   人々をケアする職業、地球を支える職業、新しいテクノロジーを管理する職業、

  そして、製品とサービスを伝える職業。

  具体的には、

   ケアエコノミー、グリーンエコノミー、人と文化、

   データとAI、エンジニアリングとクラウドコンピューティング、

   製品開発、セールス、マーケティングとコンテンツなどです。

   特に、製造中心の成長モデルは見直が必要

 

  1. 再配置と再雇用の重視

  高需要の職、例えば、物流やケア産業など

 

  1. エッセンシャルワークの再評価と仕事の質の向上

  生活に欠かせないエッセンシャルワークの労働者が、低賃金かつ極めて不安定な

  地位にあることを変えなくてはならない。

 

  1. 回復、リセット、再構築に向けた連携

  雇用主、政府、労働者の国内外の連携は、危機からの回復に不可欠なものとなる

  パンデミックの危機は、私たちのもっとも重要な資産、ヒューマン・キャピタル

  (人的資本)への投資の機会を開く

 

こうした環境で、どういう会社・社会経営が必要なのかを、語っている経営者がいます。目にされたことはあると思いますが、キーワードは、SDGsです。

<SDGs:国連の定めたマーク>

 

SDGs:人・自然重視の資本主義へ転換 ダノン会長兼CEO
エマニュエル・ファベール氏     2020/8/8 23:00日本経済新聞 電子版

  • フランスは2019年に新法を制定し、利益以外の目標を達成する責任を負う「使命を果たす会社」を新たな会社形態に取り入れた。
  • 定款にESG(環境・社会・企業統治)に関連する新たな4つの目標を盛り込んだ。

   (1)製品を介した健康の改善

   (2)地球資源の保つ

   (3)社員と将来を形成すること

   (4)包摂的な成長

「取締役のメンバーはこれらの目標に対して責任を負う」

 

サーブ・ライフ(生命に尽くす)。まず自然があり、経済を回すときには中心にはお金ではなく人間がいる。製品を作るには植物や土、水などの自然が必要だ。すべての生命を支え、尽くす会社になる」 

 

グローバル社会で、世界中から食料は調達できると考えてきた日本にとって、ショッキングであり、恥ずべき数字がありました。これからは、自国内での食料自給率を上げる必要性を強く訴えかける数字でした。また言葉でした。

フード・マイレージ (food mileage) とは、「食料 ( = food) 輸送距離 ( = mileage) 」という意味で、食料の量と輸送距離を数字で示し、客観的に把握することを目的としたもので、輸送に伴い排出されるCO2が地球に与える負荷に着目した数字でした。

飛び恥 = Flight Shame CO2 by Airplane」:世界一高い日本の値

 Food Mileage(フードマイレージ) = トンx Km  2001年試算

 

日本          9002億800万 :総量         7093:一人当たり

韓国               3171億6900万                       6637

U.S.A.        2958億2100万                      1051

イギリス         1879億8600万                     3195

ドイツ        1717億510万                      2090

フランス         1044億700万                       1738

 

いかに日本が、自国の食糧自給率を考えてこなかったかの証左でもありましょう。金を払って世界中から持ってくればいいという、如何にも安易な世界にいたかということでしょう。

世界規模では、すでに食糧難が起きています。食料の争奪戦が起きています。飢餓の世界が目の前に現れています。飽食に明け暮れる日本の食糧政策の転換が必要だと言えましょう。

例えば、大食い競争の番組とか、24時間サービスのコンビニでの食べられる食品を、時間が来たら廃棄するとか、食い放題サービスだとか、超大盛がうりの店だとか、いくら食べても定額のバッフェ・システムとか、いかに無駄に食品を扱っているかを見直すことが必要でしょう。

 

日本にも、単なる経済種本主義でなく、公益資本主義を唱える人も現れました。原丈人氏です。

<公益資本主義 原丈人氏>

 

「それで、いくらもうかるんだ?」:SDGsへの取り組みの必要性を説明する社員に、ある日本企業の経営者が発した言葉。日本はこんな状態です。


新型コロナから見えてくる地球温暖化

2021-02-07 | エッセイ

 珍しく NHK で素晴らしい番組をやっていた。 この番組を見て貰いたいのは今の若い人だと僕は思う。これからの10年間に、人間が客観的に地球の状況を見て、今後、人類が地球を救うために何をやらなければならないかを語っていた。

<NHK 番組PR>

  番組の概略を 下記します。興味が湧けば TVer ででも探して見てください。

 2021年1月9日(土) 新シリーズ「2030 未来への分岐点」

「第1回は新たなフェーズに入った地球温暖化の問題。持続可能な未来を実現するために何が必要か、この10年歩むべき道を考える。」

 

 正直に言うと、理不尽にもNHKをクビになった国谷裕子氏が出ていたので、見ようと思ったのだが…。中身はよくできていた。ちょっとガキっぽくて、訴える力が強くない部分もあったけれど、問題は定義されていた。

 番組内容は NHK によれば次のように説明されている。

「新たなフェーズに入った地球温暖化。このままいくと早ければ2030年にも、地球の平均気温は臨界点に達するといわれている。それを超えていくと、温暖化を加速させる現象が連鎖し、暴走を始める可能性が明らかになってきた。その時、私たちの暮らしはどうなるのか、どうすれば破局を回避できるのか。この10年歩むべき道を考える」

  僕は以前から書いているけれど、今回の新型コロナは、地球を作った創造主が人類にたいして、できるだけ早く対応するようにという警告だと思っている。 つまり人類は、恰も地球は永遠の存在かのように、好き勝手に自分のやりたい放題で地球そのものを使ってきた。 つまり、人口を増やし、森を切り、北極から氷をなくし、シベリアの永久凍土を溶かすなどと、やりたい放題をやってきた。

  創造主から見れば、地球上に存在する人類以外の動物及び植物、全ての生き物に対する自分の責任を感じる立場から人類に警告を発して、めちゃくちゃな地球の破壊行為をやめさせたいと思っているに違いない。

<コロナの後ろに控えているもの:人間のコントロールできない異常気象>

 僕のよく知っている具体的な問題に入っていくと、スイス・アルプスの氷河は確実に溶けて消えていっていることは事実である。実際に元の氷河が小さな水たまりになっている風景を見た。これは地球の気温が上がり続けているということだ。 その原因は CO2であるということは、皆にも知られている。CO2を削減するという方向に舵を切った国は、ヨーロッパ諸国以外には具体的にはなかなか見出せない。菅さんが、2050年までにエミッションゼロというキャッチフレーズを述べているが、その工程表は全く知らされてはいない。

  皆さんご存知かどうかは分からないが、地球には地球規模の冷房装置が作り込まれている。 それはどこから発するかといえば、北極圏に存在するグリーンランドを中心とする氷を大量に作る北極の冷たさがドライバーであった。 その氷はどう動いていくかと言うと、グリーンランドの沖から大西洋の深い海底へ沈み込み、そこから大西洋の底を南下して、アフリカの喜望峰の底を這いまわり、オーストラリアの南を冷やしながら、最終的には太平洋のパラオ辺りで普通の水となってその役割を終える。

 つまり地球は、北極の冷たさを利用して、地球を2/3周ぐらいして、地球を冷やす仕組みをこれまで回してきたのだ。

<地球のクーリングシステム:北大低温科学研究所>

  しかしながら人間の活動は1950年から、GDP を上げることにひっちゃきになり、石化燃料を遠慮なくどんどん使い、結果としてCO2をどんどん作ってきたと言う現在である。

<地球のCO2排出量の急増 from 1950’s>

  CO2は増え続けると何が起こるかと言うと、もう忘れたかもしれないけれど南極の上空にあるオゾン層にぽっかり穴があき、地球を保護していたのだが、今や地球は太陽光から自分を守る事が出来なくなった。 太陽からの熱と人間の活動における地球からの熱によって、どんどん地球の気温は上昇しているということは皆さんご存知だと思う。 つまり地球の限界ということを気にせずに活動を続けてきたツケが、今現れてきたということだ。

<南極のオゾンホールの拡大>

  創造主からの警告はこのオゾンホールの拡大ということから始まったが、僕が覚えているのは、1970年代からシベリアの永久凍土を溶かし、シベリアの原野に大きな穴ぼこがポコポコと開くという現象が起きていた。 その頃から気候の温暖化という言葉は使われ始めたが、人間が何か行動を始めたかと言うと、そういうことはなく時間は経っていった。

<ローヌ氷河 By idefix Creative Commons 3.0>

  ここ30年ぐらいの問題だと思ってもいいだろう。そうするうちにアルプスやヒマラヤの高い山の氷河が溶け始めるという現象が起きた。でも人間はそれが地球からの警告であるとは真面目には受けとめていなかったと思う。 氷河って、減って行くんだぐらいに考えていたに違いない。

 氷河が減って行くと何が起きるか、フランスのローヌ川(スイス、サンゴッタルド山塊から、レマン湖、リヨンを経てプロヴァンスで地中海にそそぐ800㎞の大河)について話してみると、氷河で補給されてきた永久に持つかのような水量は、どんどん細くなっていく。 するとローヌ川の水流はどんどん減っていき、例えばブルゴーニュのワイン製造の水が枯渇するのは、そんなに遠い将来ではない。 それはワインだけの話ではなくて、水を必要とする小麦の耕作であり、人間の飲料水であり、そしてその他の動物の飲料水でもあるわけだけれど、それが失われつつあるという危機に気づいてはいない、もしくは気づきたくないという人類の関心の薄さが現状を招いたといえるだろう。

 今ではグリーンランドの全ての氷河は溶け、緑の美しい島になった。グリーンランドの氷を失うと、さっき述べた地球レベルでのクーラーの仕組みが動かなくなる。

<海水の上昇で土地の70%が失われるオランダ by NewsWeek>

 こんなことを知った上でこの番組を見ると、やっと気象温暖化という言葉の結果が、自分達にも及ぶかも…という意識を生むだろう。現在の気温がさらに気温の上昇し続いて行くと海面上昇が進み、地球の気象は荒れたかたちになって、雨が大量に降り、日本なんかでは食料を生産する畑や田んぼを痛めつけることが想像できる。おそらく全ての農業が影響を受けて、その生産を確保することはできなくなるだろうと思う。それに気づき始めた人間は、今後どうするのかという問いかけの番組だったと思う。

 テレビなんか全く見ないよ~という若い人たちは、残念ながら全くその情報を知ることができない。温暖化なんて自分には全く関係のない、遠い将来の話だと思っているような節が見える。本当はこの番組は、今の若い人たち、つまり20~30代くらいの人に見て、近い将来、2030年くらいまでの10年間をどうするかを考えるにネタにしてほしいと僕は思う。

 

P.S. CNNにこんな記事がありました。参考までに!

https://www.cnn.co.jp/world/35165700.html


「ジェンダー・クオータ」にびっくり

2021-01-24 | エッセイ

 

 大体、週日はNHK のイタリア語講座を朝15分間、聞くことにしている。

 目的は二つある。一つは「ボケ対策」。二つ目は昔習ったイタリア語を忘れないためだ。結構、真面目にやっている。

<NHK イタリア語テキスト>

 先日の講座でびっくりしたことがある。みんなにも知ってもらいたいと思って、この文章を書いています。それは「ジェンダー・クオータ」という言葉があるということです。

 ここからNHKテキストを引用します。(イタリア語は読まなくていいです)

イタリア語/日本語

Sempre più donne nelle posizioni chiave 重職に就く女性ますます増える

Le normative sulle quote di genere, che promuovono la presenza delle donne nelle posizioni decisionali delle aziende, stanno ottenendo i loro frutti. Dai dati di marzo del 2019 risulta, infatti, che nei board delle società pubbliche il 32,6% è costituito da donne. Nei CdA delle grandi società quotate in borsa, invece, la presenza delle donne è passata dal 5,9% del 2011 al 32,9% del 2017

女性が会社の重職に就くことを推進するジェンダー・クオータに関する規定はその成果が実りつつあります。2019年3月のデータによると、実際、公営企業の役員会は32.6%が女性で構成されています。上場している大企業の取締役会において、女性の比率は2011年の5.9%から2017年の32.9%になりました。

引用終わり。

 女性の社会進出、ないしは女性の活躍という内容なのだが、それが本当に具体化され、身近なところに実際に現れているということにびっくりしたのだ。男性に交じって、女性の参加者が、30%以上という具体的な目標が建てられていて、それを政府が、民間や公益法人を含めて、フォローしているというのだ。素晴らしい。

  結構、封建的なこともあるイタリアの社会において現実に具体的に達成されていることは素晴らしいと僕の心を 打った。日本では、こんな比率を考えてみたこともない。

 少し調べてみると、日本では「第5次男女共同参画基本計画」などという、難しいお役所の言葉で、時々聞く内容だ。平たく言うと男女が基本的には平等に、各分野において活動できる環境を整えると言うことだ。しかし、「ジェンダー(性別)への割り当て」という具体的な目標として迫ってくる表現ではない。政府の好きな単なるキャッチフレーズのようなものだとしか思えない。

 この「ジェンダー・クオータ」ということは、基本的に民主主義の究極の姿を表したものだと言われている。 基本的な考え方はノルウェーから始まったもので、今や世界の大多数の国が参加している国際条約でもある。世界経済フォーラムが2019年(令和元年)に公表した「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」では、日本は 153 国のなかで121 位となっている。ほとんどビケに近い。

<ジェンダー配分をイコールへ:三田評論 慶応大学よりお借りしました>

 日本の普通の人は、この「ジェンダー・クオータ」という言葉をほとんど知らないと思う。知らないわけだから、浸透しているかどうかは見えないのはあたりまえ。日本では、掛け声だけは常に現れてくるが、実施がされているかどうかのフォローアップがないから、国民に実状をフィードバックするという機能は全く動いていない。 だから、この言葉を聞いたことはないし、話題にも上らない。

『国際労働機関(ILO)が2019年に発表した「ジェンダー平等動向レポート」ではG7諸国の大手上場企業の女性取締役比率を比較している。それによると、2016年の女性取締役比率は、フランス37.0%、イタリア30.0%、ドイツとイギリスが27.0%、カナダ19.4%、アメリカ16.4%であるのに対し、日本は3.4%と極端に低い』<このフレーズ部分は「日本大百科全書」より引用

<役員会議:by Alberto Nevi EU をおかりしました。Creative Commons 4.0>

 日本の会社の重役会で、1/3は女性だという会社は非常に少ないと思う。 女性の参加は、男性主導型の日本において、本当に必要なことだと思う。心理学の「ビッグ・ファイブ」*注 という特性で男女を図った結果、女性は、一般的にはマルチタスクで、仲間と一緒になって快感、思いやり、衝動的な面もあるが、男性は好奇心、自己主張とか、アイデアの開放性が高いと報告されている。

 男性のこうした性格のトレンドでは、柔らかな具体的な施策はなかなか実現できないのは当たり前なのかもしれない。何かを一緒に決めるということには、女性の方が、はるかに能力があるようだ。

 男性だけの会議ではなくて、女性を入れて問題を考え議論してみると、エッと思う新しい発想を感じたことがある。そんなことを考えてみると、女性と一緒に物事を考えるということは、今の日本には特別に必要ではないかと思う。

 先日、夫婦別姓で婚姻届が出せるという案が自民党の女性議員から一度出てきたが、自民党の中の昔の日本に憧れるグループの意見で潰されてしまったようだ。残念。

 

<内閣府の第5次男女共同参画基本計画の目標 2025年>

 

 このように、日本の民主化の基本は、世界から本当に遅れているということを強く感じたわけです。 皆さんはどうですか? 「ジェンダー・クオータ」という言葉を聞いたことがありますか? 皆さんの役所や、会社はこういう方向に向かっていますか?

 

注:

パーソナリティを構成するビッグ・ファイブ因子 Creative Commons 4.0 by Anna Tunikova

 

P.S.

僕がこのカラムを書いている時、偶然ですが朝日新聞(2020年12月26日)に、こんなタイトルの記事が載りました。「遅れに遅れた日本のジェンダー 130カ国がクオータ制」やっと来たかという感じです。朝日新聞のURL(リンク済み): https://digital.asahi.com/articles/ASNDT4GJ4NDSULFA03N.html

 


月を買った男 : L’uomo che compro la luna イタリア映画祭2020

2021-01-10 | エッセイ

 

 リアルでは中止になった、2020イタリア映画祭がオンラインで行われた。数少ないチャンスとストリーミングで参加した。72時間で100分の映画を見るのは結構疲れる経験となった。

 まずは、映画祭の作品紹介を読んでもらおう。

 ズッカ監督の第2作目。自身の生まれ故郷であるサルデーニャ島をテーマに、奇抜な設定と小気味よいリズムでスラップスティックな笑いが炸裂するコメディ。サルデーニャ島の誰かが月を所有したという未確認情報が世界中の諜報機関を駆け巡った。真偽を確認するために、イタリアの諜報機関はサルデーニャ島出身のケヴィンを島に送ることを決める。だが、彼は島の言葉や慣習を完全に忘れていて、島に溶け込むために特別なレッスンを受けることになるが…

 ・[2018年/103分] 原題:L'uomo che comprò la luna

 ・監督:パオロ・ズッカ Paolo Zucca

 ・出演:ヤコポ・クッリン、ベニート・ウルグ、ステファノ・フレージ

 この映画のジャンルはコメディと言われているが、単なる喜劇ではない。実際には、「詩」のようなリズムがある。作家の発想が豊かで、普通では思いつかないシュールな世界を作り上げている。まるで古代人の歴史のような話だ。

 サルディニアはイタリアの中でも、ユニークな土地、文化的に地方色を持っている。サルディニアに住む人間はサルドと呼ばれ、サルディニアは、イタリアの自治州の一つとなっている。とりもなおさず、非常にユニークな人柄と社会、慣習そのものと重なった舞台になっている。

 舞台はこのサルディニア。ここに月を買った男が住んでいると、国際諜報機関からイタリア政府に連絡があった。アメリカが先に月に到達したのに、サルディニアの個人が月を持っているのは許せないとクレームが来たわけだ。

 物語

 物語の大部分の舞台は、サルディニア島のクックルマル 村という小さな村。

 ここに、調査のために派遣されるのは、自称ミラネーゼ、北イタリアの男と言っているケヴィン ピレッリ(本名はガヴィーノ)。本当はサルディニア生まれの男で、イタリア軍の空挺部隊の一人だ。

 彼はサルデーニャに派遣される前に、サルド、つまりサルディニア人としての気質、行動、生活様式を身につけるための特別な教育を受ける。ズマルギネス・バドーレという名前の先生から、1対1で厳しく教えられる。

  例えばサルド風じゃんけん、羊を扱うための口笛、酒の飲み方、歩き方、チーズの味わい方、レスリングの仕方、鉄砲のたしなみ、女性の取り扱いなどを、時間をかけて、いやいやながら学ぶ。実は、この先生は7歳の子供を殺してサルデーニャ島をにげだした経験 を持つ男だった。

 ケヴィンの ミッションは、月を持っているという男を見つけ出し、アメリカに返すということだ。 訓練の結果、サルド(サルディニア人)として合格と認定され、ピレッリはサルデーニャ島に派遣される。 目的のクックルマル村 に入り、島独自の生活様式を持つ人たちに、いろいろと試されている。辛い思いをして学んできたことを使って、サルドとしての証拠を見せることができた。そして村の仲間として認められる。

 しかしながら、強烈なリキュールを飲まされて、ある一人の男に自分のミッションを明かしてしまう。「月を持っている男」の問題を解決するために、サルデーニャに来たと。

 この話は村の重鎮の老人たちの耳に入り、なんとかこの男を始末しなくてはならないと村人たちは考えて彼を襲う。サルデーニャは、外部からの侵攻に悩まされた歴史を持つから、外部の人はスパイかのように怪しいと見えるのだ。

 彼は月の持ち主を探すために、”マルヴァージョ”と呼ばれる月の風景に非常によく似た山地にたどり着く。 村人に追いかけられ、怪我をした彼は、砂漠のような平らなところで、ぶっ倒れてしまう。そこまで逃げられたのは、ロバの助け。3輪トラックに乗るロバの飼い主に発見され、助けられる。タネッドウッという彼は、海人で漁師。爆弾を使って魚を取るという乱暴な漁法を使っている。洞窟の中の家に住むテレーザの旦那である。

 テレーザの薬草のおかげで、彼は命を取り止める。 昔、タネッドウッが若者だったころ、テレーザを彼女の家から夜中に連れ出すとき、テレーザの親父に打たれて死にそうになった時に助けてくれた薬草だった。この薬草をテレーザに教えてくれたのは、月だった。彼らにとって月は母である。さらにケヴィンは魚を食べて元気になる 。

 問題の月だが、妻テレーザにタネッドウッが月を 贈ったという事実が語られる。しかし最初に月に到達したアメリカのアームストロングに10%の所有権があるとも言う。先に土地登記をしたのは、自分だとタネットウッは主張する。 土地登記後、50年間もどこからも文句が出ないから、自分の物だと言はっている。

  国際条約では、月はどこの国の所有でもないということになっていると、ケヴィンは彼に言う。しかし、彼は国ではない、個人なのだから問題はないと言い切る。国際条約は国が従うものだから、個人の自分は所有できるというロジックだ。アームストロングに10%を譲るように連絡を取ったけれども、返事は来ないとのことだ。月は、3億ヘクタールもあるから、まあ十分だ。妻にはアームストトロングの話は内緒だという。

 ケヴィンは本部に連絡する。アメリカには返しそうにもないと。

 村の長老の指示を受けた村人は、ケヴィンを殺しに集団でやってくる。イタリア軍は、ケヴィンをゴムボートで助けにくる。軍隊が乗っていて、武器的には軍の方が強そう。

  ケヴィンは戦いを止めようと立ちはだかる。軍はアメリカの潜水艦の応援を頼んだ。大きな潜水艦がヌッと浮上し、軍のゴムボートに並んで睨みを利かせる。

 その時、テレーザが笛を持って、砂漠のような山頂で笛を吹き始める。すると大きな月がその山の向こう側から、上がってくる。 月の引力で海面が下がり、ゴムボートも潜水艦も砂地に横たわる形になってしまう。 もう戦えない。更には大きな津波が岸へと襲ってくる。 ゴムボートの連中は逃げ惑い、島に上がろうとする。そこで、テレーザは高潮をおさめ、そこで戦いは終わる。

 村人たちは引き上げて行く時に、テレーザに彼をどうすると訊く。テレーザは、彼は私の客人ですと答える。

物語は終 (私の和訳だから、正確ではない部分もあるかもしれない。お許しを) 

 タネッドウッはある意味、詩人だ。テレーザはこの物語のヒロインだ。月を自由に操ることができるスーパーパワーを持っている。

 この物語のシンボルとしては、月と月面のような山、そしてロバと言えると思う。 月の世界のような荒涼とした岩と砂の山。これもこの物語のユニークな状況を作り出している。

 見終わって感じるのは、この物語は決してコメディではなく、日本人には発想不可能な物語であり、詩であると思う。マルヴァージョ≒ 月の世界には、亡くなった正義の人たちが何世代にもわたって暮らしている。正義の人は必ず、この月世界に行けるとサルドは信じている。

 後でネットで調べてみると、サルディニアはイタリア本国とは別の歴史と風土と人種と文化を持った場所であるという。 それをうまく使った映画だとも言える。サルディーニァは、本土のイタリアとは全く違った歴史を持つのだと分かった。 BC.8世紀ぐらいからフェニキア人、カルタゴ人、ローマ人、アフリカのヴァンダル人、サラセン、東ローマ帝国と目まぐるしく支配者が変わってきた島だった。それだから、イタリア本土とは違った文化が今に伝わっているのだろうと推測できる。

 

 今年(2020年)は、COVID-19で「イタリア映画祭」は見られないとあきらめていたが、ストリーミングとはいえ、最後の最後に「月を買った男」を見ることができた。おそらく、これが唯一の、今年の重要な出来事になるだろうと思う。素晴らしい時間だった。

 

P.S. 絵は映画祭サイトと、ストリーミング、イタリアのGoogle サイトからお借りしました


コロナの10か月

2020-12-27 | エッセイ

 

 僕の2020年月間カレンダーは、3月~12月まで各月に「コロナ」という赤字で埋められ、基本的には空白です。

<COVID-19>

 この10ヶ月間、生きるために最低限、必要な行動をやっているのみです。

 ・生活のために必要な買い物

 ・心臓に持病の僕は、通院が必要。 最低限オンラインで薬を出してもらう

 この二つは欠かせません。今年は何もない空白が過ぎて行くということです。バケット・リスト(くたばるまでにやっておきたいことのリスト)を眺めてみると、僕は幸運だったのかもしれないと思います。やっておきたいことや、旅などにおいては、ほとんどが昨年(2019)で完了しています。

 残念なのは、オーストラリアの「メルボルン行き」ということになりました。しかし、考えてみると、11時間もかかるフライトでは心臓への負担大ということで諦めるべきかもしれません。コロナ禍で密閉空間 11時間は、精神的にも耐えられないと思います。だから、このことは達成することは不可能だろうと思っています。仕方がない。

 お世話になっている Facebook に、僕の好きなオーストラリア固有な動物、ウォンバットを扱っているグループがあって、そこを見ながらクスクス笑っています。まあこれで我慢するしかないのかもしれません。ウォンバットを飼うというのが、オーストラリア永住プランの一要素でしたから。

<ウオンバット by Wombat Awareness Organisation シェアOK>

 旅というのは大げさですが、ここ横浜から見て、どうしても行きたいなと常に思っているのは東京です。僕の故郷です。行ってみたいところは、銀座、浅草、そして谷中ということになるでしょう。何か残念かと言うと 、僕が毎年見ていた上野の展覧会、日比谷の映画祭などの行事が全て中止になり、リスクを犯して見に行こうかなと思っていた西洋美術館の展覧会も、内容をネットで見るとリスクと比べて結果としては…ということになり中止。とにかく電車には乗りたくないので、行くとしたら車で行ける所に基本的にはなってきます。

 会っておきたい人のリストを眺めてみると、未達は他人が4名。身内が6名いますが、なかなか、お互いに会おうという機会はできなくて、未達のままです。まあしょうがないかとも考えています。このまま何もできずに12月が終わると、速、歳をとるとことになります。

 どこかで書いたのですが、新型コロナは、地球の創造主からの人間に対する警告だと思っています。あまりにも人類が地球に対していろいろ、やりすぎたということへの厳しい警告ではないかと考えています。つまり1950年を境として、人口が増え、GDP が増え、結果としてCO2が 異常に増えています。これは統計で裏打ちされている事実です。

<GDP>

<CO2>

 その結果、僕たちは自然を失い、さらに必要以上に自然を壊して入り込み、結果として人間には未知だったウイルスの新型コロナに遭遇し、その結果、今の辛い時間が始まったわけです。

<COVID-19 vs 人類>

 創造主としては、CO2を排出しない 他の動物達や優しい植物達に、やさしい地球を取り戻す必要を感じているのかもしれません。彼には人間は動物の中の一種でしかないのです。

 人間の生活の仕方を、大きく変える必要があるのだろうと思います 。GDP 至上主義で大きくなればいいという世界ではなく、折り合いをつけた生活に戻らざるを得ないという状況を、コロナと言う武器を使って創造主は警告しているのだと理解しています。

 皆さんはワクチンで完全に予防できると思っていますか?どうも、抗体の寿命は期待に反して短く、数か月の免疫効果しか持てないようです。常にワクチンを打ち続けなくてはなりません。

 先進国のなかでは、SGDS (Sustainable Development Goals = 持続可能な開発目標)を公式に掲げて、国の運営を、もしくは都市の運営を考え、実行し始めているところも見られるようになりました。

<アムステルダム リング>

 一番進んでいるのは、オランダ・アムステルダムだと思います。基本コンセプトは、イギリスの経済学者ケイト・レイワースさんの発明です。それを、アムステルダム流に解釈し、展開し、実行可能なアクションプランに起こし、動き始めています。

 オランダは先進国の中では、異常気象から最初に、しかも最大に大きな影響を受けると思います。オランダは人間が作り出した国土が大半で、海面が5メートル上昇すれば、ほとんどの土地が消えうせることになるでしょう。だから、環境破壊に対しては、厳密な計画を持って対処する必要があるのでしょう。

 こんなことは、日本では遠い将来のことのように思われていますが、オランダは本当に危機感を持っているのです。ちょっと能天気な日本も、海面が5m上昇したら、少ない日本の平野は瞬間的に減り、人の住む場所がなくなるというデータも存在します。

  速報によれば、 12月26日も東京では949人の新規感染者が発見されたということです。こうした状態は2021年末までは続くだろうという予告する人が多くなりました。さて、どうするか。