M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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「初めての…記憶たち」シリーズ 1.疎開と食べ物

2014-07-24 | エッセイ・シリース


 これまで、人生で出合った「初めて」という項目をリストアップしてみると、おもしろい塊が見えてきた。皆さんも「最初の○○は…」というのを覚えていますか?
思いだしてみると、その時期の自分と、その後が見えてくると思います。
 
 こんな風に、「初めての…記憶たち」というシリーズを始めてみたいと思います。


 人間の記憶は、大体4歳ころから残ると言われている。やはり、僕の場合も、ちゃんと覚えているのは4歳ころからの記憶の断片だ。

 最初の記憶は、おそらく3歳の頃。3月10の東京大空襲と関係していると思われるけれど、今はもう確かめる方法は無い。親父も、お袋も、姉も、みんな亡くなってしまったからだ。瞬間的な記憶にあるのは、“火の色をみながら地下に下りていく”だったと思う。これが最初のようだ。東京谷中の親父のアトリエが燃えたのが、この空襲だったから、その頃の記憶の断片なのだろう。

 次の記憶は、買ってもらっていたボール紙で作った自動車を、僕が水につけて壊してしまったというものだ。疎開の旅の中で、きっと、かんしゃくを起こしていたのだろう。何だか、赤い色のようだったきがするから、消防車だったのかも。今よりもっと気が短かったのだろう。

 もう少し後になっての記憶は、山家のルーツの、岡山の山の中での疎開生活の断片だ。長屋門のある大きな屋敷の小さな薄暗い空間。おそらく、その長屋門の二階の部屋の光景だっただろう。「クッブーダンキ」と書いてある姉たちの絵本があったようだ。



僕たちが借りていたころの二階建ての長屋門は、その後屋敷全体がたてかえられて、平屋の長屋門になっている



 その頃から、そそっかしい性格が身に付いていたのだと思う。その大きな屋敷の塀の上で、その家の秀ちゃんと遊んでいたら、踏み外して、塀と建物の狭い隙間に滑り落ちて背中を怪我した思い出がある。その塀に打ちつけてあった何本かの釘が、ずり落ちていく僕の背中をゆっくり切り裂いていった。今でも、その傷が背中に残っているから、これは間違いない記憶だ。

 最初のおいしい食べ物は乾燥バナナ。うちは疎開暮らしで、しかも、親父は油絵描き。岡山の山奥に親父の絵描きとしての仕事があるはずもない。高校の美術の講師をして、食いつないでいたようだ。



 乾燥バナナ

 そんな時に、我が家に乾燥バナナが現れた。おいしかった。忘れられない。本当の生のバナナを食べたのは、もっともっと後のことで、逆にそれが何時だったか記憶がない。

 おいしいものの記憶は強いようだ。鮮明に覚えている食べ物がある。

 あれは、僕が小学生の3、4年生の時だったろう。親父が親しい日本料理の板前さんの家に僕を連れて行ってくれた。

 びっくりしたのは、お吸い物。透明なお湯の中に、ゆずと三つ葉と、おそらく麩が浮いていたと思う。飲んでみて、こんなにおいしいお湯があるのかと驚いた。見た目には何のことは無い透明な汁のだけれど、すばらしい味が作りこんであった。



 その時は、よほど感動していたのだろう、もう一品、子供の僕を驚かしたものがあった。

 それは山芋。自然薯(じねんじょ)で、小さな器にすりおろした白い塊。箸でつかんでみると、しっかりとした塊でつかめるのだ。その少しを切り取って、それをゆずの搾り汁としょう油の混ざった液体につけて口に入れると、つるりとした感覚の中にゆずの香りが広がった。忘れられない味だった。自然薯って、こんなに濃くておいしいもんだと子供だった僕には驚きだった。

 親父の友達は、腕のいい板さんだったに違いない。

 その後、そうした感激は記憶に残っていないから、あの日本料理は本当に絶品だったのだろう。でも小学校の低学年のガキがこんなことを覚えているのも変なものだ。やはり記憶って、分からないものだ。

 そういえば、記憶というのは、自分の感情や、動物的感覚に裏打ちされたものは、強く心に残ると学んだ覚えがある。どうも、それは真実らしい。こんなことを覚えているのは、それを裏付けているのかも…と思う。

HP「てつんどの世界」のアップデート

2014-07-21 | お知らせ

「てつんどの世界」のアップデート

 出来事に、「2014年重要な出来事」アップしました。
 「ミラノ昨今」を更新しました。



下記、「ホームページ」⇒ から「近年の出来事」、「ミラノ昨今」で楽しみください。

http://tetsundojp.wix.com/world-of-tetsundo

物に対するこだわり

2014-07-09 | エッセイ

 僕はもともと、物理的な物に対する欲求は強くはない。それは、僕自身が育った家庭が裕福でなかったことの後遺症かもしれない。

 とにかく、大金を払って、みんなに自慢できるようなものを持つような欲求はまったく無い。だが、自分が身の回りに置いておきたいと思う、気に入ったものたちはある。

 この事を書こうと思ったきっかけ。それは孫が、今年小学4年生になり、その妹が小学校に入学したので、新入学の何かお祝い物を…と思ったことだ。

 下のチビにだけプレゼントするのもなぁと思って、結果として4年生の孫に選んだのは、ペリカンの万年筆。といっても、大人用の何万円もする、あのペリカンではない。ペリカンが作っているペリカーノ・ジュニアという万年筆への入門の品。メーカーは、ペリカン。僕自身が高校生の頃、憧れた大人のしるし、ドイツの万年筆だ。孫には、美しいロイヤルブルーのインク・カートリッジをつけて、プレゼントした。

 あの喜びを、もう4年生だから味わってもらってもいいだろうと、娘にも相談せずに僕が決めた。その子は喜んでくれて、会って食事をしているあいだじゅう夢中になって、インクの出具合、書く角度などを試していた。おそらく、大人の仲間入りが出来たとの思いと、妹に対するお姉ちゃんとしての優越感もあって、喜んでいたのだと思う。

 僕は一言、「インクは液体だから、ボールペンのように乱暴に使うことはできないよ。
シャツなどにインクの染みをつけないようにしなけりゃならないよ…」とだけ言った。

 これがきっかけで、僕のものに対するこだわりは何なのだろうと、リストアップしてみた。

  ・万年筆:ペリカン モンブラン ウオーターマン



  ドイツの万年筆は高くてなかなか買えなくて、銀座の伊東屋さんで、きらびやかなショーケースの中に並んでいるのを眺めていた。ペリカンを買ったのは、フランクフルトのDuty Free shopが最初。30歳にはなっていたと思う。でも高かった。

  ・ボールペン:ルイジ・コラーニ(ペリカン) ラミー ウオーターマン


 
 ルイジ・コラーニは、車のデザインで知られた、美しい形をうむデザイナー。ボールペンも美しい。ラミーはちょっといたずら心がある。

 ・パイプ:ピーターソン シャコム ダンヒル サヴィネッリ ブッショカン 手作り


  もうタバコをやめて25年くらい。だから、もうパイプは手元にない。ブログにも出てくるKTのところにある。彼も脳こうそくで、ホームに入っているから、手元には無いだろう。

  銀座に出る度に、菊水がまだあるかって確かめている。あれば安心。何時だったか、がんばってほしいと店の人に伝えた。手作りは、ブライヤーの原木を買って作ったのだから、入れ込みようは自明。



<この写真は、flickerよりJ. Shainskyさんのパイプをお借りしました>クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

 ・腕時計:ポルシェ・デザイン コルム

  ロレックスやオメガ、さらにピアジェとかバセロンには全く興味がないけれど、この二つのブランドには興味があった。香港に6週間いた頃、カオルーンで探してみたが、高くて手が出ない。だから、今も僕のところには憧れだけが残っている。僕が持っているのは、スイス国鉄の使っている時計と同じデザインのクオーツだ。



 ・ネクタイ:ペイズリー

  昔から、ペイズリーに決まっている。一時、全く見かけなくなったけれど、10年周期ぐらいで出回ってくるので、今の僕の20本は、お値打ち品(?)。ストライプはちょっと…ね。

 ・ウイスキーとジン:タラモアデュウとジュネバー

  アイルランドのこのウイスキー、タラモアデゥウはとてもいい。チーバスリーガルにも劣らない深みと軽さがある。Whiskyではなくて、Whiskeyと綴ってある。
ジンは大好きだ。(だった?)今は飲めない。ジュネバーはオランダのジン。独特の風味があって、奥深い。入れ物にも惚れている。

 ・カクテル:マルガリータとヴェルモット

  テキーラベースのマルガリータはクラッシュした氷と、塩とがとてもいい。ヴェルモットは、もちろんジンベース。しかし、心臓君の問題があるから、楽には手が出ない。困ったものだ。

 ・スケッチブック:Gekkoso

  何と言ってもスケッチブックGekkosoだ。僕の思いでのスケッチブックは、全て Gekkoso。なんといっても、スケッチブックはGekkoso。


 そうそう、最初の話に戻ると、小学校への新入学の下の孫には、パイロットが最近発売し始めたゲル状のクレヨン、24色。女性の口紅のように、上端をクルリと回せば新しい芯が出てくる。彼女も喜んで試し描きを描いてくれた。孫が一人遊びをしてくれたので、おかげで、娘とは大人の話が出来た。

追伸:
車については、僕の好みがあるのだけれど、別のエッセイで書いているから、重複は嫌なのでここでは省略します。

参照:HP
http://tetsundojp.wix.com/world-of-tetsundo
⇒ブログの側にある、「本にならなかった短編」の中の「自分史を映しだす車たち」2編。