大体、週日はNHK のイタリア語講座を朝15分間、聞くことにしている。
目的は二つある。一つは「ボケ対策」。二つ目は昔習ったイタリア語を忘れないためだ。結構、真面目にやっている。
<NHK イタリア語テキスト>
先日の講座でびっくりしたことがある。みんなにも知ってもらいたいと思って、この文章を書いています。それは「ジェンダー・クオータ」という言葉があるということです。
ここからNHKテキストを引用します。(イタリア語は読まなくていいです)
イタリア語/日本語
Sempre più donne nelle posizioni chiave 重職に就く女性ますます増える
Le normative sulle quote di genere, che promuovono la presenza delle donne nelle posizioni decisionali delle aziende, stanno ottenendo i loro frutti. Dai dati di marzo del 2019 risulta, infatti, che nei board delle società pubbliche il 32,6% è costituito da donne. Nei CdA delle grandi società quotate in borsa, invece, la presenza delle donne è passata dal 5,9% del 2011 al 32,9% del 2017
女性が会社の重職に就くことを推進するジェンダー・クオータに関する規定はその成果が実りつつあります。2019年3月のデータによると、実際、公営企業の役員会は32.6%が女性で構成されています。上場している大企業の取締役会において、女性の比率は2011年の5.9%から2017年の32.9%になりました。
引用終わり。
女性の社会進出、ないしは女性の活躍という内容なのだが、それが本当に具体化され、身近なところに実際に現れているということにびっくりしたのだ。男性に交じって、女性の参加者が、30%以上という具体的な目標が建てられていて、それを政府が、民間や公益法人を含めて、フォローしているというのだ。素晴らしい。
結構、封建的なこともあるイタリアの社会において現実に具体的に達成されていることは素晴らしいと僕の心を 打った。日本では、こんな比率を考えてみたこともない。
少し調べてみると、日本では「第5次男女共同参画基本計画」などという、難しいお役所の言葉で、時々聞く内容だ。平たく言うと男女が基本的には平等に、各分野において活動できる環境を整えると言うことだ。しかし、「ジェンダー(性別)への割り当て」という具体的な目標として迫ってくる表現ではない。政府の好きな単なるキャッチフレーズのようなものだとしか思えない。
この「ジェンダー・クオータ」ということは、基本的に民主主義の究極の姿を表したものだと言われている。 基本的な考え方はノルウェーから始まったもので、今や世界の大多数の国が参加している国際条約でもある。世界経済フォーラムが2019年(令和元年)に公表した「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」では、日本は 153 国のなかで121 位となっている。ほとんどビケに近い。
<ジェンダー配分をイコールへ:三田評論 慶応大学よりお借りしました>
日本の普通の人は、この「ジェンダー・クオータ」という言葉をほとんど知らないと思う。知らないわけだから、浸透しているかどうかは見えないのはあたりまえ。日本では、掛け声だけは常に現れてくるが、実施がされているかどうかのフォローアップがないから、国民に実状をフィードバックするという機能は全く動いていない。 だから、この言葉を聞いたことはないし、話題にも上らない。
『国際労働機関(ILO)が2019年に発表した「ジェンダー平等動向レポート」ではG7諸国の大手上場企業の女性取締役比率を比較している。それによると、2016年の女性取締役比率は、フランス37.0%、イタリア30.0%、ドイツとイギリスが27.0%、カナダ19.4%、アメリカ16.4%であるのに対し、日本は3.4%と極端に低い』<このフレーズ部分は「日本大百科全書」より引用>
<役員会議:by Alberto Nevi EU をおかりしました。Creative Commons 4.0>
日本の会社の重役会で、1/3は女性だという会社は非常に少ないと思う。 女性の参加は、男性主導型の日本において、本当に必要なことだと思う。心理学の「ビッグ・ファイブ」*注 という特性で男女を図った結果、女性は、一般的にはマルチタスクで、仲間と一緒になって快感、思いやり、衝動的な面もあるが、男性は好奇心、自己主張とか、アイデアの開放性が高いと報告されている。
男性のこうした性格のトレンドでは、柔らかな具体的な施策はなかなか実現できないのは当たり前なのかもしれない。何かを一緒に決めるということには、女性の方が、はるかに能力があるようだ。
男性だけの会議ではなくて、女性を入れて問題を考え議論してみると、エッと思う新しい発想を感じたことがある。そんなことを考えてみると、女性と一緒に物事を考えるということは、今の日本には特別に必要ではないかと思う。
先日、夫婦別姓で婚姻届が出せるという案が自民党の女性議員から一度出てきたが、自民党の中の昔の日本に憧れるグループの意見で潰されてしまったようだ。残念。
<内閣府の第5次男女共同参画基本計画の目標 2025年>
このように、日本の民主化の基本は、世界から本当に遅れているということを強く感じたわけです。 皆さんはどうですか? 「ジェンダー・クオータ」という言葉を聞いたことがありますか? 皆さんの役所や、会社はこういう方向に向かっていますか?
注:
パーソナリティを構成するビッグ・ファイブ因子 Creative Commons 4.0 by Anna Tunikova
P.S.
僕がこのカラムを書いている時、偶然ですが朝日新聞(2020年12月26日)に、こんなタイトルの記事が載りました。「遅れに遅れた日本のジェンダー 130カ国がクオータ制」やっと来たかという感じです。朝日新聞のURL(リンク済み): https://digital.asahi.com/articles/ASNDT4GJ4NDSULFA03N.html