M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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今回の旅のヴィノ

2016-09-25 | 2016 イタリア

 おそらく最後のイタリア行きだと思って、ワインのデータといくつかの写真を撮ってきた。

 まとめてみると、ざっと15品種の赤を飲んでいた。白は、ホテルに冷蔵庫があったとしても、フルボトルは入らないから基本的には「部屋飲み」はしなかった。白は、昼間のランチの時に、グラスか、カラッファ(ピッチャー)で飲んでいただけだ。しかもいつも、フリウリのピノ・グリッジョ。店でハウスワインの白を頼むと、驚くことに、ほとんどがピノ・グリッジョだった。まあ、大好きな白だから、問題はなかった。

 赤では、21日間で22本を購入していた。やはり、一日一本、消費していたことになる。それに、昼間のグラスワインは入っていないから、実際の量は、それを超えている。これは、ドクターには内緒。一応、心臓君のためには禁酒と言われているからだ。後付けでいえば、今回、発作は起きなかった。3,000mでの酸欠の心臓君の苦しさを除けば。

 いろいろなワインを試して飲んでいても、いつのまにか、もちろん僕の好みで、数品種に収斂してきたのが分った。試してみて、これはという新発見は難しいということかもしれない。

 例えば、知らなかった品種をあげてみると、ガルダ湖のあたりでしか栽培されていないTeroldegoや、ヴェネトのGinestre、最も口に合わなかったのは、ティラーノで買ったヴァルテリーナ産のValtelinaなどがあげられる。イタリアの北部の地方に限っての話だが、皆に知れわたっている品種に、選択肢が狭まってくるのが分った。



 <初めてのワイン>



 <ネッビオーロ ドルチェット>



 <ピノ・ノワール>

 僕はもともと、南イタリアの甘さの強いワインは嫌いだから、選択の対象にもしなかった。南イタリア人には、よく馬鹿にされているのだが…。

 結果として、ピエモンテ、ロンバルディア、ヴェネト、トスカーナ、アブルッツオあたりまでを飲んでいることになる。

 よく飲んだワインをあげてみると、こんな風になった。

・モンテプルチャーノ  5本
・バルベーラ       4本
・ヴァルポリッチェッラ  4本
・モンタルチーノ     2本
・カヴェルネ        2本

 他には、僕の大好きなランブルースコ・セッコ(セッコ以外はダメ)、ピノ・ネーロ、バルドリーノ、ドルチェット、ネッビオーロなどを飲んだと記録がある。

 これを時系列的に見ていくと、最初は、いろいろな冒険をしているのだが、いつの間にか、手が伸びる品種が絞られてきていた。

 僕がミラノでワインを買うというと、日本円で800円から1,800円近辺のものだが、十分においしい。500円以下は、トライしてみたが、やめておく方がよさそうだ。

 リストではモンテプルチャーノと書いているが、アブルッツオ産のものがトスカーナ産に比べて格段に安い。しかし、モンテプルチャーノの味はしっかり残っている。コストパフォーマンスから言えば、いいワインといえる。モンテプルチャーノ特有のブーケが、僕の好みとは言えないようだ。なんだか、すり寄ってくるような感じがするのだ。



<モンテプルチャーノ バルベーラ>

 ピエモンテでは、バローロやバルバレスコは外せないのだが、僕には重くて耐えられない。すると、バルベーラということになる。アスティのバルベーラはよく飲んだ。これは好きなヴィノと言っていいだろう。決して、裏切りはしない。



 <モンタルチーノ ヴァルポリチェッラ>

 しっかりと、しかし、媚びないところがモンタルチーノの特性か。でも、値段は高い。トスカーナのほかのワイン、つまりキャンティ、モンテプルチャーノと比べると、断然モンタルチーノが好みだ。これは僕の好きなヴィノの、トップかもしれない。

 

 <モンタルチーノ バルベーラ>
 
 今までの印象を覆したのは、ヴァルポリッチェッラだ。これはブドウの種類ではなく、とれる産地の区分けだが、ちゃんとしたボディもあって何でも合う。好みのワインの一つになった。これからは、日本でも試してみようと思う。



<ヴァルポリチェッラ カヴェルネ>

 カヴェルネソーヴィニオンは、イタリアのブドウではないが、やはり安心できる。日本でも、もっぱら、チリ産やオーストラリア産のカヴェルネソーヴィニオンを飲んでいる。イタリアのカヴェルネもいいものだった。



<ランブルースコ・セッコ>

 一番、うれしかったことは、僕が45年前、ミラノに赴任した時に通っていたトラットリアで、「おいしいよ」と教えてもらった、エミリア・ロマーニャのランブルースコ・セッコに出会ったことだ。ランブルースコは、少し甘めの発泡性のワインと定義されているが、どっこい、セッコはすばらしいと確信している。生ハムとの相性は抜群。日本では、なかなか、セッコは見つからない。飲めば、定説の間違いを確認できるだろう。

 ワインは、幸せな旅の一つの要素だ。今回の旅を幸せなものにしてくれた、名脇役たちだと言えるだろう。

ベルニーナ・エクスプレスとマウンテンバイク

2016-09-11 | 2016 イタリア





 <ベルニーナ・エクスプレス>

 車では何度も越したことがあるベルニーナ峠。今度初めて、イタリアのティラーノから、レーシック鉄道、ベルニーナ線でサンモリッツ往復と、デヴォレッツア往復をやって楽しい風景を見たから、写真主体だが、それを書いておきたいと思う。車の運転ということから解き放されて、周りを見る楽しさに満ちた旅、これが列車の旅、無責任な旅の醍醐味かもしれない。



 <ベルニーナ線の標高差>

 ベルニーナ鉄道の最高点は、オスピッチオ・ベルニーナ駅の海抜2,253mだ。この両端に、宿をとったイタリアのティラーノの町、429mと、スイスのサンモリッツの町1,775mがある。その間を2時間半で、ゆっくりと列車は走る。その間、カメラをもって、目を見張りながら豊かな時間を過ごすことが出来た。

 当初の目的は前回書いた通り、ロープウエーで登るサンモリッツのピッツネール、3,056mと、デイアヴォレッツア、2,953mからの眺めだった。今回は、そこへの行程の風景を書いておきたい。一言で言うと、すばらしい自然だった。



 <ティラーノ発の電車>

 ティラーノ市内は路面電車だ。そして、すぐスイスとの国境を過ぎる。そこから、ベルニーナ・エクスプレスは、アルピ・グリュム2,091mまで一気に1、660mほどを登りつめる。約1時間15分の旅だ。あっという間だ。この間、美しいポスキアーボ谷のいろいろな姿がよぎる。



 <ブルージオのループ橋:Bernina Express HPより借用>

 最も知られているのは 、ブルージオの石造りのループ橋だろう。360度回転しながら、高度を稼いで行く。残念ながら、窓は開けられないから、ガラス窓越しにシャッターを切る。イタリアの列車の残念な特徴の一つだが、窓の清掃が十分ではないから、ガラス越しにはいい写真は撮れない。絵の片隅に汚れが暗く影を落とす。



 <ループ橋を走る>




 <森林限界>

 ポスキアーボ、1、014mから、急峻な登りだ。カヴァリアなんてかわいい駅をすぎて、電車はどんどん上っていく。ここで森林限界を超えて樹木がなくなり、眺望が開けてくる。見逃すまいとカメラと肉眼で、周りをきょろきょろ。僕だけではなくて、乗っている人たちがみんな、騒いでいる。

 印象的な風景は突然現れた。ベルニーナ山塊の氷河が解けたと思われる滝が、氷河が削ったと思われるカール状の谷の奥に見える。何段にも連なって、滝がかかっている。とめどなく氷河は溶けているわけだ。美しいけれど、そこには地球の涙が流れていたのかもしれない。しぶきが激しい。



 <氷河が解けて落ちる滝>



 <氷河の溶け落ちる水量>

 登り切ると、高原台地の最初の駅、アルピ・グリュン、2,019mに着く。そこから、この線の最高地点、オスピッチオ・ベルニーナ2,253mに着くと、そこが分水嶺。両端を堰き止めてできたラーゴ・ビアンコ(白い湖)を眺めながら、7月の高原の光と草をはむ牛の群れを見る。ディアヴォレッツア駅を過ぎると、高原台地ともお別れ。まもなく、特には見るものもなく、スイス・エンガディンの谷筋に降りていく。


 もう一つ、僕には発見があった。それは、アルプスでのダウンヒル・マウンテン・バイキング。こんなに、流行っているとは知らなかった。



 <コルヴィリアで降りるバイクたち>

 最初の目撃したのは、サンモリッツからコルヴィリアに登るケーブルカーに何台もバイクが乗り込んできた時だ。さらには、コルヴィリアからピッツネールに登るロープウエーにお父さんと若い娘さんが、バイクを持ち込んできた時だった。えっ、3,000mからバイクでダウンヒルをやるのかと訝って眺めていた。彼女のバイクは、どう見ても新品に近い。そんな初心者を3,000mまで連れていくのかと心配して聞いていたが、ドイツ語なので分からなかった。



 <ピッツネールの裏側へのスキートレイル>

 ピッツネールの頂上から降りるには、夏スキーでも使っていた裏への斜面を降りることだが、それも大変だと思っていた。後で調べてみたら、トレイルはコルヴィリアから始まっていたので、おそらく一度ピッツネールに登って、雄大な風景を娘さんに見せておきたかったのかもしれない。キャビンでコルヴィリアまで降りて、そこからサンモリッツまでのダウンヒルをやったのかもしれない。コルヴィリアも、2,500mはあるから、サンモリッツまでの標高差750mくらいのダウンヒル、スリルに満ちているだろうと思ったが、僕は見届けてはいない。



 <サンモリッツを見下ろす、バイク・トレイル:サンモリッツ観光協会より借用>

 帰りのベルニーナ・エクスプレスのポスキアーボ駅には、ダウンヒルを終え、疲れた連中がプラットフォームで休んでいた。彼らもアルプ・グリュムぐらいから、1,000mの標高差をバイクで降りてきたのだろう。よく見ると、バイクは特製だった。後ろの車輪のダンパーはもちろん、前輪のフレームにも、ショックを受け止めるダンパーがついていた。前輪のタイヤは、太くて、滑り止めのゴツゴツしたものがついていた。もちろん、ディスクブレーキ。頭にヘルメット、脛、肘のプロテクターをつけて、完全装備だった。こうしてグループで、夏を楽しんでいるのだ。若かったら、やってみたいなあと思わせる光景だった。



 <ポスキアーボ駅のバイクたち>



 <くたびれたぜとライダーたち>

 余分なことだが、もしこの鉄道を利用されることがあるとすれば、写真を撮るには、無蓋車がお薦めだ。何しろ、閉まった汚い窓がない。ただ太陽とは直接向き合う必要がある。



 <無蓋車、暑そう>

 さらに余分なことだが、このベルニーナ鉄道と箱根登山鉄道が協賛関係にあるということで、ティラーノやアルピ・グリュムに箱根登山鉄道から寄贈された日本語の看板がある。電車のスケールといい、取り巻く風景、環境といい、まったく違う感じがして、ちょっと馴染まないなと思ったのだが…。



 <日本語のティラーノ駅看板>



 <アルピ・グリュムの駅看板>