扁鵲(へんじゃく)のつぶやき

東洋鍼灸専門学校 鍼灸科50期卒業生の同窓ブログです。
日頃の不安、悩みを率直に語り合いましょう。

Book Review 『「人生百年」という不幸』里見清一著

2022-09-29 20:38:02 | 読書
著者は現役の臨床医で日々がん患者を相手に診療をしています。たまたま買った週刊新潮に連載のコラム「医の中の蛙」を読んで興味が沸き、著書を買ってみました。


帯のコピーが強烈です。
確かに従来の長生き礼賛の書籍とは一線を画していました。

特に面白かった部分をまとめてみました。
「ピンピンコロリは実に難しい」
・人は必ず老いて、寿命が尽きて死ぬ。医者も患者も家族も、国家もこの当然の真理を直視できずに目を背ける。
・世間ではピンピンにばかり目が行ってコロリに全く目がいっていない。医学が発達した現在、コロリ(=突然死)できるのは事故死か心不全くらい。実際に身辺整理がまったくできていない状態でコロリと亡くなったら周囲が大迷惑。かといっていつコロリとなるかわからない状態で事前に身辺整理するのは普通の人は無理。
・ベストは余命宣告を受けた末期がん。その期間はあまり急ではなく身辺整理や親戚家族に別れを告げられる余裕があること。

「人は死なない」を前提にしてしまった現代医療
・すべての病院やケア施設は、もしくは医者は、人が死ぬことを想定しない。少なくとも「自分のところで死なれる」ことはない。それは防ぐべき事態なのである。どんなに高齢でも治療法がある疾患であれば治療しないという選択肢はない。
・死が見えてきたときは通常の治療から切り離されて、専門領域である「緩和医療」「ターミナルケア」の分担となる。

代替医療で得られるものは?←我々鍼灸は代替治療に含まれますが、これについてはなかなか手厳しいです(^^;
・がんの標準治療に匹敵するだけのエビデンスはないが、現代医療の致命的な欠点である「時間不足」「コミュニケーション不足」を補うためなら有用。お金に余裕のある患者さん向け。

命とカネ←新薬がどんどん開発されていますが、びっくりするほどの値段です。
・ノーベル賞を受賞したことで有名になったがんの免疫治療薬「オプジーボ」は以前は体重60キログラムの人に一年間使うと約3,500万円かかった。もっと高額な新薬もある。
・日本の国民皆保険制度下では高額医療費制度があり、上限額を超える費用はすべて健康保険から支払われる。そのため健康保険組合は高額医療費の支払いに苦しみ、結果、保険料はどんどん値上げされる。それでも赤字転落する組合があり、解散するものが続出している。最終的には国庫から支援されている。
・この状況が続けば「すべての患者に同じ治療レベル」を提供することは不可能になり、誰かを犠牲にしなければならない。

人が死ぬのはそんなに嫌か
・どんなにお金を費やして治療しようが人はいずれ死ぬ。この当たり前の事実を直視し、「人は死なない」ことを前提にして動いている医療・社会保障システムを持続可能なものに変えていかないとならない。

(おまけ~パキラの成長物語(*^^)v)
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                      (2022/9/29)


コメント (6)
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