SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

JOHN COLTRANE 「Crescent」

2008年12月30日 | Tenor Saxophone

それにしてもインパルス時代のコルトレーンはすごかった。
これをかけてさえいれば、どこでも本格的なジャズ喫茶のような雰囲気をつくり出すことができた。
なぜかと聞かれても即答できないのだが、コルトレーンが生み出す音には一種独特の匂いがあった。どことなく東洋的な線香のような匂いだ。コルトレーンが好きな人は、この強烈な匂いがたまらないのだと思う。
先輩のO氏もそうだった。

長い長い「アセンション」がようやく終わり、先輩は煙草に火をつけると「どうだ、いいだろ」と得意気に語り始めた。
そこに居合わせた友人たちも、一様に首を縦に振る。
正直言って何がいいのかわからなかったが、私も鬼気迫るようなパワーに圧倒されたことは確かだったし、これが本物のジャズだといわれれば納得するしかなかった。それくらいコルトレーンの生み出すフリージャズは難解で、近寄りがたい精神世界だった。

先輩は次に「クレッセント」をかけた。
これは名作の誉れ高い「バラード」とは一味違ったもうひとつのバラード集である。
相変わらず線香のような匂いはしてくるものの、緊張感から解放された喜びは大きく、とても聴きやすいコルトレーンだった。
この時は全員、心の中で胸をなで下ろしていたのをよく覚えている。

しばらくして先輩はある程度満足したのか、「今度はおまえが持ってきたレコードをかけてやろう」と言い出した。
私はしばし躊躇はしたものの、袋からローズマリー・クルーニーのレコードを出して差し出した。
一瞬、「???」という何ともいえない間があった後、「こういうヤワなのもたまにはいい」と慣れた手つきでレコードにスプレーをかけ、ターンテーブルに乗せて針を落としてくれた。
ロージーとベティのコーラスによる歌声が部屋いっぱいに充満した。
私のアパートで聴くそれとは全然違った音の広がりだった。


...今回も長くなりそうなのでこの続きはまた明日。




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