SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

BOB COOPER 「Coop!」

2009年05月09日 | Tenor Saxophone

いわゆるB級盤といわれる類のものだ。
でもこういうレコードをかけている時が一番調子のいい自分であることに気づく。
気分がよくなければこのレコードにはたぶん手が伸びない。なぜかなんて野暮なことは聞かないでほしい。ウエストコースト・ジャズは文句なしにおしゃれでハッピーなのだ。

このボブ・クーパーのレコードを聴くといつも思い出す場所がある。
20年以上前の話だが、友人と行ったある港町のジャズクラブだ。
通りを歩いていたらライヴハウスのネオンサインが目に入ったので、衝動的にその店に入ることにした。
狭いレンガの階段を下りていきドアを開けると背の高い案内人が立っていて、いきなり「誰が好きか」と聞かれた。
思わず「は?」と聞き返すと、
「ジャズプレイヤーだよ」とそっけない返事。
咄嗟に「アート・ペッパー」と答えたら、彼は初めてニッコリ笑って「OK!」と肩を叩かれ、半分意味がわからぬまま席に連れて行かれた。
席に座って初めてわかったのだが、この店はどうやらウエストコースト・ジャズの店らしかった。
思い浮かんだ人がマイルスやコルトレーンでなかったのが幸いした。

私たちはステージから10mくらい離れた壁際の席にいた。その壁には様々なウエストコースト・ジャズのレコードが飾られていたのだが、その中の一枚にこの「Coop!」があった。私にとっては初めての出会いだった。印象的なジャケットだからすぐに目についたのだと思う。
私たちはビールを注文して開演を待った。
やがて若い白人のジャズメンたちが折り目正しいスーツ姿で登場。
メンバー構成は、テナー、トロンボーン、ヴァイヴ、そしてピアノ、ベース、ドラムスだった。奇しくもこの「Coop!」とほぼ同じ編成だ。
演奏は悦に入ったものだった。
彼らの名前などは全く覚えてはいないが、50年代のウエストコーストにタイムスリップしたような感覚になって大満足だった。
おそらく当時もこんなシーンはあちこちであっただろう。
ジェリー・マリガンやチェット・ベイカー、バド・シャンクといった粋な人たちが、その時代を謳歌したのである。

私は数日後、この「Coop!」をレコード店で手に入れた。嬉しかった。
あの時からウエストコースト・ジャズのファンになったのはいうまでもない。


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