SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

LESTER YOUNG 「THE JAZZ GIANTS」

2007年09月03日 | Tenor Saxophone

どーんと大物を登場させよう。泣く子も黙る?レスター・ヤングだ。
そう思って聴くと同じテナーの音も違って聞こえる。先入観とは恐ろしいものだ。
このアルバムは「Pres and Teddy」と並んで彼晩年の傑作である。全盛期の彼ももちろんいいが、枯れた味わいは何ともいえず哀愁感たっぷりだ。
お気に入りは2曲目の「I Didn't Know What Time It Was」とラストの「You Can Depend on Me」。どちらも彼の好調ぶりが滲み出た演奏である。ジーン・ラミー(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)が生み出す単調なリズムがこれまたいい。古き良き時代にタイムスリップできる。
レスター・ヤングに続くロイ・エルドリッジ(tp)やヴィック・ディッキンソン(tb)テディ・ウィルソン(p)も生き生きしたソロを披露してくれる。特にヴィック・ディッキンソンとテディ・ウィルソンが抜群にいい。私は以前からテディ・ウィルソンのファンだが、このアルバムを聴いてからというもの、ヴィック・ディッキンソンにもはまってしまった。
絶対数からいってトロンボーン奏者はサックス奏者やトランペット奏者よりも圧倒的に少ない。有名なところでいえばJ.J.ジョンソン、ボブ・ブルックマイヤー、ベニー・グリーン、フランク・ロソリーノ、カーティス・フラーといったところだが、これ以外のトロンボーン奏者を挙げろといわれてすぐに名前が出てくる人はかなりの通だ。
そんな中においてヴィック・ディッキンソンのトロンボーンはまるでルイ・アームストロングの歌声そのものだ。これほど肉声に近い音は他にない。しかもソロの中における音色の変化と盛り上げ方は当代随一、全く脱帽だ。因みに「I Didn't Know What Time It Was」でのソロがその典型例だ。続くテディ・ウィルソンのピアノソロがこれまたいい。この場面にさしかかるといつもぞくぞくしてしまう。この曲に関してはレスター・ヤングがいなくてもいいくらいのものだ。

おっとここはレスター・ヤングを中心に書かねばならないところだった。
しかしタイトルが「THE JAZZ GIANTS」、その意味をしばらく噛みしめて聴いてみよう。
ラストの「You Can Depend on Me」ではいつになってもレスター・ヤングが出てこない。ラストのラストになってようやく出てくるレスター・ヤングの優しくも大らかなテナー、この演出に大拍手を贈りたい。


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