SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

JESSICA WILLIAMS 「THIS SIDE UP」

2008年12月26日 | Piano/keyboard

ジェシカ・ウィリアムス、MAXJAZZにおける初のレコーディング作である。
彼女くらいの実力があると、いきなり第1音からその世界を創り出す。
女性だからといって少しも甘くない世界だ。
ピリッと張りつめた緊張感が、曲が替わっても持続していく。そこにはまるで組曲を演奏しているかのような一貫性があって、彼女のアルバムづくりに対する拘りが見て億れる。
言い換えればスタジオ録音なのに、連続して演奏を行っているライヴのような感覚に陥るのだ。
私たちはこの世界にぐいぐい引き込まれていく。

気がつくと4曲目辺りから、緊張感もとれていっていつしかリラックスできるようになる。
5曲目の「セレナータ」は感動ものだ。レイ・ドラモンドのベースも弾けている。
但しこのアルバムで特筆すべきは、その後に登場する3つのトリビュートナンバーである。
6曲目の「マイルス・トゥ・ゴー」はもちろんマイルス・デイヴィスに捧げたナンバー。ところどころでピアノの弦を指で押しつけてトリッキーな演奏を見せる。キュイ~ンと伸びた音が何だかマイルスを暗示しているように感じる。
7曲目はローランド・カークに捧げた「ユーリピアンズのテーマ」。この曲は劇的な構成になっており、タンゴ調のリズムに乗ってカークの思い出が通り過ぎてゆく。
そして8曲目が「アイ・リメンバー・デクスター」。
これはデクスター・ゴードンに捧げた曲で、曲名だけ見ればベニー・ゴルソンの「アイ・リメンバー・クリフォード」を連想してしまうが、ここはデクスターの性格に合わせて、ジメジメしない明るい展開にしている。
彼女はサンフランシスコの〝キーストーン・コーナー〟で、実際にデクスター・ゴードンのバックを務めていたこともあり、デクスターの喜びそうなツボを心得ていたのではないだろうか。
そして9曲目の「イノセンス」。これがまた涙ものだ。ラストの「オフ・ブルー」もいい。
どちらもここまでの出来事を振り返るかのような仕上がりになっている。

ここまで読まれてお気づきだろうと思うが、このアルバムはなかなかに計算されたストーリーになっている。
もちろん誰もが私と同じような感慨を覚えるわけではないだろう。
しかし1曲1曲の出来もさることながら、アルバムはやはり全体を通しての価値を生み出せるか否かが重要なのだと思う。
そういう点でいえば、このジェシカ・ウィリアムスは実に立派なアーチストなのである。


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2 コメント

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これは聴きたい (さはら)
2008-12-26 18:57:34
「アイ・リメンバー・デクスター」ですと。
ぜひ、聞かせてください。
30秒の試聴ではもの足りません。
ではでは。
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はい。 (SATOM)
2008-12-26 20:15:44
了解しました。年忘れジャズパーティに持参しましょう。
お楽しみに。
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