SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

HAROLD LAND 「THE FOX」

2008年12月24日 | Tenor Saxophone

私にとってこれは、もう一つのブラウン~ローチ・クインテットだ。
但しここにはクリフォード・ブラウンもマックス・ローチもいない。しかも録音された場所がカリフォルニアだから、そうしたデータだけ挙げれば、まるで違う作品かもしれない。
しかしこの疾走感といい、安定感といい、ハロルド・ランド一人いればブラウン~ローチ・クインテットのエッセンスが充分味わえる。
嘘だと思う人は、あなたのレコード棚にあるブラウン~ローチ・クインテットのアルバムをもう一度聴き直してみるといい。
確かにクリフォード・ブラウンやマックス・ローチはすごい。しかしそこに登場するハロルド・ランドも彼らに一歩もひけをとらない実力者であることに気づくだろう。
そう、彼こそが名脇役であり、グループにとってなくてはならない存在だったのだ。

彼のテナーは、硬い芯にコイルをぐるぐると巻き付けたような頑丈さが持ち味である。下手なテナー奏者にありがちな「ふらつき」が一切ない。
しかもメンバーとのコンビネーションが抜群にいい。
このアルバム「THE FOX」でも、リーダーでありながら極端に出しゃばるところがなく、みんなにも花を持たせている辺りがいかにも彼らしい。
お陰でエルモ・ホープなんかはどうだ。迷いを吹っ切るようなすごい演奏を随所で聴かせてくれる。自分のリーダーアルバムよりも格段にいい、なぁ~んて書くと叱られるかな。

曲は1曲目のオリジナルである「Fox」、3曲目の「One Second, Please」、4曲目の「Sims A-Plenty」辺りのスピード感が、ブラウン~ローチ・クインテットを彷彿とさせいい出来だが、個人的にはややブルージーな5曲目の「Little Chris」も捨てがたい。
エルモ・ホープの他にも、全編に渡ってフランク・バトラーがマックス・ローチばりの大活躍をしている。
彼の叩き出すリズムに全員がお尻を叩かれているようだ。
これが吹き込まれた1959年はハードバップの全盛期。西海岸だってクールじゃいられなかったのだ。


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