今日はレコード棚からこの一枚を取り出した。
これを購入したのは20代の前半だったと思う。たぶんジャズを聴き始めて2~3年の頃だ。
私にとって当時の憧れはウィントン・ケリーだった。あの独特の節回しと転がるような指使いを毎日のように聴いては一人悦に浸っていた。どのジャズ専門誌などでもビル・エヴァンスが最高のピアニストだと書かれていたが、私はビル・エヴァンスの良さがさっぱりわからなかった。だいたいにおいて知的だとか美的だとかいうピアノには興味がなかったのだ。ジャズにおいては何より飛び跳ねるようなスイング感が大切だと思っていた。だからウィントン・ケリーはもちろん、エロール・ガーナーのようなエンターティナー性を発揮する人が私のお気に入りだったのである。
このフランク・ストロジャーのアルバムは、そんなウィントン・ケリー・トリオを聴きたいがために購入した。共演しているブッカー・リトルとの相性が良かったのと、レアな雰囲気を持つジャケットにも惹かれた部分があった。
内容は典型的なハードバップで、ほとばしるような熱演が展開されている。
フランク・ストロジャーにとってこれが初のリーダーアルバムということもあってか彼自身かなりとんがった印象はあるものの、その一生懸命さがひしひしと伝わってくる。新人はこうでなくてはいけない。何曲かいい感じのオリジナル曲も書いているので、そちらの方にも才能があったのだと思う。
肝心のウィントン・ケリー・トリオは相変わらず安定したバッキングを行っている。彼らが脇を固めると自ずと全員が生き生きしてくる。やっぱりこうしたファンキーなアルバムには欠かせない人たちなのだ。ビル・エヴァンス・トリオではこうはいかない。やはりそれぞれの活躍する土俵が違うのだということを実感させられる演奏だ。
フランク・ストロジャーのアルトもさることながら、このアルバムの花形はブッカー・リトルのトランペットである。彼の短い生涯の中においてここでの演奏は重要だ。ファンならずともぜひ聴いていただきたい。タイプとしてはクリフォード・ブラウンとリー・モーガンの中間に位置する人だ。彼もまた天才の一人であったことがここで証明されている。
とにかくずいぶん久しぶりにこのアルバムを聴いた。若い頃に聴いたアルバムだけに最近購入したものとは決定的に愛着感が違う。私にとってはもう手放せない一枚になってしまった。
ケリー・トリオいいですね!
このレコードは今まで素通りしていましたが、自分の好みに合いそうです。
今度中古ショップでチェックしてみます。