SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ART FARMER & GIGI GRYCE 「WHEN FARMER MET GRYCE」

2009年02月11日 | Trumpet/Cornett

ジャケットに写るのは1954年の冬だろう。
厚いコートを着た地味な二人の黒人ジャズメンが公園で出会い、しっかり握手する。
まぁ年季の入ったジャズファンなら、これだけでどんな音が流れ出るかを想像できるというもの。
50年代のジャズはこういう楽しみがあるから好きだ。
現代のジャケットには残念ながらこうした味わいがない。
ジャズ批評では数年前から年に一度マイ・ベスト・ジャズ・アルバムを選出しており、その中に「ジャズジャケット・ディスク大賞」という部門を置いている。
私も興味があるから「どれどれ」と手にとって眺めて見てみるのだが、だいたいがっかりする。
「本当にこれがベスト10なの?」というものばかりだ。審査員のセンスのなさにも腹が立つ。
特にお色気たっぷりの女性をあしらった通俗的なジャケットにはうんざりだ。もういい加減にしてくれといいたい。
デザイナーはいつまでこんな手抜き作業をする気なのだろうか。レーベルはいつまでこんなマンネリを続けるのだろうか。
彼らはもっと50年代のジャケットづくりを見習うべきである。

さてこのアルバムは、典型的な初期のハードバップである。
ハードバップ誕生の記念碑的な作品と目されるマイルスの「ウォーキン」や「バグス・グルーヴ」も、ちょうどこのアルバムが発表された時期と重なっており、アート・ファーマーとジジ・グライスが、いかに早い段階でこうした時流に乗ったかを思い知らされる。
ただこの作品はトランペットとアルト・サックスという高音域中心の2管編成だから、どちらかというと軽めのハードバップだ。
アート・ファーマーもこの頃はまだストレートに吹ききっているし、ジジ・グライスも軽快にファーマーと渡り合っている。
全体にハードバップ特有の泥臭さがなく品のある演奏だ。
曲は何といっても7曲目の「Blue Lights(ブルー・ライツ)」が黎明期のハードバップを象徴している演奏だと思う。
フレディ・レッドのピアノも快調だ。
このリズム、この雰囲気が一世を風靡したジャズシーンの幕開けを飾ったのである。