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SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ART FARMER 「YESTERDAY'S THOUGHTS」

2007年03月09日 | Trumpet/Cornett

「リリカルな」と表現すると、それはビル・エヴァンスに代表されるピアノを指すことが多い。少なくともその言葉からトランペットを連想する人はあまりいないのではないかと思う。
ただアート・ファーマーは例外だ。リリカルなのである。
ではリリカルとは何だろう。早速辞書で引く。「抒情的・抒情詩的であるさま」とあった。
うむ、抒情詩とは何だろう。またまた辞書を引く。「作者の思いや感情を表す詩。元来は楽器に合わせて歌う詩」なのだそうだ。
なんだやっぱり音楽に戻ってくるのかと一人で納得。

このアルバムで彼はフリューゲルホーンを吹いている。トランペットより、さらにやさしい音色だ。
そのやさしい音色で哀愁漂うメロディを次々と歌い上げる。選曲もよく、何度聴いても切ない感情がわきあがり感動してしまう。
ワンホーンの魅力がたっぷり詰まった一枚。素敵だ。

LEE MORGAN 「THE COOKER」

2007年02月25日 | Trumpet/Cornett

リー・モーガンにはずいぶん熱を入れた時期があった。
何せ彼はハードバップには欠かせないキャラクターだ。火の玉小僧とはよくいったものだと思う。
コルトレーンの「ブルートレイン」やジャズ・メッセンジャースの「モーニン」での演奏を聴けば誰でも納得する。
とにかくスカッと爽やかコカコーラみたいな人だ。何の迷いもなく一気呵成に吹く。どこで息継ぎをするんだと思えるほどに彼の肺は強靱だ。しかもアドリブのうまさは天下一品ときた。気持ちいいのなんのって他に類を見ない。

このアルバムは彼のリーダーアルバムの中でもひときわ熱い一枚だ。
最初の「チュニジアの夜」を聴いて欲しい。じっとしていても汗が噴き出すような真夏の夜を体感できる。
ペッパー・アダムスもバリトンで負けじと応戦。ドラムはアート・ブレイキーのようなフィリー・ジョー。
最もブルーノートらしい一枚かもしれない。


CHET BAKER/ART PEPPER 「THE ROUTE」

2007年02月11日 | Trumpet/Cornett

アメリカのジャズシーンにおいてウエストコーストジャズの存在は重要だ。
ウエストコースト(西海岸)はハリウッドを中心とした映画産業が盛んで、多くのジャズマンが映画音楽等と関わりを持ちながら明快なメロディと明るいリズムで一世を風靡していた。活躍したのは主に白人で、ここにご紹介するチェット・ベイカーやアート・ペッパーらがその代表選手だ。
但しこのアルバムで最も気に入っているのはベースのリロイ・ヴィネガーである。タイトル曲である「The Route」や「Minor Yours」「The Great Lie」等でのベースラインは彼ならではの魅力満載だ。これでもう少し録音がよければ最高なのだが、できるだけの大音量で聴くと、リズミカルな彼のベースの上で何羽かの鳥が絡み合っているようで面白い。

このジャケットは残念ながらオリジナルではない。それをやたらと気にして本作を駄作扱いする人もいるようだが、これだって決して悪くない。イケメン二人の溌剌としたレコーディング風景を見られるだけでも有り難いと思うべき。


MILES DAVIS 「doo-bop」

2007年02月10日 | Trumpet/Cornett

「最初に取り上げるマイルスが doo-bop とは、ひねくれ者め!」といわれそうだが、これは文句なしの愛聴盤なのだから仕方ない。
私はチャーリー・パーカーと一緒に演奏していた頃のマイルスから、エレクトリック・マイルスといわれた後期まで、みんなそれなりに好きだ。
何だかんだいってもモダンジャズの中心には常にマイルスがいた。否、現代音楽の中心だったといっても過言ではない。そんな語られ尽くした彼の功績を今更私が話しても仕方ないが、ヒップホップまで取り入れたこの「doo-bop」は、晩年にも係わらず彼の千里眼に衰えのないことを改めて感じさせた。

50年代後半、マイルスは当時新人だったビル・エヴァンスを自分のグループに招き入れた。エヴァンスは白人だから周りの非難(人種差別)は相当ひどかったらしい。そんな周りに向かってマイルスは「腕のいいヤツならオレは緑色の肌をしているヤツとだって組むさ」ときっぱりいい放ったという。
常に新しい音楽シーンをつくってきた彼は、人種や世代、ジャンルを超えた才能との協働がいかに大切かを知っていたのだ。
見習うべきこと多し。

DIZZY REECE 「STAR BRIGHT」

2007年02月08日 | Trumpet/Cornett

時は1959年、寝ても覚めてもハードバップ全盛期。
その中でもこのアルバムはよくできた一枚だ。これを聴くときは、ハードバップ特有の粗さを楽しむというより思いっきり明るいリズムを楽しむ。
明るい原因は、よく歌うディジー・リースのトランペットと、飛び跳ねるようなウィントン・ケリーのピアノのせいだ。
特にケリーのピアノは全員の気持ちを高揚させているのがよくわかる。ポール・チェンバースなどは、いつになく前向きに突っ込んだ弾き方をしていて正に絶好調だ。まるで演奏している彼らの笑顔までが見えるようだ。

ディジー・リースは作曲の腕もなかなかのものだ。このアルバムでも6曲中4曲を書いている。
しかしなぜかタイトル曲である「STAR BRIGHT」がこの中に入っていない。これっていったいどういうことなのだろう?
ただこの曲はデューク・ジョーダンの「フライト・トゥー・ジョーダン」で、彼(ディジー・リース)の名演を聴くことができる。こちらもぜひ聴いていただきたい。
ジャズの楽しみの一つは、間違いなくこうした小話?裏話?の面白さにあるのだ。