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SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

THE THREE 「JOE SAMPLE,RAY BROWN,SHELLY MANNE」

2008年03月04日 | Piano/keyboard

ジョー・サンプルと聞いて違和感を覚えてはいけない。
確かに彼はフュージョン界の大物スターであり、泣く子も黙るクルセイダースのリーダーだ。
ストレート・アヘッドなジャズピアノを弾いている姿はあまり見たことがないかもしれない。
しかしボブ・ジェームス同様、一度弾かせたらこれがなかなかのものなのだ。

ジョー・サンプルは数年前に東京ブルーノートで生のステージを観た。
その時はエレキピアノだったので少々がっかりしたが、彼が放つ雰囲気(オーラ?)はこちらにも充分伝わってきた。
ステージ上のパフォーマンスも一流で、客を喜ばせるツボを知っている人だと感じた。
今度はぜひこうしたストレート・アヘッドなピアノトリオを生で聴きたいと思っている。

彼の弾くピアノには独特のフレーズがある。
私はマイケル・フランクスのヒット曲である「アントニオの歌」での間奏が一番彼らしいフレーズだと思っている。私は未だにあのフレーズが頭から離れない。知らない人がいたらぜひ一度聴いてみてほしい。
この時のフレーズがこのアルバムの中にも時々飛び出してきて私を嬉しくさせる。
ジョー・サンプルはもともと高域の音を巧みに転がす人だが、こういったフレーズによってより親近感を覚える人なのだ。

リズム・セクションの二人がこれまたいい。
レイ・ブラウンとシェリー・マンという超大物だ。この二人に囲まれて幸せこの上なしといったサンプルの演奏が続く。
ダイレクト・カッティング録音というのも発売当時はずいぶん話題になったものだ。
味わい深い一作である。

NICK WELDON TRIO「LAVENDER'S BLUE」

2008年02月26日 | Piano/keyboard

何といっても2曲目が好きだ。「Sonora」である。
こんなに素敵な曲を書いたハンプトン・ホーズに拍手を贈りたい。
こういった切ないメロディに心が揺り動かされてしまうことが、ピアノトリオを聴く一番の喜びなのである。
しかもニック・ウェルドンのこのアルバム、全体に録音がすばらしいのだ。
特にベースの迫力はなかなかのもので、指で弾いた弦がネックに触れビリビリ震えるあたりは実にリアルである。正に痺れるとはこのことだ。クレジットを見るとそれもそのはず、エンジニアはここでベースを弾くアンドリュー・クレインデール自身が行っている。これで納得。
ドラムはピアノやベースよりもやや奥に配置されていて全体に立体感が味わえる。シンバルを叩くパシーンという鮮烈な音が全体を包み込むのも快感だ。こういう録音は大歓迎である。

このアルバムは全9曲中、7曲がピアノトリオ、5曲目の「Liffey」にはティム・ガーランドの哀愁を帯びたソプラノ・サックスが、ラストの「Lavender's Blue」ではクリスティーヌ・トービンのやや鼻にかかった歌声がいい味を出している。全体を通じて飽きさせないのはこうしたスパイスが利いているからだ。このへんの作り方も上手い。

とにかくいいメロディがたくさん詰まっているアルバムだ。
決して派手さはないものの買って損はない。
そのまんまの表現だが、淡い紫色のラベンダーをガラスに花器に入れて窓辺に飾ってある、そんなさりげなさと可憐さが感じられる作品なのだ。


HORACE SILVER 「HORACE-SCOPE」

2008年02月11日 | Piano/keyboard

ちょっと前の話になるが、知り合いのジャズバーのカウンターで酒を飲んでいたら、隣りに座った人がマスターに向かって「〈ニカの夢〉をかけてくれ」とリクエストした。
マスターは手際よくレコード棚からこのホレス・シルバーのアルバムを引き出し、ターンテーブルに乗せた。
ブルー・ミッチェルのトランペットとジュニア・クックのテナーによる生きのいいアンサンブルが店内いっぱいに流れ出した。ラテン調のとてもわかりやすいテーマだ。思わずこちらまでリズムを取りたくなる。
最初にアドリヴを吹くのはジュニア・クック。次にブルー・ミッチェル、ホレス・シルバーと続くが、それぞれの受け渡し部分がキマっている。所謂ドラマチック仕立てなのだ。これぞホレス・シルバーなのだと思う。
ホレス・シルバーのピアノも力強い。左手はまるで叩きつけているかのようだ。このノリがイコール、ハードバップを支えた原動力でありこの時代の象徴なのだ。

私はその隣りに客に「この曲をよくリクエストするんですか」と聞いた。
するとその彼は「ええ、ジャズはそんなに詳しくないんですけど、この〈ニカの夢〉は大好きでね、よくかけてもらうんです」と目を細めていった。
正直言って私はホレス・シルバーの曲ならもっと他にもいい曲があるのに、と心の中で思ったが黙っていた。
彼はスコッチをグイと飲み干して、「まず〈ニカの夢〉っていうタイトルがいいですよね」と切り返してきた。
いわれてみれば確かにそうだ。何だか思わせぶりなタイトルでそこから哀愁が漂ってくる。
「そうですね、何だか絵の題名みたいですね」というと、
「絵ですか、それはいい」とご満悦の表情をした。
その後、曲が終わるまでは一言も話さずに彼はただじっとこの〈ニカの夢〉に聴き入っていた。
私はその彼の横顔を見ていて「大好きな曲が一曲あるということは幸せなものだな」と思った。



HERBIE HANCOCK 「SPEAK LIKE A CHILD」

2008年02月03日 | Piano/keyboard

美しいジャケットだ。これだけでも買う価値は十二分にある。
「SPEAK LIKE A CHILD」というタイトルもいい。誰だって聴いてみたくなるはずだ。

ハービー・ハンコックはジャズを聴かない人にも知られているビッグネームである。
但しマイルスクインテットに在籍していた頃はそこそこに理解できたが、最近は何をしたいのかよくわからない。まぁマイルスに影響されてか色んなことに手を出すから始末が悪い。
どちらかというとチック・コリアも同じような傾向にあるが、チック・コリアの場合は何をやってもどこかスパニッシュっほい味付けがなされているからハンコックよりわかりやすい。
しかしハンコックのこのアルバムはストレートだ。同じ年に発売されたチック・コリアの「Now He Sings, Now He Sobs」と並んで、この時期の傑作である。

まずハンコックのピアノが美しい。透明感があるといってもいい。
有名なタイトル曲は言うに及ばず、重厚なホーン・セクションとの対比が実に上手くアレンジされている。個人的にハンコックの純粋なジャズピアノを聴きたければこのアルバムがイチオシだ。
それと特筆すべきは強靱なロン・カーターのベースと、鮮烈なミッキー・ロッカーのシンバルワークである。この二人によって全体がガチッと支えられており、こうしたリズム・セクションの重要性を改めて思い知らされる。
録音はややこもりがちで、小さな音ではこのアルバムの良さが引き出せない。ここは思い切ってボリュームを上げてみよう。たったそれだけのことでこれまでのイメージをきれいに払拭できる。
よくよく考えてみれば、全く違った音がそこに生まれるなんて実に不思議なことだ。
オーディオマニアの気持ちがわかる一枚である。



ERROLL GARNER 「CONCERT BY THE SEA」

2008年01月21日 | Piano/keyboard

このアルバムは学生だった頃から聴いているから、優に30年を超える愛聴盤だ。
ジャズファンならほとんどの人が知っている有名盤である。
まず「コンサート・バイ・ザ・シー」というアルバムタイトルがいい。何だかとても覚えやすいのだ。
それとこのジャケットだ。最初見たときは「ふ~ん、こんな写真もジャケットになるんだ」と思ったことをぼんやり覚えている。女性のポーズがいかにも50年代のアメリカ的ではあるが、こんな海岸なら私のまちの近くにもある。このギャップにちょっとした違和感を感じたのだと思う。
そして何をさておきエロール・ガーナーの底抜けにハッピーな演奏だ。観客を1曲目からグイグイと自分の世界に引き込んでいく。彼のピアノからは何かオーラが出ているみたいだ。
彼の演奏を演芸ジャズとか称して低く見ている輩も多いようだが、ジャズそのものが大衆音楽だと割り切ると、彼こそジャズの神髄に思えてくるのである。

エロール・ガーナーは4曲目に「枯葉」を取り上げ演奏している。
このコンサートは1955年の時の録音だから、マイルスが取り上げる3年も前のことになる。多くのジャズメンがこの曲を取り上げているが、ここでの演奏も名演の一つに挙げられるはずだ。実にダイナミックで見事な曲の解釈である。これを聴いて誰が品のない演芸ジャズというのだろうか。
このアルバムはライヴ盤だから当然のことのように後半になればなるほど熱気が帯びてくる。
観客も演奏者もノリノリ状態だ。会場全体が溢れんばかりの笑顔に包まれていることが手に取るようにわかる。充実感で満たされているのだ。これがエンターティナーとしてのガーナーの力量だろう。

私は彼のピアノタッチが大好きだ。
普通の人より椅子を高めにセッティングし、かなり上の角度から優しく転がるように鍵盤を弾く。
彼の目線はいつもその鍵盤でなく周囲に注がれている。しかも満面の笑みを浮かべていかにも楽しそうに弾くのだ。
この大らかさと人なつっこさが彼最大の魅力なのである。


THE MARTY PAICH QUARTET「featuring ART PEPPER」

2008年01月13日 | Piano/keyboard

針を落としてすぐにわかるアート・ペッパーのアルト。
まるで目の前で吹いているかのようなリアル感がここでも発揮されている。生々しさと天才的なアドリヴ表現においては右に出るものがない。
この作品はアート・ペッパーのリーダーアルバムではないけれども、彼の代表作として位置づけてもいい傑作だ。
有名なのは2曲目の「You and the Night and the Music」かもしれないが、私は5曲目の「Over the Rainbow」がお気に入りである。わざと短いフレーズに区切って表現する彼独特のフレーズに痺れてしまう。

リーダーはご存じマーティ・ペイチ。
アート・ペッパーとは旧友で数多くの共演盤がある。彼はピアニストであるが優秀な作・編曲家として有名だ。特に編曲の妙技は特筆すべきものがあり、以前ご紹介したメル・トーメの「SWINGS SHUBERT ALLEY」や自身の「踊り子」など、大編成のアレンジにも長けている。
ペッパーの天才肌とは少々意味が違うが、彼もまた与えられた天性を見事に開花させているジャズメンなのである。
但しこのアルバムはカルテット形式だから、編曲もさることながらどちらかというと演奏そのものに力を入れているように聞こえる。
よく聴いてみると、ペイチのピアノは実に柔らかく暖かい音を奏でている。まるで全てを包み込むかのようだ。
そんな彼のピアノに後押しされてペッパーが伸び伸びと吹奏している様が見てとれる。この関係が実にすばらしい。

ペイチと聞くと、とてもクールで知的なイメージを抱いてしまう。
どちらかというといつもは主役ではなく、舞台裏の演出家といった感が強いからだ。
私はそんな彼に憧れている。そんな生き方がしたいのだ。


JOHAN CLEMENT 「ON REQUEST」

2008年01月07日 | Piano/keyboard

昨年暮れにオスカー・ピーターソンが亡くなった。
何だかんだいっても私は彼が大好きだった。あの巨体に溢れんばかりの笑顔、ダイナミックでハッピーでスインギーな演奏、彼こそキング・オブ・モダンジャズだった。

ヨハン・クレメントによるオスカー・ピーターソン曲集ともいえるこのアルバムは一昨年(2006年)に発売されたものだ。当然だがこの時ピーターソンは健在だった。しかし皮肉にも今となっては追悼アルバムのように聞こえてしまう。それくらいこのアルバムを聴くと、ヨハン・クレメントがオスカー・ピーターソンに寄せる思いの深さを感じるのである。

それはともかくこのヨハン・クレメントという人、なかなか器用な人だ。
普通オスカー・ピーターソンの曲を演奏すると、どうしても本人の超絶技巧と比べられてしまい萎縮してしまいそうだが、彼の場合そんなことは微塵も感じさせない。まるでピーターソン本人が弾いているように指さばきもスムースだし歌心もある。
但しピーターソン独特の節回しはクレメント流に昇華されていて微妙に表現方法が違う。うまくいえないが、このアルバムはオスカー・ピーターソンの現代版サウンドとでもいった方がいいのかもしれない。そういえばエリック・ティンマーマンというベーシストもどことなくレイ・ブラウンを意識しているように聞こえる。
アルバム全体を通して聴くと、スピード感溢れる曲もいい出来なのだが、4曲目の「When Summer Comes」や8曲目の「Noreen's Nocturne」で思わずジ~ンときてしまう。こういう表現がヨハン・クレメントの真骨頂なのかもしれない。

現代の正統派ピアノトリオを聴きたい人に強くお薦めする。
決して買って損はないアルバムだ。
ついでにジャケットデザインもこれくらいのシンプルさがお気に入りだ。

STEVE KUHN TRIO「Life's Magic」

2007年12月13日 | Piano/keyboard

しばらく留守にしていた。
出かけていたのは東北。既に雪景色だった。
外は寒いのだけれども出会う人はみんな温かい人たちばかりで、それが何より嬉しかった。

さて今日ご紹介するのはスティーヴ・キューンの「Life's Magic」である。
これはあの寺島靖国さんも絶賛していたアルバムだ。
1986年3月、ニューヨークはヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音である。メンバーはスティーヴ・キューンの他、ベースにロン・カーター、ドラムスはアル・フォスターといった布陣だ。いわゆる安定感のある実力派トリオといえる。
録音も各楽器の特性を上手く捉えていてバランスがいい。
こういうアルバムを聴くと、「やはりピアノトリオが最高だなぁ~」なんて思ってしまう。

寺島さんが特に絶賛していたのはこの作品の6曲目、「Mr. Calypso Kuhn」だった。
アル・フォスターのドラムスが大活躍するこの曲はスティーヴ・キューンのオリジナルで、海から南風が吹いてきそうな躍動感溢れる曲だ。
アル・フォスターは冒頭からドラムでソロをとる。まるでメロディを歌い上げるかのような見事な演奏だ。

考えてみればジャズのライヴに行くと必ず出てくるのがこのドラムソロだ。
ピアニストもベーシストもソロをとるのだから、ドラマーにもソロをとらせてあげねばなるまい、といった感じでこういうドラムソロが挿入される。これはジャズに限らずロックの世界でも同じ事だ。
しかし下手なドラマーに限ってドラムソロがやたらと長い。「もういいよ」とか思ってもなかなかやめてくれない。どうかすると他のメンバーはその間ステージから消えてしまうことも多い。きっとステージの影で一服しているのだろう。こっちもやれやれだ。
そういう下手なドラマーは、ぜひともここでのアル・フォスターを見習ってほしい。
彼は闇雲に叩いたりはしない。スティックがまるでシンバルやスネアに吸い付くように狙いをつけて叩くのだ。
正にこれこそ名人芸、文句なし。


ALAN BROADBENT 「'ROUND MIDNIGHT」

2007年12月02日 | Piano/keyboard

アラン・ブロードベント、ニュージーランドのピアニストである。
この人のアルバムを全部聴いたわけではないが、どれを買ってもあまり外れはないと思っている。彼はそれくらい安定感のある作品をつくる優れたジャズメンだ。洗練された雰囲気、卓越した技術とそつのなさは聴く者を圧倒する。

彼のピアノはとにかく「キレ」がいい。
ぼやけたところがなく、音が明快なのだ。これが洗練された雰囲気を作り出す原因だ。
演奏内容は肩肘張ったものではなく、ポピュラーなスタンダード曲を彼ならではの情感で弾きこなしている。但しどの一曲たりとも手を抜いた演奏はなく、それなりの緊張感を持って取り組んでいる姿が伺える。この緊張感はビル・エヴァンス・トリオにも通ずるものである。
最近パートナーを組んでいるブライアン・ブロンバーグは、正にスコット・ラファロのような存在感あるベースを弾く人だ。彼がいることで、よりインタープレイの緊張感が増幅されていく。曲によってはどちらが主役かわからなくなるほどだ。
ドラムスは最晩年のビル・エヴァンス・トリオの一角を成していたジョー・ラバーベラ。決して自己主張が目立つドラマーではないが、この人のドラミングには品がある。とりわけブラシとスティックの使い分けが上手い。
この3人ががっぷり四つに組んでそれぞれの曲を料理している。

印象に残る曲は何といってもタイトル曲である。
この「'ROUND MIDNIGHT」はモンクのつくった名曲であるが、あまりに馴染んでしまったメロディであるために最近は少々食傷気味であった。しかしここでの演奏はドラマチックで飽きさせない。
ブロードベントの流れるようなアドリヴの妙技、よく歌うブロンバーグのベース、タイム感覚の優れたラバーベラ。
ピアノトリオの傑作がここにまた生まれた。ぜひ聴いてほしい。



AL HAIG 「JAZZ WILL-O-THE WISP」

2007年11月21日 | Piano/keyboard

優れたピアニストはその一人ひとりに強い個性があるものだ。何度か聴いているとその特徴が掴めるようになる。
アル・ヘイグはアドリヴの途中に歌心溢れた素早い装飾音を入れ、全体に煌びやかで優雅なピアノに仕立て上げる。
素早い装飾音といってもアート・テイタムのような切れ込む感じのフレーズではない。常に角を丸くしていくような弾き方なのだ。それによって品格が生まれる。この品格を楽しむのがアル・ヘイグの上手な聴き方なのだと思っている。

ジャズを聴き始めた頃は1950年代前半より前の録音盤は敬遠していたところがあった。
単純に音の悪いレコードは聴きたくなかったのだ。曲想を古いと感じていたこともその原因だったかもしれない。
しかし最近は好んで聴くようになった(もちろん限界はあるが)。
音の悪さがあまり気にならなくなってきたということなのだ。加えて曲想も古いとは感じなくなってきた。
なぜだろう。自分でもよくわからない。
最近のジャズが嫌いになったわけではない。新譜もできるだけチェックするようにしているし、新人の登場にも心がときめく。
そういえばビル・チャーラップが登場した時、このアル・ヘイグにずいぶん似ているなと感じたことがある。
チャーラップの弾くスタンダード曲からは古き良き時代の匂いがした。スタンダード曲はもともと古いのだから当たり前じゃないかといわれるかもしれないが、彼の弾き方は若いのにどことなく古風で優雅なのである。
そこではたと思いついた。チャーラップはアル・ヘイグの品格あるピアノに憧れていたのではないだろうかということだ。これはもちろん私の勝手な推測だ。しかしあのための効いた弾き方にはオーバーラップする部分が多いのである。
事実この「JAZZ WILL-O-THE WISP」と同日録音の「AL HAIG TRIO」に収録されている「ス・ワンダフル」のテーマ部分なんかは、チャーラップの出世作である同名のアルバムの曲と曲想がよく似ている。どちらも名演奏だと思う。

心ときめく新人であることの要素は、こうした往年の名プレイヤーの良さをいかにスマートに引き継いでいるかにある。
アル・ヘイグに限らず、往年の名プレイヤーからはまだまだ吸収できる要素がたくさん残っているように思う。だから古い時代の演奏にも新鮮さを感じるようになったのかもしれない。
本物はいつになっても古びないということだ。