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迷狂私酔の日々(再)

明鏡止水とはあまりに遠いこの日々。

【バンコク弾丸日記】06・チャイナタウンの夕暮れ

2012年03月08日 | 旅する。

3月8日 木曜日 バンコク

【冒険の終わり】

同じ道を戻って船着き場に着くと、店頭に猫がいた。

桟橋でのんびりと船を待つ。

船が着き、「クローン・トゥーイ?」と聞くと店番のおばさんも船頭も頷くので乗るが、まっすぐ向こう岸には船は渡らず、同じ岸のより西側の桟橋に寄っていく。

少女は小さな買い物の袋を抱えていた。夕食のおかずかもしれない。船は次にクローン・トゥーイに停まった。桟橋を通るときに前の乗客にならって5THB払っておく。さっきと同じ婆さんだった。

今日の冒険はどうやら終わったようだ。

通りに戻る。モーターサイがたまっていて、客待ちをしている。バス停にも大勢の人。さて、どうしようか。MRTの駅まで歩いて戻るか。やや疲れてはいるが。

とりあえず歩きはじめて交差点で左折し、夕日を見ていたら気持ちが変わった。タクシーを停めてフアラムポーン駅まで行ってもらう。

【チャイナタウンへ】

夕日がどんどん沈んでいく。フアラムポーン国鉄駅前で渋滞したが、こんなことでやきもきしていたらバンコクでは暮らせない。ドライバーはわざわざ駅構内までクルマを回してくれた。駅に用事があるわけではないのだが。メーターは81THBだったが100THB札に20THBのお釣り。80THBは1バーツ=2.8円で換算すると224円。

駅から中華街へ歩くのが実は難関だった。工事中で歩道を大きく迂回させられ、夕方の激しい渋滞で横断に手間取り、小さなソイに迷い込んでいるうちに日が暮れた。

昨日は夜だったので、明るいうちにチャイナタウンを見たかったのだが、今日もすでに暗い。小さめのバックパックを買えたらいいな、とも思っていたが、そんな気分になる前に場末の生活感に圧倒される。

適当に歩いていたら、ロータリーになっている広場に出た。ここの一角に旧ジュライホテルが建っている。

疲れたのでホテルに戻ることにする。通りには街娼が出ていて、座って笑顔で客引きをしている。

MRTフアラムポーンからシーロム駅まで18THB。高架歩道を歩いてBTSサラディーン駅から25THBでクロン・トンブリー駅。ホテルの隣のV.SHOPで飲み物を買う。フロントの若いコは何も言わないうちに1207のキーを差し出してくれた。笑顔がカワイイ。

どうやらカラダは脱水症状寸前だったようで、シャワーを浴びて水分を取って一息つく。

 

【ただの散歩】

21時過ぎ、MRTでひと駅だけ乗ってサパーンタクシン駅で下車。駅の真下にある埠頭に行ってみた。対岸への渡し船はあるようだが、この時間帯ではお客さんはいない。

ニューロードを北へ歩く。屋台が群れをなし、ホテル・シャングリラなどからの観光客の波が歩道を埋めている。ロビンソン脇にはバザールが広がり、マッサージの看板、屋台、そしてまた屋台。観光客慣れしているようで、英語の看板も多い。

ツーリストのためにローカルのディープ感をわざわざ装っている気配に食欲をそがれて、ひたすら歩き回る。適当に路地に迷い込んで戻ったり、右折してステイトタワー近くで「タクシー?マッサージ?レディー?」と数人の客引きに囲まれたり。

シーロム・ロードを回って、オフィス街でもある一帯を一周する。BTS高架下の大通りではサイレンを鳴らして飛ばすバンコク風暴走族が走っていた。ピックアップトラックの荷台に数人が立って回りを煽るのがバンコク流らしい。

またニューロードを北上したが、すでに屋台はほとんど店じまいにかかっていた。(失敗したな)と思う。何だかただの散歩だ。いや、ただの散歩をしに外出したのだ。

〈セブンイレブン〉で弁当らしきものを二つ買い、温めてもらう。豚煮めし35THB、オムレツ(海老入り)&ライス35THB。ホテルに戻って夕食にし、コーヒーを淹れる。

部屋の窓から、きれいな夜景が見えた。

 


【バンコク弾丸日記】05・川の向こうのもうひとつの世界

2012年03月08日 | 旅する。

3月8日 木曜日 バンコク

【カオソーイ】

BTSでサラディーン駅へ、シーロム駅からMRTでクローン・トゥーイ駅まで。降りてからは東南に向かって歩く。店の前に洪水対策かコンクリートの低い堤が作られていた。

歩道橋には寝ている男がいる。このあたりはまったく観光地ではない上に、こんな暑い真昼に歩くバカはそうそういない。

情報によれば、この先に本場チェンマイのカオソーイを食べられる店ができたそうだ。おおよその位置と番地しかわからない店を探すのは実に楽しい。そして番地ならここのはず、という辺りまでたどり着いたがタイ文字しかないのでよくわからない。右往左往していたら、おばさんが笑って「ここだよ、ここ」と店に連れ込まれた。

「カオソーイ?」と尋ねる。

相変わらずおばさんはニコニコしていて、チキンかポークか? と聞かれた。チキンを選んでしばらく待つ。飲み物は「チャン!」、いちばん安いビールにした。ちなみにいちばん高いのはハイネケン、ついでシンハ、レオ、チャンの順になる。

長い散歩で汗をかいた後のビールはうまい。久しぶりのチェンマイ風カオソーイもうまい。中途半端な昼下がりに、客足の引いた店で通りを眺めながらゆっくりする。ビールとカオソーイを合わせて110THB(308円)。

【バーン・カチャウへ】

港へと向かう。このあたりには税関や港湾局があり、今も物流拠点になっているようだ。港の回りをぐるぐる歩いていたら、屋台が連なる路地を見つけたので入ってみると、寺院に出た。

路地の奥が船着き場につながっていた。窓口のおばさんに5THB渡したらおつりは返ってこなかった。渡し賃の相場は3THBのはずだが、ここが高いのか、値上がりしたのか? 船に乗って出発を待つ間に蛇行するチャオプラヤー川を撮影する。

霞の向こうにそびえる高層ビル、すぐ対岸には対照的にシンプルな(粗末とはいわないでおこう)家屋の群れ。乗客が増えて、船は岸を離れた。

対岸に着いても乗客は全員降りなかった。単純な渡しではなく、いくつかの船着き場を巡るらしい。

 

【かくも美しい世界】

ここがバーン・カチャウか。

桟橋から歩く。湿地帯の中に一本だけ舗装路が通じている。道のそばに花が咲き、竹や椰子の木が空を区切っている。傍らを運河が縦横に走り、ツアー用ボートが転がっていた。 

「世界はこんなに美しいのに、どうして今まで気づかなかったんだろう?」

何でもない日常が、とてつもなく壮麗に見えた。視界から常識のフィルターが外れて、違う景色が映っているみたいだ。

日が暮れかけている。涼しくなる気配。一日の終わり。道の向こうに日が落ちる。家路を急ぐ人々。いつもと同じような一日、しかし決して同じではない一日。

 


【バンコク弾丸日記】04・折りたたみ市場で危機一髪

2012年03月08日 | 旅する。

3月8日 木曜日 バンコク

【バーンレム】

マハーチャイからバーンレムへの渡し船には人は立ったまま、オートバイにはまたがったまま乗っていく。船というより、浮き橋というか筏というか。

渡し賃は3THB(8.4円)、シャトルサービスのように対岸からの渡し船と途中ですれ違って川を渡る。

船着き場からつづく薄暗いアーケードの先にサムローやモーターサイがたまっていた。右の道をとり、学校と寺の間を抜けたら線路が見えた。放し飼いの鶏がいて、右奥には車両が放置されている。

駅の場所を確認したので、バーンレムを探検すべく中心部のロータリーに向かうが、この時点で9時50分。発車予定時刻は10時10分なので、あと20分しかない。バーンレムを散歩するには時間がなさ過ぎた。

途中すれ違った日本人旅行者に駅の位置を教え、ロータリーから船着き場へと歩く。時間の余裕がなくなってきて、駅までモーターサイに乗ろうと声をかけたら「駅はあっち! 歩け!」と乗車拒否された。

結局、駅には発車時刻の数分前には着いて窓口で切符も買えたが、メークロン行きは遅れていた。列車を待つあいだ、先ほど道を教えた日本人旅行者を会話を交わす。やはり、鉄道マニアだった。

プラットフォームで世間話をする老女たちの回りでは、時間がゆっくりと流れている。

 

【メークロンへ】

やがて列車はゆっくりやって来て、乗客を乗せてメークロンへと折り返す。

鉄道マニア氏と車中でも話したのだが、メンテナンスのレベルとか、不採算路線の切り捨てとか、日本のやり方が必ずしもベストではない、ということで意見が合う。

列車は水田あるいは湿地帯の中を走る。マングローブがあるということは汽水域かもしれない。

終点のメークロンに近づき、「折りたたみ市場は車両のどちら側か?」という話題になったが、マハーチャイの経験でいっても、テレビで見た記憶からいっても両側に展開するはずである。

そして、まだそれほど減速しないうちから両脇にたたんだ日よけとポールとそれを支える人(!)、そしてこの列車を撮影しようと待ち構える人たちが点滅するように見え隠れしはじめた。

 

【観光名所としての「折りたたみ市場」】

11時25分過ぎ、メークロン駅に着いた。今までののどかな風景が嘘のようにカメラを抱えた観光客が群れている。「折りたたみ市場」は観光名所となり、団体ツアーの目的地になっているようだった。

駅から歩いて線路をたどると、もはや鉄道と市場は一体化していた。

どこまで歩いても市場も人波も途切れない。

いつのまにか警笛が鳴って、市場が折りたたまれはじめていた。列車が駅を出たようだ。撮影ポイントを探して戻るが、撮影どころか、列車を避ける空間も見当たらない。

叫び声が聞こえる。たぶん、私に「危ない!」と警告しているのだと思う。緩いカーブを曲がって先頭車両が迫ってきた。

近くの男が指さしたところに入って、列車をよける。待避所というよりもただの隙間だ。

一瞬の緊張のあと、列車は走り去り、市場はまた日よけを出して営業を始めた。

 

【バンコクに帰る】

駅に戻り、中心部らしき街路にたくさんのソンテウが止まっているあたりで、これからどうしようか思案する。

近くの水上市場は週末しか開かない。いったんバンコクに戻って、もっとひなびたところに行ってみようか。

ミニバス(ロットゥー)を適当に当たって「バイ・バンコック?」(バンコクに行きますか?)と聞いてみたら、このワゴン車を指さした。すでに何人か乗っているので、それほど待たないだろう。

20分も待たずにほぼ満員になって出発。運賃は50THB(140円)だった。情報よりも安い。しかもわずか50分足らずでどこかに着いた。さて、問題はここはバンコクのどこか? ということである。

とりあえず、ロットゥーが走った進行方向の先へと歩いてみる。見える風景、たまに読める地名、どれも記憶に引っかからない。

やっと大通りで進行方向の標識に「ウォンウェインヤイ」を見つけた。タクシーを捕まえて「クロン・トンブリー、サタニー・ロッド・ファイ!(電気鉄道駅のクロン・トンブリーまで!)」と言ってみる。ドライバーは頷いたが、どうやら「鉄道駅」しか分かっていなかったことが降りてからわかった。メーターで55THB(154円)。 

着いたBTSの駅はクロン・トンブリーではなくウォンウェインヤイ駅だった。駅に上ってみるまで分からなかったのは不覚。しょうがないのでひと駅だけBTSに乗ってホテルに帰る。

 


【バンコク弾丸日記】03・ローカル線に乗って

2012年03月08日 | 旅する。

3月8日 木曜日 バンコク

【道は楕円形】

ホテルを出て楕円形にカーブする道なりに歩いていたら、いつのまにか逆方向に向かっていた。どうやら道は180度曲がって半円になっているらしい。戻って正しい方向、西へと向かう。

BTSクロン・トンブリー駅からウォンウェインヤイ駅にかけては早朝から通勤客のために屋台が店開きしていた。

心惹かれたが、今朝は列車に乗らなければならない。

大きな交差点を右折したら、歩道が市場になっていた。右手、東側に本当の市場があって、その周辺にさらに店ができて市場が増殖したようだ。これにも心惹かれるのだが、今朝は急ぐ。

まっすぐ北上すると中央にタクシン王の騎馬像が建つロータリーに出た。歩道橋に上がって慌ただしいバンコクの朝を眺める。

 

【街に埋もれた駅】

歩道橋を渡って反対側の道を少し戻ると、ソンテウがいくつか止まり、店が並んだ奥に線路とプラットフォームが見えた。国鉄ウォンウェインヤイ駅だ。

バンコクに限らず、アジアの都市で交通機関を見つけるには看板を探すのではなく、人の流れを見る方がいい。ソンテウやモーターサイがいたら、そこに人が集まるところがある。市場、寺院、駅、船着き場、などなど。

時刻表によれば7時40分発の列車がある。発車10分前にならないと開かないという窓口が開いていた。

「マハーチャイ!」と終点の駅名を言う。10THB(28円)で買えた切符はカタカタとプリンターから吐き出されたコンピューター発券だった。

警笛が聞こえ、線路の向こうに列車が見えた。視界のなかの列車はなかなか大きくならない。かなり手前から減速しているようだ。列車が目前まで迫った線路を中学生くらいの子たちは平気で渡ってホームに上がる。

 

【田園列車】

やってきた列車は月並みな表現なら「鈴なり」、屋根の上にこそ人は乗っていないが、ひなびた車両に似合わず激しく込み合っていた。東京の通勤ラッシュを思い出した。

これから乗るのは逆方向だからか、空席がほとんどだ。硬い座席に座り、窓から外を眺めようとしたところで、顔と手を引っ込めた。列車の外ギリギリに店や家や木がたっている。危なくてカメラもうかうか構えられない。

やがて絵に描いたような田園地帯を走る。「のどか」という言葉では伝えきれない、時間の流れ。

zzz...

いつの間にか夢を見ていたらしい。検札が来て、目が覚めた。切符にハサミが入った。夢の中では少年が目を輝かせて「世界が止まって、キラキラが降りてくるんだよ!」と笑っていた。

 

【マハーチャイ駅】

終点マハーチャイの手前で視界の下に「折りたたみ市場」らしきものが見えた。その後、窓枠いっぱいに市場の建物の内部風景が広がった。

マハーチャイ駅の北側、線路に接して常設の市場が建っていた。列車が運行するたびに折りたたむ市場ではなく、常時営業する市場である(こちらが当たり前だが)。当たり前でないのは列車との近さで、降りたら一歩半で市場だ。駅ナカにもほどがある。少しこの市場の中を歩いてみた。肉、魚、野菜、香辛料。独特の匂いが鼻を衝く。

市場の建物を抜けて、線路を戻ってみた。駅から東へと伸びている線路の上に、もうひとつの自由な市場、いわゆる「折りたたみ市場」が広がっていた。

レールの上に野菜が乗り、客は線路を歩いて品定めをしている。

港町なので、魚も海老もいる。

別の道から駅方面へ戻る途中に中心部とおぼしきロータリーがあり、周辺にいくつか屋台が出ていた。

角の屋台でガパオらしきものを出していたので、食べてみる。目玉焼き(カイ・ダオ)をつけてもらうのを忘れた。

辛さで、汗が吹き出る。フーフー言っていたら、店の人と目が合った。思わず笑ったら、笑い返してくれた。30THB(84円)。

そのとなりの店で水のボトルを買う。ホテルから持ってくるのを忘れてしまったのだ。7THB(19.6円)、よく冷えていて、コンビニとまったく同じ値段。当たり前のことが、アジアではありがたい。

 

【市場を「折りたたむ」】

踏切のない線路を渡り、駅に戻る。9時30分ころ、線路に広がった「折りたたみ市場」がたたまれ始めた。列車が到着するらしい。慌てることもなく、野菜や魚が列車ギリギリに引っ込められた。

列車が通過した途端にまた店が再開した。鉄道と市場の共存というより、市場が増殖する原理と圧力によって、鉄道が浸食されているという方が近いだろうか。 

さあ、次のローカル線に向かうとしようか。

マハーチャイ駅から西南へ向かうと、港があった。対岸がバーンレムだ。