ぼくのほんだな

フワフワした僕が本を中心にスキな話題だけを勝手気ままにお届けします。

ぼくのほんだな212・・映画「ラ・パロマ」 ダニエル・シュミット

2016年07月07日 | 映画・クルマ
いきなりですが、僕のすきな映画「ラ・パロマ」は「今宵かぎりは・・」(1972)に続くダニエル・シュミット監督の二作目の映画です。
こんな感じ。


パンフレット

映画「ラ・パロマ」 ダニエル・シュミット La Paloma Daniel Schmid 1974年 スイス・仏 110分

監督 ダニエル・シュミット
脚本 ダニエル・シュミット
音楽 ゴットフリード・ヒュンベルグ
出演 イングリット・カーフェン
ペーター・カーン
ペーター・シャテル
ビュル・オジエ

ダニエル・シュミット監督の略歴:
1941年12月26日、スイス生まれ。
生家は大きな城館のホテル。高校時代に映画狂となり、またオペラやコンサートにも熱中。
66年、ファスビンダーと知り合い、67年から69年まで映画TVアカデミーに在籍。
71年、ファスビンダーとその妻カーフェンと共にタンゴ・フィルム設立。
72年、生家で初長編『今宵かぎりは…』を撮り、以後、耽美的な作風の映画監督として注目される。
84年の「青ひげ」以後、オペラ演出も手がける。    - Wikipediaよりー
                          
作品:
「今宵かぎりは…」1972 「ラ・パロマ」1974 「天使の影」1976 「ヴィオランタ」1977 「カンヌ映画通り」1981 「ヘカテ」1982
「トスカの接吻」1984 「デ・ジャ・ヴュ」1987 「季節のはざまで」1992 「書かれた顔」1995 など・・・

何だかよくわからない人にはわからないと思います。 いきなりですし。
じゃあ、まずストーリーからかな?・・・
「高級キャバレーの歌姫ラ・パロマと、彼女の夫となった富豪の息子、そして彼の友人の関係を描く退廃的でオペラティックなメロドラマで・・・」 おっと、ストーリーを追ったところでこの映画の魅力は伝わらないと思います。 この映画はまるで夢を見るようなつくりになってますからね。 ストーリーのある夢なんてねぇ。 なのでストーリーは省略します。

僕の注目は歌です。
高級キャバレーの歌姫ラ・パロマを演じるイングリット・カーフェンが歌う『上海』。


『上海』を歌う歌姫ラ・パロマ (イングリット・カーフェン)

これがもう素晴らしいのひと言!! まるで「どお、このかったるさ、誰よりもあなたに感じてほしいわ。」って歌っているようです。
この独特の饐(す)えたような甘酸っぱい感覚は幻想的で、耽美的で、退廃的で、蠱惑的で、なんて言葉を並べていると、すり抜けてしまいそうです。
そお、どんな感覚かってゆ~とね・・・、
甘美なんだけど冷たくて危険な毒が細いほそい注射針をツーッと流れぬけて、痛くない痛くないって暗示をかけながら、しずかに震えるように、脳髄の奥深くへジュワ~っと浸透していって、シビレる~っ、ああ、きもちィィ! いつまでもこのままで放っといて~って感じでしょうか。 (よくわからない。)

そうですか、じゃあ、上等のコーヒーを100杯くらいイッキ飲みしたらおもいっきりカフェインにどやされて、天上の世界にもってかれちゃったって感じかなあ? (もっとわからない。) わからないかあ。ああ、もう僕もわからない! でも、みじかい歌なんだけど、さすが名まえどおりにカフェインがきつく効いてますね。 (カーフェンです!!)
この歌を聴いていると、遊ぶことに疲れきった繊細なぼくの脳髄が、ぼたっと潤ってきて、 聴いているすこしの間だけれど、すべてを忘れ、ひたすらボ~ッとできるのです。 (じゃ、いつもどおり。)
あと、このシーンはカーフェンの背中の美しさにも ドキドキ!

そして『上海』の歌だけではありません。 やがて山上で歌う場面が現われます。


山頂のデュエット

結婚して幸せの絶頂にいるふたりがアルプス山頂をバックにオペラの「アリア」をデュエットするシーン。これはもうエクスタシー (you see?)そのものです。 映像と音楽がピタッとよく合っていて見事です。 背景の山頂の雲と一緒に漂う、ただならぬ人物の映像はなんともかんとも、たとえようがありません。この情景を見てしまったら、貴方はキッとうなされ・・いや、流れるオペラの「アリア」とともに決して忘れることはないでしょう。 ダニエル・シュミットならではの、ダニエル・シュミットしか表現できない、ダニエル・シュミットらしい名シーンでしょう。
はたして、これほどに美しいシーンが かつてあったでしょうか!? (は~い!『フェリーニのアマルコルド』でありました。) んっ・・・・・・、ありますよね。
まさに映像と音楽で想像する「映画」の持っている魔力の一面を見せ付けられたような気がします。

僕の気に入った歌の話だけだったけど、これだけではありません。 この「ラ・パロマ」には他にたくさん息を呑んだまま吐くのをわすれさせるシュミット・マジックがギュッと詰め込まれているんです。 宝の箱、開けたら何がとびだすやら。 もしこのような映画が創られなかったら『映画』はどんどん痩せていっちゃう気がします。 たやすくは観られないようだけど。 ぜひ!


   
左)【DVD】ラ・パロマ110分\5,076(税込)発売元:IMAGICA販売元:パイオニアLDC 2001/02/23発売 
右)【VHS】ラ・パロマ110分\14,308(税込)販売元:SONY
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