徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

ちょっと気になる Pratt & Whitney PW4000 シリーズ

 今年になって、米国 Pratt & Whitney 社のエンジンを搭載した Boeing777 のエンジン・トラブルがちょっと多い気がします。

Boeing777 は最新鋭の双発機です。ETOPS180 や ETOPS207 の認定を受けた機体も多く、双発でありながら遠距離洋上飛行などを伴う路線にも投入できることから、省エネで経済的でもあります。
が、双発機では片側のエンジンが停止すれば、それは EMERGENCY であることも忘れてはなりません。

我が国では、全日空、日本航空が Pratt & Whitney の PW4000 シリーズを搭載した Boeing777 を運航していますが、ここ半年でかなりの確率でトラブルが発生しています。

-6月8日 JAL1900 OKAHND JA8942/Boeing777-300 PW4090
 No.1 Engine EGT (Exhaust Gas Temperature) が上昇、OKA へ ATB 。
 Bleed Air Valve が溶接部で破断していたのが原因
 (Valve の溶接不良~熱応力による亀裂~破断、と推定される)
 ※Bleed Air leak によりエンジン出力が低下、それを補うべく Fuel Flow が増加し、結果 EGT も上昇、許容値を超えた。

6月21日 JAL1935 HNDOKA JA8941/Boeing777-300 PW4090
 No.1 Engine EGT が上昇するとともに stall 音発生、No.1 Engine を shutdown し KIX へ Divert 。
 Engine Oil 残量 0 が表示される
 High Pressure Turbine ケースが破損とともにエンジン内部にも損傷が確認された
 (High Pressure Turbine blade の破損、または Turbine Air Seal の破損が原因と推定される)

-8月14日 JAL3042 SPKNRT JA010D/Boeing777-200 PW4074
 NRT 着陸後 taxi 中にエンジンオイル残量低下の表示
 No.1 Engine Oil Quantity 0 ... No.1 Engine を shutdown し Spot-in
 ボアスコープ検査で High Pressure Turbine 2段目の blade が2枚欠損していることと、Turbine blade cooling 孔内部の硫化腐食を発見
 オイル流失はエンジン内部のオイルチューブ亀裂からの漏れと判明
 Blade 欠損については調査中

9月28日 ANA243 HNDFUK JA????/boeing777-300 PW4090
 HND 離陸後 No.1 Engine エンジンオイル残量低下の表示
 No.1 Engine を shutdown し HND へ ATB
 HND 到着後 No.1 Engine Oil Quantity loss を確認
 原因については調査中

-10月29日 ANA628 KOJHND JA????/boeing777-200 PW4074
 高知沖 FL350 で No.1 Engine vibration
 No.1 Engine を shutdown し ITM へ Divert
 ITM 到着後 No.1 Engine Tail Cone 脱落を確認
 原因については調査中

と、今回も含め5件のトラブルの情報が得られています。
Boeing777 の導入が進み、飛行回数も増えているので、確率的にはトラブルに遭遇する件数も増えて目に付くだけで、考えすぎなのかもしれません。

しかし、同じ Boeing777 でもエンジンが米国 General Electric 社の GE90-94B, GE90-115B の機体(全日空の Boeing777-300ER と日本航空の Boeing777-200ER, -300ER)ではエンジントラブルの話は聞こえてきません。

エンジントラブルが Pratt & Whitney の PW4000 シリーズに集中しているのが気になります。

それにしても、今回の Tail Cone 脱落、洋上に落ちたであろうことは不幸中の幸いだったと言えるでしょう。


部品脱落の全日空機エンジン、羽田で調査へ (読売新聞) - goo ニュース
 高知県沖上空で29日、飛行中の鹿児島発羽田行き全日空628便から排気の流れを整えるエンジン後部のテールコーンが脱落し、同便が大阪空港に緊急着陸したトラブルで、全日空は30日、「脱落は、右翼エンジン内部に何らかの不具合が起きて異常振動が発生したため」とみて、右翼エンジンを羽田空港の同社格納庫へ移送して調査することを決めた。

2005年10月30日 (日) 22:57
ANA機のエンジン異常振動、伊丹に緊急着陸 (朝日新聞) - goo ニュース
 29日午後4時45分ごろ、鹿児島発羽田行き全日空628便(ボーイング777―200型機、乗員・乗客190人)が、高知県沖の太平洋上空1万800メートル付近を飛行中、右翼のエンジンが異常振動をはじめた。このため、同機は右翼のエンジンを止め、左翼エンジンのみで航行。大阪(伊丹)空港に目的地を変えて、同5時12分、緊急着陸した。乗客と乗員は無事だった。

 全日空大阪空港支店ステーションコントロール部などによると、着陸後にエンジンを調べたところ、右翼エンジン尾部にある排気の流れを整えるチタニウム製のテールコーン(最大直径90センチ、長さ1メートル、重さ14キロ)が脱落し、なくなっていた。異常振動によりテールコーンを固定したボルトがゆるんで落下したと見られるという。

 テールコーンがないと、エンジンの推進力が落ち、燃費が悪くなるなどの影響が出るという。全日空では過去に、テールコーンが脱落するトラブルはなかった。

2005年10月30日 (日) 00:18
飛行中にエンジン部品脱落 全日空機が緊急着陸 (共同通信) - goo ニュース
 29日午後4時45分ごろ、鹿児島発羽田行き全日空628便ボーイング777が高知県沖の太平洋上(高度約1万メートル)を飛行中、右翼にある第2エンジンが激しく振動した。機長は同エンジンを停止させ、同機は約30分後、大阪空港に緊急着陸した。乗客乗員190人にけがはなかった。

国土交通省大阪空港事務所や全日空によると、着陸後の機体調査で、同エンジン後部に取り付けられていた「テールコーン」と呼ばれる部品がなくなっているのが見つかった。全日空は飛行中に何らかの原因で脱落したとみて、機体を詳しく調べている。

全日空でテールコーンが飛行中に脱落した事例は初めてという。

2005年10月29日 (土) 23:18

Comment ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
確かにPW社エンジンばかり… (のぞみくん)
2005-11-01 00:43:02
しかし、このエンジンは別に日本だけが導入しているわけではなく、海外からの乗り入れ機まで含めると、かなり影響が大きそうです。

エンジンそのものの欠陥、などということにならなければいいのですが…。
 
 
 
しっかり調査して欲しいですね (PAX)
2005-11-01 11:20:07
「のぞみくん」さん、こんにちは。

そうなんですよ。聞えてくるのはPWエンジンのみなんですよね。

GEがN1でコントロールしているのに対しPWがEPRでコントロールしていることが原因とも思えませんし。日本国内での運航だと運用サイクル数が他国の777よりは若干多いかもしれませんが、それが加速度試験のように効いているのでしょうか。

いずれにしても全日空も日本航空も777ではWorking Togetherで結構大きな声でもの言える立場でしょうから、FAAも巻き込んでPW4000シリーズを徹底調査してほしいですね。
 
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