徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

またお前か!

 学習効果がないと言うか、真剣に対策を考えていないのか、なぜに一ヶ月ちょっとしか経っていない間に同様のミスを繰り返すのでしょうか。

ヒューマン・エラー対策について抜本的な解決がなされていないことは確かなようです。

航空機の運航は、決められた procedure を繰り返す routine work 的に思えますが、実際は、便ごとにお天気や Traffic をはじめ、当該便を取巻く状況が異なりますので、case study の繰り返しといえます。単純な routine work ではないからこそ、厳しく訓練されたパイロット2名以上で運航し、航空管制の支援も受けている訳です。
今回の場合も、先月新潟で発生した事例同様、パイロットが二人とも失念し、さらに航空管制サイドもミスに気付かぬまま事が進んでしまったようです。CRM: Crew Resource Management、異なる立場からの Cross Check 体制が全く機能していません。

人間は必ずミスをします。それは避けようがありません。が、そのミスがどこかで食い止められるように Cockpit Crew が PF, PNF と役割を分担し Cross Check する訳ですし、Checklist を導入してミスを事前に防ぐようにしています。

“国交省が全国の空港監査へ”と言っていますが、監査したところで再発防止につながるのでしょうか。甚だ疑問です。
このようなことが起こると、責任者(所謂お偉いさん)が出てきて、高圧的に現場を叱責したり、通達を出したりするのが慣例ですが、それでは根本解決になりますまい。やはり、現場主導で再発防止策を議論すべきです。

双方共に“再発防止のため、国交省と日航は手順を書いたチェックリストなどを導入したが、今回の管制官も機長も、リストを正しく記入していなかった”では、何の為のチェックリストだったのか、そもそもチェックリストの導入が Workload が高く、双方共に慌しい phase において適切な防止策だったのかを再検討する必要があるでしょう。チェックリストはヒューマンエラーを防止する one of them でしかないのですから、他の方法だっていくらでもある筈です。

読売新聞の記事に興味深い件があります。

“日航は26日、深井祥治・運航本部長が会見。ミスについて、「あってはならないことだった」と謝罪した。同じミスが相次いだ原因については、「夜間のフライトなので、気が緩んでしまったようだ。人間のやることなのでミスはゼロにできない」と述べた。”

『人間のやることなのでミスはゼロにできない』は一見無責任なように見えますが、実は本質を理解している真摯な発言だとも言えます。そこまで解っているのだから、どのようなアクションをとるかが、OPZの長として資質を問われることになるでしょう。

また、『夜間のフライトなので、気が緩んでしまったようだ』も表現が表現だけに“気が緩む”では済まされないだろう、と批判を浴びそうですが、要は「乗務パターンを見直さねばならない」との認識から発せられた言葉であれば、評価することができます。
疲労は蓄積されます。当該便は何日パターンの何日目、何レグ目だったのか、よくよく review することです。乗務スケジュール作成、定時出発と営業側から押し付けられる Time Pressure、ひいては Cockpit Crew のマンニングの問題にまで遡って考えることです。

新潟の一件は日本航空ジャパンが運航する MD90、今回は日本航空ジャパンが運航する MD81、経営統合で旧JASの MD の運航乗員部に歪が生じてなければ良いのですが....。

それにしても、あまりにもお粗末なミスであることは否めません。



飛行計画未承認でまた離陸 国交省が全国の空港監査へ (共同通信) - goo ニュース
 宮崎空港で23日に管制官(59)が宮崎発福岡行き日航3636便MD81(乗客乗員45人)に対し、飛行計画(フライトプラン)の承認を伝え忘れたまま、規定に反して離陸を許可し、機長(39)も気付かずに離陸していたことが26日、分かった。

新潟空港でも8月16日、日航機が離陸する際に同様のミスが起き、チェックリストの改正など再発防止策を講じたばかり。国土交通省は全国の空港や管制機関の監査実施を決め、日航にも口頭で注意した。

記者会見した北村隆志管制保安部長は「管制官の基本的な動作の一つであり、大変申し訳ない」と謝罪した。

2005年 9月26日 (月) 21:09
JAL機がまた無許可離陸、宮崎空港で23日に (読売新聞) - goo ニュース
 日本航空の宮崎発福岡行き3636便(MD81型機、乗客39人)が今月23日、管制官からフライトプラン(飛行計画)の最終許可を得ないまま、宮崎空港を離陸していたことがわかった。
 同空港の管制官も最終許可を出していなかったことに気づかなかった。離陸直後に別の管制官の指摘で機長が気づいたが、同便はそのまま飛行を続け、福岡空港に着陸した。

 フライトプランは目的地までの航路、高度などを定めた計画書で、航空法に基づき、出発前に管制官から許可を得なければならない。先月16日にも新潟空港で、日航操縦士と管制官のミスで、まったく同じトラブルが起きたばかり。

 日航では先月のトラブルを受け、再発防止策としてチェックリストを一部部署に配布。3636便もリストを載せていたが、チェックをしていなかったという。日航は事実関係の調査のため、同便の機長(39)と副操縦士(42)を当面の間、乗務停止とした。

 また、国土交通省も管制官に対し、最終許可を出し忘れないよう、チェックリストを用意していたが、担当だった男性管制官(59)はリストを使っていなかった。

 日航は26日、深井祥治・運航本部長が会見。ミスについて、「あってはならないことだった」と謝罪した。同じミスが相次いだ原因については、「夜間のフライトなので、気が緩んでしまったようだ。人間のやることなのでミスはゼロにできない」と述べた。

2005年 9月26日 (月) 20:30
JAL機、飛行計画の承認なく離陸 機長、管制官も失念 (朝日新聞) - goo ニュース
 宮崎空港で23日、福岡行きの日本航空3636便(MD81型、乗客乗員計45人)が、管制官から飛行計画の承認を受けずに離陸していたことが26日、分かった。計画は経路や高度を便ごとにまとめたもので、機長と管制官の双方が、離陸前に計画承認を確認することになっているが、いずれも忘れていた。8月16日にも新潟空港で日航機を巡って同様のトラブルが起きており、国土交通省と日航は26日、幹部が相次いで謝罪会見を開き、再発防止の徹底を強調した。

 国交省と日航によると、3636便の機長は23日午後7時40分ごろ、出発準備を終えたため、宮崎空港の飛行場管制官に飛行計画の承認を要求。事前に日航が提出していた飛行計画を福岡航空交通管制部が承認していたが、管制官はそれを確認しながら機長には伝えなかった。機長も承認を受けていないことに気づかないまま管制官に離陸を要求し、同53分に離陸した。

 機長は上昇中の同54分ごろ、別のレーダー管制官とのやりとりの中で計画の承認を受けていないことに気づき、この管制官から識別番号を与えられて飛行を継続した。計画の承認を受けて1便ごとの識別番号が与えられないと、管制官のレーダーに便名や高度などが表示されなくなり、緊急時に管制官の指示や対応が遅れる原因になりかねない。離陸から識別番号を与えられるまでの1分余りの間、同便はこの状態だった。

 同便は同8時34分に福岡空港に到着。機長は同社幹部に一連の経緯を報告したが、飛行場管制官は日航から連絡を受けた24日午後まで、計画の承認を伝えなかったことに気づかなかった。レーダー管制官も、飛行場管制官のミスに気づかないまま識別番号を与えていた。国交省は「正常な手順ではないが、結果として識別番号を与えたためにレーダーにも正常に表示されており、安全上の問題はなかった」としている。

 先月16日に起きた新潟空港のトラブルと同様、管制官も機長も「失念していた」などと話しているという。その後、再発防止のため、国交省と日航は手順を書いたチェックリストなどを導入したが、今回の管制官も機長も、リストを正しく記入していなかった。

 国交省は宮崎空港事務所を厳重注意するとともに、管制官の職場に対する監査を強化するという。日航も機長と副操縦士を乗務停止にして調査を進めている。

2005年 9月26日 (月) 23:38
飛行計画の承認の未受領による運航について
2005年9月23日のJL3636便(宮崎発福岡行)におきまして、宮崎空港出発時、管制より、事前に提出してある飛行計画の承認を未受領のまま、管制機関から地上走行及び離陸許可を得て離陸した事象が発生いたしました。

日ごろより、管制機関との承認の授受については確認に万全を期すよう努めておりますが、この度の事象が発生したことを、ご搭乗のお客さま、ならびに広く社会の皆さまに対して心より深くお詫び申し上げます。

今後このような事態を発生させないよう、再発防止に努めて参ります。

2005年9月26日
株式会社日本航空
Comment ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (RUSAR)
2005-09-27 18:02:28
全く開いた口が塞がりません。恥ずかしい限りです。

この人の事、私は知りませんが、定年間近ということは、現場では恐らく怖いもの知らず、あるいは単に頭が固まっちゃってるのか、人の言う事も聞かない奴なんでしょう。前の不具合事例の改善策として工夫されたチェックシートも使おうとしてないし・・・。我々が日頃一生懸命にやっている事が、こういう奴らのためにすべて台無しにされてしまいます。本当にいい迷惑です。管制機関全体がまるで何にも反省していないかのように思われてしまいます。正直、しっかり反省してもらいたいです。
 
 
 
とんだとばっちりですね (PAX)
2005-09-27 18:24:58
「RUSAR」さん、こんばんは。

宮崎支店の頑固爺さんのために、本当にいい迷惑ですね。

Cockpit側もPICの方が若い。物言えぬCockpitだったとしたら大問題です。

99.999999%の皆さんが必死の努力で築き上げている安全は、このような“お粗末なミス”で台無しに思われてしまいます、少なくとも世間の大多数の方々にとっては....。残念です。
 
 
 
ミスはゼロにできない (のぞみくん)
2005-09-27 23:04:51
トラックバックさせていただきました。

個人的な感想としては、いつもなら「全力を尽くす」とか、精神論ばかりが飛び交うような会見の中で、この発言はかなり評価に値するものと思います。まさしくその通りなんですから。

ゼロにはできないヒューマンエラー、そのリカバリーをどうするかということを考えていくことが一番大事なことですからね…。
 
 
 
同感です (PAX)
2005-09-28 04:37:33
「のぞみくん」さん、おはようございます。

記事、拝読しました。着目したポイントが同じですね。あの発言をしたのであれば「少しだけ大人になった」ように思えます。先人たちは、ヒューマンエラーがインシデントにつながらぬように様々な努力、工夫をしてきているのですから。Cockpitが二人とも失念したのでしょうか。CRMも問題ですね。
 
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