徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
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(since 17 AUG 2005)

SWA1248 went over the end

 クリスマス・イブに投稿するには相応しくない内容かと思いますが....お許し下さい。

2005年12月8日19時14分〔米国中部時間〕、サウスウェスト航空1248便が、米国シカゴはミッドウェイ空港に着陸後滑走路をオーバーラン、空港外周一般道路まで飛び出し、道路を走っていた自動車と衝突。残念ながら自動車に乗っていた一人の男の子が命を落としました。

[関連投稿]
  シカゴ ミッドウェー空港でサウスウエスト航空機がオーバーラン
  シカゴ ミッドウェー空港オーバーラン事故続報

NTSB: National Transportation Safety Board (米国運輸安全委員会)が当該事故の事故調査にあたっており、事故から2ヶ月と経たない、今年1月末には、当該事故調査の過程で明らかになった事実をふまえ、FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)に対して、緊急の安全勧告( A-06-16 )を行なっております。

[関連投稿]
  NTSBからの一通のメール

上の関連投稿をご覧いただけば、
 -OPC: On-board laptop Performance Computer による必要着陸滑走路長の計算とそれに用いた条件
 -Thrust Reverser の Deploy が接地から18秒後と大幅に遅れたこと

などについてはお解かりいただけるかと思います。

NTSB から未だ“事故調査報告書”は発表されていませんが、調査過程で得られた情報から、事故の概要はつかめるようになってきています。

※調査過程の資料を公表・閲覧できるとは流石は NTSB、航空先進国の事故調査のあり方はチト違いますね。

ここでは調査過程の資料をもとに、事故の概要をまとめてみようと思います。



悪天候下においては、滑走路の路面状態を正確に把握することが重要です。

当該便は、ミッドウェイ空港への降下・進入に際し、上空で OPC: On-board laptop Performance Computer を用いて必要着陸滑走路距離を求めました。

OPC から得られた値は、接地帯に着陸し、Auto Brake、Thrust Reverser が作動することを前提として求められたミッドウェイ空港滑走路31Cの残距離は、滑走路路面状態が、
 “Fair”では、560 feet (170m)
 “Poor”では、30 feet (9m)
でした。

事故当時、シカゴは雪が降っており、ミッドウェイ空港の滑走路31Cも事故発生の27分前に除雪が行なわれていました。

Runway Condition は、31Cの手前側約半分が“good”、滑走路エンド側半分は“poor”でした。

このことは、進入管制からもまたタワーからも1248便に伝えられています。
(が、CVR の transcript をみる限り、当該便クルーには半分が“poor”であることはあまり重要に捉えられてなかったように思われます)
19:07:05.1
APR    Southwest nineteen fifty two last report I had for runway three one center on the braking was ah braking fair except at the end it was poor.

(19:07:10.5
HOT-1   go flaps to ah five please.)
(19:07:12.9
HOT-2   flap-o de cinco.)

19:07:19.1
APR    southwest ninety fifty two you copy last?

19:07:20.8
SW1952  I'm sorry sir no.

19:07:22.3
APR    yea braking action on runway three one center is fair and then poor at the end as reported by company seven three.



19:09:53.7
RDO-2   Southwest twelve forty eight three one center.

19:09:57.6
TWR    Southwest twelve forty eight Midway tower continue for three one center the winds zero nine zero at nine brakin' action reported good for the first half, poor for the second half.

19:10:06.2
RDO-2   thank you.



(19:12:16.9
HOT-1   never autobraked here huh?)
(19:12:18.3
HOT-2   yeah. hang on tight [sound similar to laughter].)
(19:12:21.6
HOT-1   yeah.)
(19:12:25.3
HOT-2   five hundred.)

19:12:26.6
RDO-2   landing clearance for Southwest twelve forty eight.

19:12:28.4
TWR    Southwest twelve forty eight runway three one center cleared to land wind zero nine zero at nine brakin' action fair to poor.

(19:12:35.3
HOT-2   four hundred.)
(19:12:36.3
HOT-1   alright.)
(19:12:37.2
HOT-2   five green lights cleared to land.)

8~9ノットの tail wind であったこともあり、Final で若干パスが高くなりますが、1248便は許容範囲内に接地します。

19:13:01.4

19:13:07.8


接地した段階での対地速度は 129.8 kt (時速約240キロ)で、接地と同時に Auto Brake が deploy しています。

(その後、機長がブレーキペダルを思い切り踏み込んだため、Auto Brakeは解除され、マニュアルで最大圧のブレーキがかけられることになります)

が、Thrust Reverser が作動しません。

DFDR: Digital Flight Data Recorder が Thrust Reverser の作動を記録しているのは、接地から約18秒も経てからです。

19:13:23.2


このときの対地速度は 88.8 kt (時速約165キロ)であり、接地時のそれから時速80キロ程度しか減速していません。

接地からこの間、ブレーキ圧は最大を示していますが、Runway Condition が “poor”の領域で、Thrust Reverse も無しですから、止まらないのも無理はありません。

接地( 19:13:07.8 )から約23秒を経て( 19:13:31.2 )ようやく Thrust Reverser に伴うエンジン音が聞こえてきます。

19:13:31.2


が、機は既に滑走路終端にあり、対地速度もまだ 67.6 kt (時速約125キロ)もあります。

シカゴのミッドウェイ空港は、街中の歴史が古い空港で、もはや拡張しようにも拡張の余地も無く、オーバーラン・エリアもほとんどありません。


十分に減速できなかった1248便には、もはや Blast Fence を突き破り、ILS アンテナも壊して突き進むしか残された選択肢はありませんでした。


出来ることなら、外周フェンスを突き破って空港外周の一般道路に飛び出すことだけは避けたかったのですが....、叶いませんでした。



NTSB では、

 -OPC: On-board laptop Performance Computer による必要着陸滑走路距離の計算
 ※この件に関しては前述したとおり安全勧告を発行済み。

 -運航乗務員の着陸操作
  *機長がオートブレーキを解除してマニュアル・ブレーキを行なった
  *機長が接地後直ちに Thrust Reverser を作動させられなかった
  *副操縦士が Thrust Reverser を作動させたのは接地から18秒後であった
  *その7秒後に滑走路の舗装面からオーバーランした。

 -当該機の航空機システムの作動状況
  *フラップ
  *スポイラー
  *ブレーキ
  *アンチ・スキッド
  *スラスト・リバーサー

などを鑑み、以下の3点を主に問題視しています。(誤訳を防ぐため、原文で記します)

 * Accuracy of runway friction measurements and estimates
 * Adequacy of runway safety areas
 * Aircraft landing performance


Winter Operation も本番を迎えようとしています。

先日は米国の中西部や北西部がブリザードに見舞われ、空の便にも相当な影響が出たようです。

SWA1248 の教訓が活かされているのか、オーバーランなどの報は聞いていません。

事故防止に国境はなし、世界中の空が安全でありますように。



19:13:47.5
TWR    what was that? Southwest twelve forty eight are you cleared three one center?

(19:13:48.1
CAM    [sound similar to stick shaker].)
(19:13:49.1
CAM    [sound similar to chime].)
(19:13:51.0
CAM    [sound similar to clunk].)

19:13:51.4
RDO-2   Southwest twelve forty eight went over the end.
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