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オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

『カインド・オブ・ブルー』 ~マイルス・デイビス~

2017-11-29 16:06:27 | ジャズ
 前回、モードの通過点の”マイルストーンズ”と来たので、完成点といえる『カインド・オブ・ブルー』の話です。
 ■1)この頃のトレーンとマイルスの動き
 前回トレーン中心に纏めたものに、マイルスを少し追加してみましたのでそれで見ますと

 となります。トレーンが神の啓示を’57年7月に受けてから、プレスティッジで怒涛の名作を連発した58年7月から半年後の59年4月にジャイアントステップスでシーツ・オブ・サウンドを完成しますが、そのジャイアントステップスの直前にマイルスと録音したのが、カインド・オブ・ブルー ということになります。このアルバムが、’60年代のジャズの行方を大きく左右したということになります。

 ■2)AMAZONの『カインド・オブ・ブルー』のキャッチコピー
 これが的確に要約しているので、少し加筆して紹介します。
 ”50年代末、それまでジャズの中心的なスタイルだったハードバップが、先鋭な発想をもったミュージシャンには飽き足らないものと映るようになっていた。そこでマイルス・ディヴィスは、煮詰まった音楽の一新を計るべく、ジャズの演奏原理に「モード」と呼ばれる新しい音楽理念を導入(これには、ギル・エバンスが理論面で寄与)した。そのときに作ったのがこのアルバムである。

発売と同時に大きな反響を呼んだこの演奏は、新時代のジャズとして、60年代のジャズシーンを主導する重要な歴史的役割を果たした。またこの作品は、ジャズファンだけでなく幅広い層から長期にわたって支持されたこともあって、ジャズアルバムでは異例ともいえるセールス枚数を記録している。
綿密に構成された内容は、それまでのジャズのイメージを変える斬新なものだ。(後藤雅洋)”
 
 ■3)ウイッキペディアから『カインド・オブ・ブルー』を見てみたら
 ウイッキペディアでみると、以下です。
 ”『カインド・オブ・ブルー』(Kind of Blue)は、ジャズ・トランペッター、マイルス・デイヴィスのスタジオ・アルバム。1959年3月・4月の2度にわたって録音、同年8月にリリースされた。
 ・概要[編集]
マイルスのバンドは、『マイルストーンズ』(1958年)でキャノンボール・アダレイ(アルト・サックス)を加えて6人編成となり、従前のハード・バップ・スタイルに留まらない、「モード・ジャズ」と呼ばれる新たな演奏手法に挑むようになった。
1958年中期からは短期間ながらビル・エヴァンス(ピアノ)も加え、更にモード・ジャズを発展させた。エヴァンス、そして本作にも参加しているジョン・コルトレーンも、マイルスの後を追うようにモード・ジャズを世に広めていった。マイルス本人は、この時期はモーリス・ラヴェルなどクラシックの作曲家を研究しており、本作にもそうした要素がどこかに入っていると語っている。
「ソー・ホワット」は、マイルスの口癖をタイトルにした曲で、後にビル・エヴァンスもジェレミー・スタイグとの共演盤『ホワッツ・ニュー』で再演した。
 ・影響[編集]
モダン・ジャズ屈指の傑作とされ、またモード・ジャズを代表する作品の一つ。そのコンセプトは、以後のジャズ界に大きな影響を与えた。
全世界でのセールスは1000万枚を突破、現在までジャズ・アルバムとしては異例のロング・セラーとなっている。
2003年、ローリング・ストーン誌が大規模なアンケートで選出したオールタイム・グレイテスト・アルバム500で、ジャズのアルバム、50年代以前に発表されたアルバムとして最高位の12位にランク・イン。”
 いやはや、凄く売れたんですね!モダン・ジャズ屈指の傑作とされというのも納得します。

 ■4)『カインド・オブ・ブルー』のジャケットとメンバー
 ジャケットは、下記。LPも持っていたのですが、普段はCDです。

 マイルスの顔が、象徴的に映っています。
 パーソネル:マイルス・デイヴィス - Tp、
       ジョン・コルトレーン - Ts、
       キャノンボール・アダレイ - As(on1.,2.,4.,5.,6.)、
       ビル・エヴァンス - P(on1.,3.,4.,5.,6.)、ウィントン・ケリー - P(on2.)
       ポール・チェンバース - B、
       ジミー・コブ - Ds 
 尚、私のCDは、1990年4月21日発売でピッチが少し速くなっている。ピッチが修正されるのは、CDでは92年以降発売分からとのこと。

 ■5)『カインド・オブ・ブルー』の各曲 (ライナー・ノーツ(上田力氏、小川隆夫氏)の解説も少し参照)
 バラード好きの私のお気に入りは、3.ブルー・イン・グリーン と、5.フラメンコ・スケッチです。他の曲ももちろん好きですが・・・。アルバム全体に流れるリリシズムと抑制というか涼やかな風を感じるのが、何より心地よい気持ちになります。もっとも、このリリシズムと抑制の大元は、マイルスはレスター・ヤング(その元はビリー・ホリディと云う説もある)から仕入れたということになるのですが大きく成熟させたということになるのでしょう。ケニス・タインナンが言うところのDUENDEの世界に聴衆を誘ってくれます。尚、純粋のモードで書かれているのは1.So Whatと5.Flamenco Sketchesのみとのこと。

 1.ソー・ホワット - So What 9:03 マイルスのオリジナル
 マイルスの口癖になっている”ソー・ホワット”という言葉ですが、以前に紹介したこんなジョークにもなっています。
 マイルス:スタジオに入ると、五線譜を取り出し、いくつかの音を並べ、”これで行くよ”と言った。
 エヴァンスもトレーンもアダレイも ”うへー、テーマが無いんですかい?”と言うと、
 マイルス:”So,What?”(”だから何なんだ?”)
 これはジョークでしょうが、モードを導入する最初は、こんな会話もあったのだろうと思います。
 ピアノのイントロの後、平板な2音の繰り返しのテーマがベースVsホーンで繰り返す。その後、マイルスが、ソロに入る瞬間が緊張の糸が切れる瞬間になる。そこからは、マイルスのモーダルな乾いたクールなアドリブが続く。正にDUENDEの世界。次は、トレーン。これもモーダル。マイルスにインスパイヤーされてクールなアドリブを繰り出す。更に続くは、アダレー。これは、コーダルに近いアドリブだが、アーシーで私は好きだ。最後はまた繰り返しのテーマから、ピアノとホーンの交互のテーマに戻って、フェードアウトする。
 淡々とした曲の、この、クールさと言うか覚醒したエモーション・緊張感は何だろうか?

 2.フレディ・フリーローダー - Freddie Freeloader 9:34 マイルスのオリジナル
 この曲のみピアノがウイントン・ケリーに代わっている。彼のコーダルな演奏は他のアダレーを除くモーダルなメンバーとは一線を画す。マイルスは、少しはスパイスも入れたかった?もうこの頃は、エバンスはマイルスのバンドからは外れていたが、敢えてエバンスを呼んだのだから全てエバンスで良かったのではないか?最初は、ケリーのファンキーでスインギーなアドリブがご機嫌に続く。続くは、マイルスのソロ。あくまでクールで独自のDUENDEの世界。軽快であるが、どこか醒めている。次は、トレーン。彼独特のイデオムも交えてシーツ的なモーダルな音を紡いでいく。更に続くは、アダレー。アーシーな軽快なアドリブプレイを披露。その次が、ケリーのソロ。ブルース・コードによるプレイであるが少し抑制を効かす。最後はマイルスに戻って、ホーンのハーモニーでテーマからひっそりとエンディング。

3.ブルー・イン・グリーン - Blue In Green 5:27 マイルスのオリジナル(本当は、ビル・エバンス)
 ピアノのイントロの後、マイルスの氷の刃を思わせるミュートが入った瞬間”ゾクッ”とする。これぞ、DUENDEの世界そのもの。あくまで静粛な世界を演出するプロデューサーのマイルス。次は、トレーン。これまた、静かなソロに入る。エバンスのソロが割って入ってミュートが更に入る。ここは、ゾクッとするような深遠な海の底のような沈潜した世界を描いている。過去の悲哀というか傷を邂逅している。そんなムードを漂わせてリリカルなエバンスのメロディで深く沈降して終わる。エバンスのリリシズムがマイルスと互角に渡り合ったプレイである。よく言われるようにドビュッシーの影響を強く受けている。マイルスはこの頃、ドビュッシーやラベルといったフランスのエスプリを感じさせる近代音楽家の作品に関心を示していたようであるし、エバンスも元々ドビュッシーに影響されているような気がする。確かに、”月の光”や”亜麻色の髪の乙女”のニューアンスが匂ってきます。ドビュッシーのタッチは、どう考えてもドイツ語ではなくフランス語からしか生まれないタッチですね。

 4.オール・ブルース - All Blues 11:32 マイルスのオリジナル
 ピアノのイントロの後、ホーンのハーモニーでテーマが来る。ノンミュートでマイルスがソロを始める。ここでもクールなDUENDEの世界。余計な音は要らないと言っているよう。バックで繰り返しを弾くエバンスが良い味を出している。続くは、アダレーのエレガントでアーシーなでアクセントの利いたソロ。お次は、トレーン。シーツ的なものにアダレー的なアーシーさも加えている。少し影響されているかも。続くは、リリカルなエバンスのソロ。最後はホーンのハーモニーにミュートが絡んで、消え入るように終わる。

5.フラメンコ・スケッチズ - Flamenco Sketches 9:26 マイルスのオリジナル
 ピアノのイントロの後、マイルスのミュートが入る。これもクワイエットなムード。アルプスの草原を風がなぜるように吹いている静かな午後、或いは牧歌的な少年時代のノスタルジーのような邂逅か。続くは、トレーン。ここではクールにしんみりとアドリブを聴かせる。そして次は、アダレー。これもクールで軽やかなアドリブで私は好きです。続くエバンスもひそやかにしっとりとしたリリカルなアドリブ。癒されるヒーリング的なメロディ。ミュートのテーマに戻ってひそやかにDUENDEの世界に聴衆を誘ってエンディング。この曲でトレーンはマイルスから、民族音楽をジャズに取り入れることのヒントを得たと云われている。

 ■6)ソー・ホワットとオール・ブルース
 マイルス自身が自伝の中で「ソー・ホワットとオール・ブルースでやろうとしたことは失敗だった」と言っている。どこがどう失敗だったのかを語っていないので、そこは判らない。しかしSo Whatが無いと、”カインド・オブ・ブルー”ではないと思うのだが、マイルスの真意を知っている方がおられたら教えてください。ソー・ホワットのおどろおどろしいところが、ブルーのコンセプトに合っていないという気もしますが、おどろおどろしいブルーも有っていいのでは。それとも”ラウンド・アバウト・ミッドナイト”から影響を受けている”ギル・エバンス”の影響やマイルス自身が招聘したビル・エバンスの影響が大きすぎて失敗と言っているのか?

 ■7)You Tube
 今は、フル・アルバムが上がっています。
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マイルストーンズ~マイルス・デイビス~

2017-11-22 21:03:13 | ジャズ
 前に、コルトレーンのプレスティッジのアルバムが好きだと言う話のところで、表の中でハードバップの最盛期と云える’58年2月、3月に録音されたマイルストーンズを挙げたので、それについての話です。2/12にアップした”マイ・ファニー・バレンタイン”と同様私のお気に入りです。マイルストーンズの意味は、通過点、節目ということですが、まさにハードバップからモードへの通過点という記念碑的アルバムです。

 ■1)トレーンから見た”マイルストーンズ”前後について
 これについては、前に出した表をもう一度見てみましょう。

 これで見ると、コルトレーンとしては、歴史的な名演と思っている”ブルー・トレーン”の~6ヵ月後で、これまた私の大好きな”ソウルトレーン”とほぼ同時期の録音となっていますので、ハードバップの一番熱い時期にマイルスとしては次なるモードへ突き進もうとしていた時期の変革期の名盤と思う。この流動的な時期の作品が私は色んな意味で大好きです。流動する意味は、音楽的には、単なるハードバップからトレーンはシーツ、マイルスはモードへ、人的には、麻薬や酒に溺れ遅刻したりと迷惑をかけて、マイルスの元をこの後離れていった、天才ガーランドやフィリー・ジョーが又、この時に別離を予感するような、爆発的にエネルギーを発散させたもの凄いプレイを残したからです。プレイ全体に流れる緊張感とスペース感覚。ハードバップの最高のプレーヤーによる最高のプレイと次の流れの予兆を垣間見れる快演です。

 ■2)”マイルストーンズ”について
 パーソネル:マイルス・デイビス(tp)  ジョン・コルトレーン(ts) キャノンボール・アダレイ(as)  レッド・ガーランド(p) ポール・チェンバース(b)  フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
 1958年2月4日(3曲目以降)、3月4日(1曲目、2曲目)にN.Y.コロンビアスタジオにて録音
 いやー、メンバーが凄い。いずれも、リーダー・アルバムを持っている、後のジャズ・ジャイアンツというようなメンバー達です。神童と天才の集まりをコントロールする猛獣使いのようなマイルスと言ったら良いのでしょうか。キャノンボールについては、ほぼ同時期(’58年3月9日)に名盤”サムシン’エルス”を録音しているので乗っている時期です。
 以下、ジャケットですが、表のマイルスの決めポーズが何とカッコいいんでしょう。


 ■3)”マイルストーンズ”の各曲について
 以下に、感想を簡単に。私が好きなのは、やはり表題曲”マイルストーン”と”Two Bass Hit”とガーランドのトリオでの”ビリー・ボーイ”です。

1.”Dr.Jackle”5:46(作曲:ジャッキー・マクリーン、マクリーンとの録音はゆったりしたテンポでブルージー)
 このアップテンポのブルースの聴き所は、マイルスのソロからのトレーンとキャノンボールの真剣勝負の4バース交換です。これはスリリングそのもの。丁度、トレーンとロリンズの”テナー・マッドネス”のように、どっちも譲らないぞ!という気迫を感じる。また、神童チェンバースの弓弾きのベースもスインギーで安定感のある乗っているウォーキング・ベースが聴ける。マイルスの快調なテーマに戻って、サックスが絡んでドラムも割って入ってホーンのユニゾンで緊迫したやり取りの後エンディングも痺れます。

 2.”Sid's Ahead”(ラジオのDJでマイルス出演のコンサートもプロデュースしたシンフォニー・シッドに捧げられたマイルスのオリジナル曲で、マイルスとはギャラの支払いで揉めた事も)
 マイルスとして、初めてモードをお披露目したブルース曲と思う。モードとしては中途半端で模索段階という感じ。珍しくマイルスがソロの合間にピアノを弾いているが、これはガーランドがマイルスとケンカして帰ったためとか用事で帰ったからとか真相はともかく、ガーランドはいない。しかし、いかんせん、曲が地味なので、各人のアドリブは凄いのであるが、飛ばして聴くことが多い。聴き所は、やはりマイルスのしっとりとしたクールなソロ。しんみりとした寡黙なブローとタイミング良くとったスペースとの対比が、ケニス・タインナンが言うところのDUENDEの世界に私達を連れて行きます。正に、都会の夜の世界という感じなんです。スインギーでクール。キャノンボールのソロもここでは、”サムシン’エルス”の時より秀逸なプレイをしています。”サムシン’エルス”ではリーダーアルバムということか突っ込み過ぎていました。最後の、マイルスとフィリー・ジョーの4バースも良いです。

 3.”Two Bass Hit”5:11(ディジー・ガレスピー作曲。ビバップが盛りの1947年の作品。 )
 イントロでは、マイルスとサックスが交互に出るが、ここでの聴き所は、フィリー・ジョーのドラムスとシンバルのバッキング。バックで超絶のテクニックでパルシブでスインギーな演出をしています。世界一のドラマーですね。次の聴き所は、次に続くトレーンの疾走するアドリブライン。得意のイデオムも随所に見せ、乗っているのが判る。続くキャノンボールもハードバップの好演。短いドラムソロを挟んで、ソロを採らないマイルス主導でエンディング。

 4.”Milestones”5:42 (マイルスのオリジナル曲)
 タイトルチューンですが、最初に発売された時の曲名は、”マイルス”だったが、後でタイトル名と同じななったとか。ここでの聴き所は、最初にソロをとるキャノンボールのエレガントなアドリブ。私の大好きなアドリブラインで目まぐるしく変わるアイデアで展開される。ここでのキャノンボールは、珍しく上手く抑制を効かせている。次の聴き所は、マイルスのシンプルだが印象深いソロ。モードの定義は、『決められた音階で演奏する。その音階の音を使ってアドリブせよ』と云うことらしいが、識者によると、実際にはこの曲では音階外の音もかなり出ており、音階の音だけだとジャッジーにならないようです。それはともかく、マイルスのソロが秀逸。緊張感溢れる静寂のDUENDEの世界に痺れます。続くトレーンのアドリブも、キャノンボールに負けず劣らず、シーツの香りのアドリブを、これでもかと繰り出します。最後のユニゾンでのフェードアウトも粋ですね。

 5.”Billy Boy”(米国の伝統的なフォークソング)
 今までの曲では、ガーランドは、珍しくソロをとっていません。この曲は、その分ピアノトリオになっています。マイルスが、”俺のグループにはこんなに凄いピアニストがいるんだぞ”ということを誇りたかったからトリオになったとか。また、喧嘩していたガーランドが”こんな凄いピアニストがもうじき居なくなるんだよ、マイルス”と反発して熱演したとか、真相はともかく、素晴らしいプレイです。この疾走感は堪りません!私の超お気に入りの超絶の疾走感を味わえる、フィ二アスのCABUに勝るとも劣らない好演”神技の連続”です。もう一つの聴き所は、チェンバースの弓弾きのプレイで、超乗り乗りでガーランドにインスパイヤーされて、スインギーでスピード感溢れる超絶ソロを聴かせてくれます。更にもう一つの聴き所は、その後のフィリー・ジョーとの4バース。これは、生唾もので凄い!4バース毎に両者共に異なるアイデアが光る。ピアノもそうだが、ドラムスもバネの利いた切れ味鋭い切れ切れの4バース。不思議なことにこの曲の快演を聴いているといつの間にかボリュームが上がっています。そうすると録音が非常に良いのでライブで聴いている感じになります。

 6.”Straight, No Chaser”(セロニアス・モンクの作曲のブルースでですが、完全にマイルス流にアレンジされており、モンク自身はこの解釈を”好きではない”と言ったとか)
 スリーピーの”HOT JAZZ”の1曲目にも良いプレイが残されていますが、やはりマイルスの方が一枚上です。ソロの順番は、キャノンボール⇒マイルス⇒トレーン⇒ガーランドですが、マイルスは、”聖者が町にやってくる”の一節を引用したり遊び心も加えて、他のホーンとは対照的なクールな演奏をしています。ここでのガーランドは、少しトーンを抑えた演奏となっています。これは、最初のうちは普通にアドリブしているが、最後にコードだけで弾いていて、その部分のメロディは、マイルスが1945年にパーカー・バンドの一員として録音したソロの完全コピーであるとか。ガーランドはリーダーのマイルスにおべっかを使ったのだとか、逆に反抗心でそうしたとか、真相はわかりませんが、ビリーボーイの熱演に比べ、最後のほうはトーンダウンしています。

 ■4)You Tube
 今は、フル・アルバムが上がっています。
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ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン

2017-10-30 15:32:07 | ジャズ
 前回のラッシュ・ライフの所で、”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”のラッシュ・ライフも好きだと載せたので、このアルバムの話もついでにしてみます。

 ■1)ジョニー・ハートマン(Johnny Hartman、1923年7月13日シカゴ生まれ – 1983年9月15日N.Y.がんの為逝去)について
 先ずは、ウイッキぺディアから。
 ”ジョニー・ハートマン は、アメリカ合衆国、ルイジアナ州ホーマ出身の、ジャズボーカリスト。学校に通いながら歌い始め、シカゴ音楽カレッジに入学し、専門的に声楽に取り組み始める。プロデビューは、第二次世界大戦終了後、1947年、アール・ハインズとの共演で注目を浴びる。その2年後には、エロールー・ガーナーと共演。音域はバリトン。カントリー・ミュージックや当時のポピュラー・ミュージックまで、幅広いスタイルに、心地よく適応しているが、本人はジャズ、中でもモダニズムを好む傾向にあった。デイジー・ガレスピーやジョン・コルトレーン、サー・ローランド・ハナなど多数のアーティストと共演を果たした。1981年には、アルバム「Once In Evry Life」でグラミー賞にノミネート。その後、ジャズから、イージー・リスニング、ポップスなどへ転向をはかる。1983年9月、ニューヨークで逝去。
アルバム
John Coltrane and Johnny Hartman
For Trane
And I Thought About You”

 ウイッキぺディアに載っているアルバムは少ないんですが、実際は結構あるようです。

 ■2)”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”と”バラード”と”デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン” 
 以下は、”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”の’87年1月の青木啓さんのライナーノーツを一部引用しました。
 ”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”のCDジャケット表裏は、下記。

 コルトレーンとハートマンがスコアでも見ているのですかね?ジャイアントステップでシーツ・オブ・サウンドを完成させ、モード手法に進んでいったトレーンですが、60年に入って、マイルスの許を離れ、オーネット・コールマンから強い刺激と新たな可能性のヒントを得、インド音楽やアフリカ音楽なども研究、59年から手がけていたソプラノ・サックスをマスターし大きく変貌し前進した。61年にインパルスと契約し、”アフリカ””インプレッションズ”などの意欲作を発表、他のジャズメンに多大な影響を及ぼす存在となった。62年秋から、シンプルで美しいバラード・プレイの”バラード”とか”デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン”、そして”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”と、前進途中の休憩といった観のある企画のアルバムを作った。他の2作のLPは、下記。

 裏は、

 バラードの方にあるサインは、1/23にアップした所で説明したマッコイ・タイナーのサインです。尚、タイナーは、この録音の2日前(6月4日)に『Nights of blues ~』を吹き込んでいます。こういう穏やかな曲の企画を作った理由としては、当時コルトレーンはマウスピースが気に入らず、手を加えたらいっそう悪くなり、急速調のプレイをやりたくても思うに任せず、代わりのマウスピースも入手できなかった。そこで、彼の悩みを聞いたプロデューサーのボブ・シールズがこれらの”変わった企画”を立てたのだということですが、レコードの売り上げも気にしていたトレーンに応えて、ボブ・シールズがヴォーカルの入ったアルバムを作る企画を立てた時に、古くからの知り合いのハートマンを推薦したと私は思っています。つまりレコードセールスを狙った3部作なのではないでしょうか?
 これらの3アルバムについて、トレーン自身が”聴きかえして見ると、今までのペースを変えて前進し、結構良いものを作ったような気がする”と語ったように、彼ならではの魅力と実力が発揮されている。そして、ハートマンの歌心が素晴らしい。

 ■3)”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”について
 選曲は、”バラード”と同じくスタンダードのバラードが、趣味良く並んでいる。ハートマンは、軽くフェイクする程度で原曲のよさを十分に生かしアドリブは、トレーンとタイナーが受け持つ。トレーンのアドリブは、ハードバップ時代とは一味違うシーツというかモード手法のスペース感覚が発揮されている。溢れる歌心、美しい情感、深い味わい、快いスリルいつ聴いても何度聴いても魅せられ、心打たれる。尚、7曲目は、CDで追加されたハートマン抜きの前日に録音されたもの。トレーンとハートマンの一期一会の出会いから生まれた不朽の名作と思う。

 パーソネル John Coltrane (ts)
          Johnny Hartman (vo)
          McCoy Tyner (p)
          Jimmy Garrison (b)
          Elvin Jones (ds)

 録音日:1963年3月7日(1~6曲目)、3月6日(7曲目)

 ■4)”ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン”の各曲について
 私にとっては、極上のひとときが味わえる1枚です。ハートマンのクルーナーヴォイス~ビロードのような優しく包みこむ声~とコルトレーンのいつもの切れたトーンを抑えた優しいトーンの見事なバラード・プレイを満喫できます。私が最も好きなのは、”ラッシュライフ”と、”マイワン”です。”ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル” もなんとも云えない良さがありますが・・・

1.ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル - They Say It's Wonderful (5:18)
 ”アーヴィング・バーリンが作詞・作曲した’46年のミュージカル”アニーよ銃を取れ”のナンバー。同年にペリー・コモ、フランク・シナトラのレコードがヒットした。”
 タイナーのピアノに続き、ハートマンの甘い声がそっと忍び込む瞬間から、聴き手の目の前に都会の夜のムードが漂う。次は、トレーン。原曲を生かしたアドリブで柔らかいトーンで優しく唄う。”バラード”の時より少し良い感じである。エンディングは、スローテンポでハートマンで。

2.デディケイテッド・トゥ・ユー - Dedicated To You (5:30)
 ”’36年にサミー・カーンとハイ・ザレットが作詞、ソウル・チャップリンが作曲。ビリー・エクスタインとサラ・ボーンがデュオしたレコードもあるが、トレーンとハートマンの表現は、この歌を見直させる。”
 タイナーのイントロより、ハートマンのクルーナーヴォイスが始まる。その後、トレーンのソロに。優しく情感を込めて唄うという感じのトレーンを聴く。この曲では、アドリブの崩し方に妙がある。ハートマンに戻って、最後はトレーンとタイナーが〆る。

3.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ - My One And Only Love (4:54)
 ”ロバート・メリン(作詞)とガイ・ウッド(作曲)が’53年に共作、直ぐにシナトラがレコーディングして注目された。原曲のロマンティックな魅力を十分に発揮したプレイであり、胸が切なくなるほど素晴らしい。”
 マイ・ワンというと私は、ベン・ウエブスター&アート・テイタムのが一番好きです。その次が、ロリンズが来日公演の時に時たまソプラノサックスの口を頭の上まで高く上げたり下げたりして演奏してくれたのです。ヴォーカルでは、このアルバムのがベストです。しめやかにひっそりと哀歓を伴ったトレーンの余り崩さないアドリブに、トレーンの歌心がダイレクトに感じられる。そしてハートマンが現れる。これも情感たっぷり、心にしみる。最後は、ハートマンにトレーンが絡んで、タイナーで終わる。

4.ラッシュ・ライフ - Lush Life (5:27)
 曲にまつわる詳細は、前回のアップを参照ください。ピアノバックでハートマンのイントロの《ヴァース》語りで始まる。このピアノとのデュオも素晴らしい。《コーラス》歌に入るとスロータッチで、いかにもろくでなしの酔っ払いが愚痴を言っているようなラッシュライフの前者の意味を込めた哀愁を伴った歌が聴こえる。その後を受け持つのは、トレーン。少しテンポアップして軽快なアドリブ。ここでは、ラッシュライフの豪勢なという後者の意味を込めているような軽快さ。対比の妙。ハートマンに戻ってトレーンとタイナーをバックにテーマを唄い切る。エンディングでのトレーンとタイナーとエルビンの絡みが秀逸。

5.ユー・アー・ツー・ビューティフル - You Are Too Beautiful (5:34)
 ”ロレンツ・ハート(作詞)とリチャード・ロジャース(作曲)が’32年に共作、’33年の映画”風来坊”で主演のある・ジョルスンが歌った。ここでは、タイナーのソロも優れている。”
 トレーンのイントロの後、直ぐにハートマンがテーマを唄う。タイナーのバックが凄く良いタッチ。途中からトレーンの寄り添いもたまに入る。続くは、タイナーのソロ。このリリカルさは、マイルスが嫌った、シュガートーンなのか?このアドリブラインが大好き。”バラード”の”Too Young To Go Steady"のタイナーのアドリブラインを思い出す。ハートマンがピアノに寄り添われて終わる。

6.オータム・セレナーデ - Autumn Serenade (4:19)
 ”サミー・ギャロップ(作詞)とピーター・デローズ(作曲)が’45年に共作。同年にハリー・ジェームズ楽団のレコードがベスト・セラーになった。甘味な感傷のハートマン、激情的なトレーン、個性の光る快演。” 
 ターナーのイントロよりハートマンのテーマが始まる。感傷的なハートマンの歌の後は、トレーンのアドリブ。これは少しテンポアップしてシーツの香りのする少し速いフレーズも交え、アグレッシブに吹ききる。このアドリブも聴き所。ハートマンに戻って、トレーンの絡みで、ドラムをベースにエンディング。

7.ヴィリア - Vilia (4:39)
 ”フランツ・レハール作曲のオペレッタ”メリー・ウィドウ”(1905年初演)の第二幕でハンナが歌う有名なアリア。’39年にスイング化したアーティ・ショウ楽団のレコードが話題になった。”
 トレーンのソプラノサックスのテーマより始まる。続くマッコイは、軽快なアドリブを展開。非常にスインギー。自由自在でメリハリも利いている。最後はトレーンに戻って、ここでもご機嫌なアドリブを聴かせてくれる。非常に軽快で、最後エルビンの絡みでエンディング。

 ■5)You Tube
 今は、単曲で1~7曲目まで上がっています。
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ラッシュ・ライフ ~ジョン・コルトレーン~

2017-10-28 18:23:08 | ジャズ
 前々回の中速の浮遊感のある”アイル・ゲット・バイ”、前回高速の疾走の”ラバー・カムバック・トゥー・ミー”ときたら、今度は、スロー・バラードと来るのが良いと思い、今回は、私の大好きな”ラッシュ・ライフ”が入っている同名のアルバムです。

 ■1)ラッシュライフと作者について
 これは、ジャズのスタンダード曲。作詞・曲:ビリー・ストレイホーン。原題《Lush Life》。1930年代の作品。ストレイホーンが18歳(か19歳)の時に作曲したと言われ、所属していたデューク・エリントン楽団のバージョンのほか、ナット・キング・コールやジョン・コルトレーンによるバージョンが知られる。歌詞の内容は、最後の所に凝縮されていますが、18歳でこの歌詞が書けるとは、早熟だったんですね。

「私は、どこかの小さな場末の酒場で、やけくそで飲んだくれの人生を送ろう。 同じように寂しい人生を送っている飲んだくれどもと一緒に、そこで酔いつぶれて朽(く)ち果てながら」

 好きな女に無視されて、やけくそになって酒におぼれる男の末路を「飲んだくれ人生」と表現されています。

 Lushには、豊富な、ぜいたくな、ぜいを凝らした、豪勢な、というリッチな意味と、酒びたり、酔っ払いのという正反対の負の意味があるが、どうもこの歌詞を見ると、後者のようですね。ストレイホーン自身もエリントンの影武者のような存在で、終生、名声を得られなかった。ナット・キング・コールが1949年にヒットさせた"ラッシュ・ライフ"には、そんな彼の行き場のない思いが感じられます。キングに電話で抗議したこともあるとか。しかし、一方ではビリーはエリントンの庇護の元、自由気ままな生活をエンジョイしていました。 兵役を免れ、偽装結婚をする必要もなく、ボーイフレンド(ゲイだったので)と豪華なアパート暮らし、高価な美術品を集め、創作活動に没頭出来たということから考えると、エリントンの庇護の下では、ラッシュライフの前者の意味、豪勢な生活もエンジョイした。しかし、最後は、52歳で食道がんで亡くなったということですので、最後は後者の意味での生活になったのかもしれませんね。彼が18歳の時に、両方の意味を込めて作曲したのかは判りませんが・・・

 私の好きなラッシュ・ライフは、本アルバムとフィ二アスの”ア・ワールド・オブ・ピアノ”の3曲目と、トレーン&ハートマンの甘い声が聴けるの4曲目とJUJUさんのDELICIOUSの1stDishの12曲目です。


 ■2)ラッシュ・ライフについて
 ジャケットは、

 憂いを含んだ顔をしています。過去のマイルスのグループの第一次在籍時は、後者のラッシュ・ライフだったなあ、何て思っていたかも。
 パーソネル:■John Coltrane(ts), Donald Byrd(tp-#4), Red Garland(p-#4,5), Earl May(b-#1~3), Paul Chambers(b-#4,5), Art Taylor(ds-#1~3), Louis Haynes(ds-#4), Albert Heath(ds-#5)
   録音日:■#5:1957/05/31(NJ), #1~3:1957/08/16(NJ), #4:1958/01/10(NJ)
 #1~#3は、Ts+B+Dsのピアノレス・トリオ。
 ⇒ロリンズも、ピアノレスを時々採っていました。マイルスもハービー・ハンコックに「3度と7度はバターノートだから弾くな」なんて言っていましたから、ホーン奏者はピアノに神経質になるんですかね。
 #4がTS+Tp+Pf+B+Dsのクインテット。
 #5がTS+Pf+B+Dsのカルテット。

 ■3)ラッシュ・ライフの各曲について
 ネットのブログを出すような通の方は、ピアノレスの3曲目までを高評価されているようですが、私は、ラッシュ・ライフが一番のお気に入りです。次の”I Hear A Rhapsody” も”アイル・ゲット・バイ”のような浮遊感と哀愁が合わさってお気に入りです。

 #1.Like Someone In Love (5:00)
 トレーンのスローなイントロよりテーマに入る。ここでは、原曲のメロディがほとんど判らない位デフォルメのきついアドリブである。愛する人を唄っている歌なので、トレーンはきっと当時の妻ナイーマのことを思って吹いているのでしょう。初リーダーアルバムのコートに菫を、では、ストレートなメロディに昔の恋人のことでも思って吹いていると思っているのですが。アドリブラインが、いつものストレートラインではなく、抑揚を抑えたアドリブになっていますが、私は原曲のメロディを元にしたストレートなアドリブをトレーンのバラードには最適と思っているのですが・・・・

 #2.I Love You (5:33)
 ドラムのイントロよりトレーンのイントロが来て、原曲の判るアドリブに入る。アドリブが入ると、トレーンのシーツが快調に展開される。アドリブの多彩さもこの頃のトレーンの充実振りを示している。1曲目のアドリブ手法とは異なり、こちらの方がトレーン本来のアドリブと思う。マイディアライフで昔聴いた渡辺貞夫さんのAsの同曲は、どちらかというとパーカー寄りのスピード感のあるアップテンポのアドリブでしたが、トレーンのこのアルバムでは、シーツに近い、音を短く刻んでいる。フェードアウト気味でエンディング。

#3.Trane’s Slo Blues (6:04)
 ベースのミディアム・テンポのイントロ後、只管トレーンのアドリブが続く。1曲目と同様の抑揚を抑えた訥々とした言葉少ないもの。その後のドラムソロも饒舌ではない、どちらかと言うとコントロールされたもの。そこから、またトレーンのソロに戻るがここでは、トレーン本来の縦横無尽なアドリブを展開する。テーマに戻って静かにエンディング。

 #4.Lush Life (13:56)
 ピアノのガーンというイントロと、トレーンの情感の篭ったイントロから始まるが、トレーンのこのソロは全く淀みのない。”神の啓示”を受けた半年後は、実に充実していたということか。1曲目とは様変わりして堂々とバラードを吹いている。もう、ロリンズの名バラード”恋を知らない貴方”に勝るとも劣らない。ここでのアドリブは原曲のメロディを上手く生かしたものである。こういうアドリブが好きです。次は、ガーランドの美しいソロ、これは秀逸。言葉は要らない。秀逸の一言。フィ二アスのラッシュ・ライフとはまた、違った趣を持つ。ガーランドの方が、リラックスした演奏で、ゴージャス系ではあるが、カクテル・ピアノにはなる寸前にとどまる。最後に出てくる、バードがまた良い。そのソロの最後でアドリブからテーマに戻るところの移り方が良い。そこからトレーンに代わって、バードとの掛け合いの時のバードのブリリアントさが何とも云えない。トレーンが畳み掛けて、バードがそれに返して2人の会話で終わる。

#5.I Hear A Rhapsody (5:59)
 これは、マウスピースの調子が悪かったのか、そういう音を狙っていたのか判りませんが、アドリブラインが素晴らしいのに音がくすんでいるのが残念。RVGのNJの自宅スタジオでの録音ですが、シンバルの音も少し歪んでいるので録音も何かミスっているような気がする。トレーンのミディアム・ファーストのイントロよりアドリブへ。このアドリブはお気に入り。キースで言えば、このエレジー感は、スタンダーズ・ライブの”オールド・カントリー”の哀感を漂わせながらも感情に溺れないクールな演奏を思い出します。その後は、ガーランドの哀愁に満ちたアドリブ。速めのジャンピング系というかキャットウォーク系のスインギーなアドリブを堪能し、トレーンに戻ってまた切ないアドリブの後、あっさりと終わる。このアドリブは、シーツも加えてもう少し長く聴きたかったのであるが・・・このあっさり終わる所に、聴衆を盛り上げて置いて、置き去りにする少し意地悪なテクニックが隠されている。

 ■4)You Tube
 今は、全曲上がっています。
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ブラック・パールズ ~ジョン・コルトレーン~

2017-10-25 20:35:15 | ジャズ
 プレスティッジには、アップテンポのトレーンの凄いのがあります。最近、お気に入りの”アイル・ゲット・バイ”の浮遊感と共に、突き抜ける爽快感を味わえる”ブラック・パールズ”に入っている”ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”を良く聴いているのでその話です。

 ■1)プレスティッジ前後のトレーンの状況
 これは、以下のように纏めてみました。ネットの情報と、油井正一さんの”ジャズの歴史物語”を参照しましたが、時期が正確に判らないものもあります。正確性はともかく雰囲気はわかると思います。

 プレスティッジは、茶色、ブルーノートは、青、アトランティックは、薄紫にしています。’56年の5月のテナー・マッドネスでは、積極的にロリンズのマネをしていましたが、これは将来の発展の為にロリンズスタイルを習得していたと思います。僅か半年後のマイルスとのセッションでは、もうそれからは抜けて自己のスタイルを確立しています。’57年3月の初リーダーアルバムでは、初々しいトレーンが聴けます。棒吹きに近いですが、彼のスタイルは出来つつあります。そして、その頃、モンクのグループに入って、モンクに音楽的な質問を浴びせますが、モンクは全て、ピアノに向かって答えを出してくれたとトレーンが感謝しています。ここでトレーンは、プレーヤーとして劇的に発展します。また、マイルスのバンドでドラッグや酒に溺れて遅刻を繰り返していたが、これも劇的に改善したようです。モンクの影響はそこにもあったのかもしれませんね。キャノンボールが、1972年に、”’58年に再結成したセクステットに戻ったトレーンは、聖人に変身していた”と述懐しています。’57年の7月に「ファイブ・スポット」にモンクバンドの一員として出演している時期に、”神の啓示を受けた”とトレーンは言っています。それ以降は、音楽的には、以前とは様変わりして、自信に満ちたプレイをするようになったのは確かです。確かにそれ以降のアルバムは、ブルートレインをはじめとして凄いのが多いです。今回紹介する、”ブラック・パールズ”は、前回の”スタンダード”の一つ前になりますので、その頃の熱気がぷんぷんしています。

 ■2)”ブラック・パールズ”
 アップテンポの曲で好きなのは、ソニー・ロリンズでは、”ワーク・タイム”の”イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー”や、フィ二アスの”ダホード”や、トレーンでは、シーツの萌芽と云われる”ロシアン・ララバイ”等がありますが、この”ブラック・パールズ”に入っている”ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”は、アマゾンのレビューを見ていたら、…“天井知らず”…の爆走を展開している、と上手く表現していますね。正に、“天井知らず”…のブローを見せ、爆走する、魂の叫びが聞こえてきます。今のお気に入りです。ジャケットは、

 正に、神の啓示を聞きながら吹いています。裏は、

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts)
          ドナルド・バード(tp)
          レッド・ガーランド(p)
          ポール・チェンバース(b)
          アート・テイラー(ds)
 '58年 5/23 ニュージャージーのハッケンサックで録音
 発売されたのは、’64年ですが、既に’64年のトレーンが本’58年のアルバムで予見できます。

 ■3)”ブラック・パールズ”の各曲
 これは、3曲共に、アップテンポの曲ですが、2曲目の”ラバー・カム・バック・トゥー・ミー”が素晴らしいです。丁度、ソニー・ロリンズの”ムービン’アウト”で普段は静かなケニー・ドーハムが、ロリンズの豪快なブローにインスパーヤーされて、ドーハムとは思えない、火の出るようなペットを聴かせてくれたと同様、ここでのドナルド・バードは、トレーンの気迫にインスパイヤーされて彼のリーダー・アルバムより素晴らしいブリリアントなプレイを聴かせてくれます。バードの至高の名演の1つだと思っています。

01. ブラック・パールズ / BLACK PEARLS 13:10
 ミディアムテンポのイントロはユニゾンでファンキーに始まる。直ぐに、トレーンは、シーツ・オブ・サウンドを爆発させる。スリリングで音を詰めて、うねる様に音符を細かく刻み込む。トレーンは、バードに触発されたことは間違いない。次は、バードのソロ。これもトレーンに負けず劣らず、スタイルはバードはハードバップで違うが、全開。ブラウニーライクなアドリブ。リズムセクションもエルビンが入るまではハードバップなのでトレーンが抜けているというか浮いているようなこの時点での状況である。ガーランドのスイングするアドリブとチェンバースのウオーキングベースを聴いて最後はユニゾンでストレートに終わる。

02. 恋人よ我に帰れ / LOVER COME BACK TO ME 7:25
 先ずは、バードがブリリアントなテーマを吹くと、その後に続くトレーンが、F1並の爆走。シーツ全開。リズムセクションがぎりぎりに追いついていく。今度は、バードが飛ばす。次は、またトレーン。これも、バードより短い刻みで飛ばす。どこまで音符を細かく刻めるか限界に挑戦しているようだ。単に速いだけではなく、アドリブのパターンの多さも注目。ガーランドも目一杯早弾きを試みている。スイング感も忘れてはいない。続くドラムソロはダイナミックだが節度を持っている。最後は、テーマに戻って、2管の掛け合いを美しく演じてバード主導のユニゾンであっけなくエンディング。この突然感とそれによる余韻がまた良いんです。聴衆を置いてけぼりにするテクニック。

03. スウィート・サファイア・ブルース / SWEET SAPPHIRE BLUES 18:14
 18分を超える長尺のブルースだが、ここではガーランドを大きくフィーチャー。ガーランドの軽妙なイントロから始まり、乗り乗りのブロックコードのアドリブがこの曲での聴き所。アイデアも多彩で、跳ねる音や、流れるようなタッチ、サファイヤを連想させる得意のゴージャス系フレーズを色を混ぜて、スインギーに弾きまくる。その後は、トレーン。聴く者を圧倒する。極限まで音符を細分化し、速いフレーズを取り混ぜて、サイクリックにうねり続ける。このアドリブは凄い。正に、シーツ・オブ・サウンド。最後に少しテナー・マッドネスで見せたようなハードバップ風のフレーズも披露。その後を追随するバードは、スイング感溢れる軽快なアドリブでブリリアントな輝きも交えて軽快に吹ききる。リー・モーガンを少しゴツゴツさせた感じ。でも途中からトレーンに触発されて早いフレーズで本領発揮してくる。次は、チェンバースの力の入ったウオーキングベースとテイラーの切れ切れのドラムソロ。最後は、ピアノに戻ってエンディング。

 ■4)You Tube
 今は、フル・アルバムが上がっています。
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